三菱電機は熟練者の最適な操作を基に、試行錯誤で自ら最適な操作を推定・学習するAI技術を研究し、〝人と協調するAI〟開発に成功した。(坂上 賢治)
同社のAI技術は同社独自開発の「MaisartⓇ(マイサート/Mitsubishi Electric’s AI creates the State-of-the-ART in technologyの略)」をベースに逆強化学習を活用。人の操作を少ないデータで効率的に模倣学習して人が操作しているかのような自然な動作を機械が実現することで、人との協調が容易となるAIへと昇華させた。
今後は人と機械が混在する生産・物流現場でのAGV(Automated Guided Vehicle/無人搬送車の略)やロボットなどに同技術を適用。さらなる実証と実運用開発を進めて作業効率の向上に貢献すると共に自動運転車などへ展開を目指していくという。
「人と協調するAI」をAGVに適用した場合の動作例は以下の通り
開発の特長
1.模倣学習による機械の自然な動作で、人と機械が混在する環境での作業効率向上
– 「道を譲る」などの人が行った協調動作の操作データを収集し、シミュレーター上で逆強化学習により模倣学習することで、人が操作しているかのような自然な動作を実現。
– 周囲作業者の作業の妨げにならないように機械が動くことで、人と機械が混在する環境での作業効率が従来と比べて30%向上(シミュレーターによる代表的な作業環境での実験結果)。
2.「Maisart」の逆強化学習により、少ないデータで効率的に学習
– 同社AI技術「Maisart」の1つである逆強化学習を用いて、AGV周辺の画像と人による運転操作データに基づいた模倣学習を実現。
– 従来の「教師あり学習(熟練者の最適な操作そのものを模倣学習する方法)」と比較して10分の1以下(シミュレーターによる代表的な評価課題での実験結果)の運転操作データで学習が可能。
今後の展開については「作業の効率化あるいは作業者間に一定の距離確保が求められる場合など、AGVの利用増加が想定される生産現場や物流現場を始め、人と機械が混在する作業環境での実運用や自動運転への適用に向けて、開発に取り組んで参ります」と話している。