Micron Technology, Inc.(マイクロン)は2月24日(米・アイダホ州時間)、業界初の車載用低電力DDR5 DRA(LPDDR5)メモリのサンプリングを開始したと発表した。このメモリは、最も厳格な自動車安全水準(ASIL)であるASIL Dを満たすためのハードウェア評価実施済みの製品。同ソリューションは、マイクロンのメモリとストレージ製品の新たなポートフォリオの一部であり、これらの製品は国際標準化機構のISO認証26262に基づく自動車機能安全の達成を目指している。
マイクロンの機能安全評価済みDRAMは、適応型クルーズコントロール、自動緊急ブレーキシステム、車線逸脱警報、死角検知システムなどの先進運転支援システム(ADAS)技術と互換性がある(※システムインテグレーターの評価による)。マイクロンのLPDDR5は高性能かつ電力効率に優れ、レイテンシーが低いため、増加し続ける次世代の車載システムの帯域幅要件に対応するために必要な性能やレンジを提供できるとのことだ。
マイクロンの組み込み機器事業ユニットのコーポレートバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるクリス・バクスターは次のようにコメントしている。
「自律型車両は道路の安全性向上を約束しますが、過酷な環境においてリアルタイムでの判断を可能にする強力で信頼性の高いメモリを必要としています。成長を続ける市場のニーズを満たすために、当社は車載用LPDDR5を最適化し、未来の安全なスマートカーに最高の性能、品質、信頼性をもたらします」。
自動車の電子部品は安全性において不可欠な要素であり、自動車メーカーは、誤作動の発生時にリスクを緩和するメカニズムを備えた高い機能安全標準を満たす必要がある。マイクロンでは、機能安全の重要性が高まっていることを認識し、安全な車載システムを設計するために必要なメモリ要件について、顧客と協同する専門の部署を設立した。顧客が複雑なコンプライアンス義務に円滑に対応できるよう、この部署が先導して安全アプリケーションメモ、および業界初のサプライヤーによるDRAMハードウェア評価レポートと共に、LPDDR5の提供を開始した。加えて、マイクロンのハードウェア評価は、自動車の安全性の専門家として有名なexidaが独自に評価・検証を実施。この厳格な評価を社内に取り入れることで、マイクロンはシステムデザインを簡素化するとともに、自動車業界の顧客向けに市場投入時間の短縮を実現した。
exidaの最高執行責任者兼プリンシパルセーフティエキスパートであるアレキサンダー・グリーシンク氏は次のように述べている。
「機能安全は、最先端の車載システムの開発にとって必要不可欠です。しかしこれまで、メモリは民生品の存在を軽視してきました。マイクロンは、ISO 26262に細心の注意を払いながら、業界をリードする自動車用LPDDR5を発表し、メモリ業界に新たな標準を設定しました。このように機能安全への関心が高まったことは、自動車メーカーから先進かつ安全な自動車を必要とする消費者まで、すべての人や企業にメリットをもたらします」。
◾️マイクロンの低電力メモリ、自動車のイノベーションとより環境に配慮した輸送を促進
ADASと自律型テクノロジーの採用が急速に進むにつれ、データの取り込みと効率的な処理は、自動車のイノベーションにとって鍵となりつつある。IT分野を中心とした調査会社であるガートナーは、自動車用メモリ市場は2024年には63億ドルに成長し、2020年の24億ドルから2倍以上になると予測している[*1] 。
データ集約型の車載テクノロジーの増加に伴い、ADAS対応自動車は現在、データセンターの計算能力に匹敵する、1億行を超えるコードを実行し、1秒あたり数百テラものオペレーションを必要としている。LPDDR5はこれらの要件に対応し、データアクセス速度で50%、電力効率性では20%を超える向上を実現(※前世代LPDDR4xとの比較)。LPDDR5の能力を活用し、インテリジェント車両は複数のセンサーと入力を融合させて、意思決定をほぼ瞬時に実行することができる。センサーや入力の例としては、レーダー、ライダー、高解像度画像、5Gネットワーク、光学式画像認識などが挙げられる。
LPDDR5のエネルギー効率により、車両の高性能コンピューティング利用を実現しながら、電気自動車と従来の自動車の両方で消費電力を最小化することで、二酸化炭素排出量を削減し輸送における環境への配慮が向上する。マイクロンの車載用LPDDR5は、極端な温度範囲をサポートできる高耐久性を誇るとともに、Automotive Electronics Council(車載電子部品評議会)によるAEC-Q100や、International Automotive Task Force(国際自動車タスクフォース)によるIATF16949など、自動車の信頼性規格に適合。
◾️独自の機能安全評価済みのDRAM、安全なスマートカーの市場投入時間を短縮
マイクロンのLPDDR5には、機能安全に関する広範な資料が付属しており、顧客がシステム設定中に包括的な安全分析を行えるようサポート。マイクロンが提供するハードウェア評価レポートでは、ISO 26262に極めて厳密に準拠しながら機能安全分析を徹底的に検証している[*2]。 トップレベルの安全要件を満たすため、LPDDR5には、動作中のメモリエラーを検知・管理する安全メカニズムとともに、システムインテグレーターがリスクをさらに削減するために実装できるメカニズムが組み込まれている。
[*1] Gartner, Semiconductor Forecast Database, Worldwide, 4Q20 Update, Table 2.1, December 2020
[*2] ハードウェア評価レポートはISO 26262第13条要件を満たす。