マイクロン(Micron Technology, Inc.)は11月9日(現地時間)、世界初の176層3D NANDフラッシュメモリの出荷を開始した。史上最高密度と、高速化を他社に先駆けて達成した同製品により、データセンター、インテリジェントエッジ、モバイルデバイスなど、ストレージが活用されるあらゆる用途において、アプリケーションのパフォーマンスが大幅に向上するとされる。
とくに車載用途では、エンジンスタートとほぼ同時に車載システムが使用できるようになるため、ユーザーエクスペリエンスが向上すると考えられる。
同製品は、積層数で最も近い競合製品を40%ほど上回る。また第5世代3D NANDおよび第2世代のリプレースメントゲートアーキテクチャという、現在市場で最先端の世代のNANDノードを採用しており、Open NAND Flash Interface(ONFI)バスでの最大データ転送速度は毎秒1,600メガトランスファー(MT/s)を達成し、前世代よりも33%改善。前世代の3D NANDと比較して、読み書きのレイテンシが35%以上改善され、クラス最高の競合製品と比較してダイサイズを30%小型化した。こうしたコンパクト設計は、スモールフォームファクタを使用するソリューションに最適とされる。
多層化の実現は、チャージトラップ方式とCMOSアンダーアレイ(CuA)設計を組み合わせたことによるものとされる。同社が特許を持つCuA技術は、チップのロジックの上に多層スタックを構築する技術。この技術を使用することで、狭い空間により多くのメモリセルを詰め、ウエハーごとの記憶容量を増やすことができる。
また、これと同時にNANDセル技術を従来のフローティングゲート方式からチャージトラップ方式に移行。シリコン層の代わりに伝導性の高い金属ワード線5を用いるリプレースメントゲートアーキテクチャと組み合わせることで、3D NANDのパフォーマンス向上を達成した。
このように、高い汎用性と圧倒的なメモリ密度を備えたマイクロンの176層NANDは、モバイルストレージ、自律システム、車載インフォテインメント、クライアントおよびデータセンター向けのSSDなどの幅広い分野での活用が期待され、とくにマイクロンでは5G、AI、クラウド、インテリジェントエッジなど成長が著しい分野での展開を目指すとしている。