横浜ゴムは1月21日、同社の「持続可能な天然ゴムの調達方針」に基づき、タイ天然ゴム公社(Rubber Authority of Thailand:RAOT/※1)と、天然ゴム農家の経営支援およびサプライチェーンの透明性と健全性確保を目的とした、トレーサビリティの向上に向けて協力していく覚書を締結した。
横浜ゴムでは、これに先立ち、昨年6月から同社の天然ゴム加工会社であるY.T. Rubber(ワイ・ティー・ラバー)が立地するタイ・スラタニ地区で、天然ゴム農園の調査を実施、これまでに約70戸の農家をヒアリングしている。
また今後も継続調査し、2021年末までに500戸を調査。この結果を蓄積し、天然ゴム農園の持つ課題を分析して、天然ゴム農家の持続可能な経営に貢献するとともにトレーサビリティの向上に活用するとしている。
近年、世界的な人口増加とモビリティの発展により、タイヤおよびその主原料である天然ゴムの需要がますます増大するなか、天然ゴムが生産されている地域では、違法な森林伐採や土地収奪、人権侵害などの問題、生物多様性への悪影響などが懸念されていると云う。
横浜ゴムはこれらの課題解決に向け、国際ゴム研究会(※2)が提唱する天然ゴムを持続可能な資源とするためのイニシアティブ(SNR-i)に参画。また、2018年10月に発足した持続可能な天然ゴムのための国際的なプラットフォーム(GPSNR/※3)でも創設メンバーとして活動している。
さらに、横浜ゴムグループでは、天然ゴムの持続可能性の実現に向けて独自の活動を展開。タイにおいて2013年から、現地の複数の大学と、天然ゴムの共同研究を進めているほか、天然ゴム農家の安定収入を支援する「アグロフォレストリー農法」の普及推進や、天然ゴムサプライヤーを対象とした交流会(サプライヤーズデー)などを実施している。
またY.T. Rubberでは、工場内で使用した水を循環して使う循環浄化システムを導入し、自然環境や近隣住民との信頼関係の維持にも努めている。
横浜ゴムは、中期経営計画「グランドデザイン2020(GD2020)」で各事業の成長戦略を通じた経営基盤の強化を掲げており、CSRにおいては「未来への思いやり」をスローガンに「地球環境」「地域社会」「取引先」など6つのステークホルダーごとに事業活動を通じた社会貢献を推進。そのため、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも取り組んでおり、その一環としてサステナブルな原料調達に向けた活動を推進している。
※1:タイ農業・協同組合省(Ministry of Agriculture and Cooperatives: MOAC)管轄下の組織。
※2:天然ゴム、合成ゴムの生産国と消費国の政府で構成される政府間組織。
※3:Global Platform for Sustainable Natural Rubber。天然ゴムの生産者、タイヤメーカー、環境NGOなど45団体の正会員と16団体の準会員で構成される(2020年2月現在)。