村田製作所の村田恒夫会長兼社長(左)と帝人フロンティアの日光信二社長
村田製作所と帝人フロンティアは6月4日、共同で記者会見を行い、世界初の繊維を開発し、合弁会社ピエクレックスを4月1日付で設立して、この繊維の研究・開発および製造、販売を行うと発表した。力を加えると電気エネルギーを生み出し抗菌性能を発揮するという画期的なもので、無限の可能性があるそうだ。(経済ジャーナリスト・山田 清志)
左からピエクレックスの玉倉大次社長、村田製作所の村田恒夫会長兼社長、帝人フロンティアの日光信二社長、ピエクレックスの竹下皇二副社長
社名と同じ「PIECLEX(ピエクレックス)」と名づけられた繊維は、村田製作所が電子部品の開発・製造で培ってきた圧電技術と、帝人フロンティアが有する繊維技術を組み合わせることで誕生した。原料は植物由来のポリ乳酸(PLA)で、薬剤や有機溶剤を使用しないことから地球環境にも優しい。
ピエクレックスの繊維
「ピエクレックスの繊維はこれまでになかった機能を有しており、新たな顧客ニーズや製品開発に応えることのできる画期的な素材だと考えている。これまでムダにしてきた人間の動く力を有効活用する繊維として新たな商品の創出に貢献できる。例えば、人が歩く力で消臭機能を備えた靴や靴下が生まれたりと、活用次第で無限の可能性を秘めた未来の繊維だ」と村田製作所の村田恒夫会長兼社長は説明する。
抗菌のメカニズム
一方、帝人フロンティアの日光信二社長も「この新製品は今までにない、持続可能な社会において未知の可能性を切り拓いてくれるものだ」と力説し、何度使っても機能が落ちないという。細菌の増殖も抑えられることから、新型コロナウイルスなどウイルスへの効果も検証中とのことだ。
合弁会社のピエクレックスは資本金が1億円で、出資比率は村田製作所が51%、帝人フロンティアが49%。本社は滋賀県にある村田製作所の野洲事業所内に置き、社長には村田製作所技術・事業開発本部シニアマネージャーの玉倉大次氏が就任し、副社長には帝人フロンティア技術・生産本部技術開発部長の竹下皇二氏が就任する。合弁会社はファブレスで、研究開発やブランで展開に特化し、実際の製造などについては帝人フロンティアの工場が担当する。
「当面は国内アパレル市場に向け拡販活動を開始し、将来的には海外アパレルへ拡大するとともに、産業資材やヘルスケア分野にも拡販範囲を広げることで、2025年度には売上高100億円を目指したい」とピエクレックスの玉倉社長は話す。
まずはスポーツウェアやインナーウエアなどアパレル向けの素材として提供されそうだ。2020年度については、顧客へのサンプル販売がメインで、年度末には量産化を進める方向だ。価格については、最初のうちは一般の繊維よりも高くなるが、量産化が進んでいけば一般の繊維と変わらなくなるそうだ。