三菱電機は11月12日、電気自動車(EV)やプライグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車(以下、xEV)の駆動モーター用のインバーターに使用される「xEV用SiC-MOSFET(シリコンカーバイド・モスフェット)」(※1)チップのサンプル提供を、同日より開始すると発表した。
同社は、xEVの市場拡大に向けて多様化するインバーターに対応する独自の構造や製造工程を用いた標準仕様のパワー半導体チップの提供を通じて、xEV用インバーターの性能向上や航続距離・電費を改善。xEVの普及に貢献していくとしている。
*タイトル画像:xEV用SiC-MOSFETを製造したウエハ(左)とサンプル提供を開始するチップ(右)(イメージ)。
近年、脱炭素社会の実現に貢献するキーデバイスとして、電力を効率よく変換するパワー半導体の需要が拡大。特に自動車分野では、温室効果ガス低減を目的とした自動車の電動化を背景に、モーター駆動に於けるインバーターなどの電力変換機器に使用されるパワー半導体の需要拡大と多様化が進んでおり、なかでも、電力損失の大幅な低減が可能なSiCパワー半導体には大きな期待が寄せられている。
三菱電機では、業界に先駆け、1997年にxEV用パワー半導体モジュールの量産を開始。その後、ヒートサイクル耐性等の信頼性を向上させ、インバーターの小型化に向けた課題を解決するなどの実績を重ね、2024年3月には、自動車市場で多くの採用実績がある同社製T-PM(※2)の最新世代を搭載し、小型化を実現したxEV用パワー半導体モジュール「J3シリーズ」のサンプル提供を開始。現在、同社のxEV用パワー半導体モジュールは、様々なEVやハイブリッド車(HEV)に搭載されていると云う。
今回、xEV市場拡大に向けて多様化するxEV用インバーターに対応するため、同社として初めて供給する標準仕様のパワー半導体チップである「xEV用SiC-MOSFETチップ」は、独自構造を採用したトレンチ型(※3)SiC-MOSFETにより、従来品のプレーナー型(※4)SiC-MOSFETと比較して電力損失を約50%低減。
また、独自のゲート酸化膜製法などの製造プロセス技術により、電力損失やオン抵抗などの変動を抑制することで、長期間の使用に於ける品質の安定性を実現させるなど、インバーターの性能を向上させて、xEVの航続距離や電費を改善、耐久性を確保し、xEVの性能維持に貢献するものであると云う。
※1)SiC(Silicon Carbide):炭化ケイ素。MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor):金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ。
※2)T-PM(Transfer molded Power Module):トランスファーモールド型パワー半導体モジュール。
※3:ウエハの表面から溝(トレンチ)を掘り、ゲート電極を埋め込んだ構造。
※4:ウエハの表面にゲート電極を設けた構造。
三菱電機は、高性能なxEVの普及に向け、低電力損失で高品質のSiC-MOSFETチップの提供を行うことで、脱炭素社会の実現に貢献するとしている。
[問い合わせ先]
三菱電機 半導体・デバイス第一事業部 自動車事業推進プロジェクトグループ
連絡先:問合せフォーム