中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋は11月25日、応用地質、国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学と共同で、従来に比べて大幅な省力化ができるグラウンドアンカーの緊張力を測定し解析する新しいシステム「VIBRES®(ビブリス)」を開発したことを発表した。
グラウンドアンカー(以下「アンカー」、写真-1、図-1)とは、地すべり対策の代表的な工法の一つで、アンカー体を地盤内に定着させ、緊張力を与えることによって、のり面の安定化を図る構造物。高速道路は地山を切盛りして建設するため、急勾配なのり面を安定させる必要がある箇所ではアンカー工法が多く採用されてきた。
同社管内の高速道路でも約3.8万本のアンカーが施工されている。施工後約50年以上経過したものも存在し、現地条件によっては機能低下が進行しのり面を不安定化させる可能性があるため、定期的に健全性を確認するために緊張力を測定する試験(リフトオフ試験)をおこなっている。
リフトオフ試験は、のり面に大規模な足場(写真-3)を設置し、専用ジャッキ(約40~120kg)を用いて実際にアンカーを引張る試験をおこなう必要があり、足場設置や資機材運搬などに時間とコストがかかることや高速道路の交通規制を伴うことが多いことから、これらの課題を解決する新たな技術開発をおこなっていた。
今回、開発した測定・解析システム「VIBRES®(ビブリス)」は、アンカー頭部の引張り材余長部に小型バイブレータおよび加速度計を設置し、小型バイブレータにより振動を与えることで、アンカーの引張り材を共振させ、その固有振動周波数を読み取り、相関関係から緊張力を求めるもの。(写真4、図2、3)
従来の技術(リフトオフ試験)では、アンカーの引張り材に直接引き抜く力を与えるため、使用する専用ジャッキの重量が約40~120kgとなっている。一方、このシステムで使用する小型バイブレータの重量は約400gであり、既存のリフトオフ試験と比べてメイン機器の大幅な軽量化を図るとともに、1回あたりの測定時間(セット時間を含む)が、従来の技術(リフトオフ試験)で30~120分/本であったものを、20~40分/本と最大で3分の1程度に短縮可能となった。また、測定精度についても、従来の技術(リフトオフ試験)と比較して±10%以内であることを確認している。
同社によると、試験に用いる機器が軽量であることから人力での運搬が可能であり、仮設足場および重機などの大掛かりな機材が不要であるとともに、作業性も容易。将来的に、リフトオフ試験に代わる技術として全面導入された場合、従来方法と比較してコストや作業時間が大幅に削減され、作業上の安全性向上が期待される。
今後は、引き続き対応するアンカーの種類の拡大など検証を進め、リフトオフ試験に代わる技術としての展開を目指すとしている。