村田製作所は10月31日、2022年度第2四半期累計(4月~9月期)の連結決算を発表した。それによると、売上高は前年同期比1.3%増の9202億円と過去最高を更新したが、営業利益は同12.2%減の1949億円、純利益は同4.4%減の1603億円だった。営業利益率は21.2%と相変わらず高いが、操業度が下がり、下期も回復が厳しいことから、4月公表の通期業績予想を下方修正した。(経済ジャーナリスト 山田清志)
業績概況
スマホ・PC用途向けが減速
「表面波フィルターがスマートフォン向けで減少したが、円安による増益効果やパワーツール向けでリチウムイオン二次電池の売り上げが増加したことにより増収となった。一方で営業利益については、円安による増益効果やコストダウンなどの増益要因があったが、スマートフォンやPCなど民生市場の減速を受けて、当社製品の需要減により操業度損が発生したほか、エネルギー価格の高騰などの固定費増加もあり減益となった」と村田恒夫会長は4月~9月期を振り返った。
営業利益段階での利益変動要因を見ると、合理化効果100億円、円安効果600億円のプラス要因があったものの、操業度損470億円、売価値下げ80億円、減価償却費の増加38億円、固定費の増加140億円、品種構成差など243億円のマイナス要因があり、前年同期に比べて271億円の減益となった。主力製品である積層セラミックコンデンサーの操業度は第1四半期90~95%だったのが、第2四半期には85~90%に下がったそうだ。
用途別売上高
用途別の売上高については、通信用途が前年同期に比べて4.7%減の3742億円だった。ウェアラブル機器や基地局向けで積層セラミックコンデンサーが増加したものの、スマートフォン向けで表面波フィルターや積層セラミックコンデンサー、コネクティビティモジュールが大きく減少したためだ。
モビリティ用途の売上高は、円安による増収効果もあり、積層セラミックコンデンサーやEMI除去フィルターの売り上げが増加し、その結果、前年同期比13.0%増の1862億円となった。自動車市場向けは好調で、需要に供給が追いついていない状況とのことだ。
コンピュータ用途の売上高は、PC向けでインダクターや積層セラミックコンデンサーが減少したことが響き、前年同期に比べて12.1%と大幅減の1333億円だった。巣ごもり需要が一段落し、世界的にPCの減産状況が続いているという。
2022年度業績予想
家電用途の売上高は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が大きく増加し、前年同期比22.6%と大幅増の1132億円だった。直前の4月~6月期と比べても、20.7%増で好調さが際立っている。
産業・その他用途の売上高は前年同期比6.3%増の1131億円だった。産業機器やヘルスケア向けで売り上げが増加したことが大きかった。
22年度の自動車需要見通しは8200万台
「通期の業績見通しについては、グローバルで加速するインフレの影響などでスマートフォンやPCの生産台数が大きく減少し、通信やコンピュータ向けで当社製品の売上数量の減少が予想されることから、売上高は円安による増収効果を加味しても前回予想を下回る見込みだ。利益面においても、円安による増益効果があるが、生産高の減少に伴う操業度損の発生により、営業利益も前回予想を下回る見込みだ」と村田会長は話し、4月28日に公表した2022年度の通期業績予想を下方修正した。
売上高が従来予想から1100億円減の1兆8200億円(前年度比0.4%増)、営業利益が600億円減の3800億円(同10.4%減)、当期純利益が270億円減の2970億円(同5.5%減)に引き下げた。
部品需要予測
4月時点では22年度の世界のスマートフォン需要を前年度並みの13億7000万台と想定していたが、これを約3億台下方修正して、前期比20%減の10億9000万台とした。「主に中華圏向けのミドルからローエンドのスマートフォンが落ち込んでいる。7月時点では下期から需要が回復すると見ていたが、販売不振は少し長引き、来期からの回復と見ている」と村田会長は話す。
PCについても、4月の予想値4億8000万台から前年度比13%減の4億4000万台に需要見通しを引き下げた。また、自動車については、200万台引き下げて前年度比8%増の8200万台に需要見通しを変更したが、うち電動車については同1.5倍増の2400万台を据え置いた。需要は堅調だが、半導体不足などによる生産制約が継続しているのが気がかりだという。
「足元の景況感では、民生市場の停滞が継続することが見込まれるが、2030年に向けてエレクトロニクス市場が拡大するシナリオに変化はない。中期方針2024で掲げている各施策を実践し、需要の回復局面で好機を捕らえて、さらなる飛躍を遂げられるように努めていく」と村田会長は力強く述べていた。