三菱重工業は、長崎造船所の敷地内に、航空エンジン部品を製造するための新工場を建設した。また、これに伴い11月4日、来賓として米田健三九州経済産業局長や中村法道長崎県知事、田上富久長崎市長を招き、同社グループから椎葉 邦男シニアフェロー長崎造船所長らが出席して、オープニングセレモニーを開催した。
新工場は、航空エンジン事業を手掛ける三菱重工航空エンジン(MHIAEL/本社:愛知県小牧市)の長崎拠点として、11月から主に短・中距離旅客機用のエンジン部品の製造を開始し、段階的に生産規模を拡大。
工場内には、燃焼器部品の素材受け入れから加工、組立までを一貫して手掛けられる生産ラインを構築し、最新鋭の工作機械や自動搬送・自動工具交換システム等を導入。さらに、MHIAEL本社マザー工場で培ったIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術なども積極活用し、航空エンジン部品工場として世界最高レベルの生産性・高効率を実現させると云う。
また、世界遺産の長崎造船所史料館(旧木型場)に隣接する旧推進器工場(船舶用プロペラ工場)の跡地に位置することから、「過去から現在そして未来へ」とつながる同社ものづくりの歴史を継承する工場として、地区再開発の一翼も担わせていく。
航空業界の世界需要は、現在、コロナ禍により急激な落ち込みを見せているが、三菱重工では、国内線で多く利用される短・中距離旅客機の需要は比較的早く回復すると見込んでいる云う。
特に、長崎工場で生産するエアバスA320neo搭載PW1100G-JMエンジンの燃焼器については、オーバーホール時の交換需要などで、コロナ禍前後で生産計画に大きな変動もなく、今後も増産基調が続くと予想。最新鋭の工場を計画通りに稼働することで、内製力とコスト競争力を強化すると共にニーズに的確に応えられる体制を整えるとしている。
今回の新工場建設プロジェクトは、世界の民間航空機用エンジンの長期的需要増を見据え、事業拡大と生産体制整備を進める三菱重工グループの取り組みの一環として実施。また、航空エンジンのMRO(Maintenance,Repair & Overhaul:修理・整備)事業拡大にも取り組んでおり、愛知県のMHIAEL本社工場では、新規MRO事業立ち上げに向けての体制も整えていると云う。
三菱重工は今後も、MHIAELと緊密に連携しながら航空エンジンの開発・製造・アフターサービスにおいて、技術力・信頼性の向上、ならびに生産能力の拡充に努め、日本における航空機産業の発展に貢献していくとしている。