京都大学 工学研究科の野田 進教授、吉田 昌宏助教、メーナカ・デ・ゾイサ講師、石崎 賢司 特定准教授、國師 渡研究員(ローム株式会社から京都大学に常駐)らのグループは、北陽電機と共同で6月30日、フォトニック結晶レーザーを搭載した光測距システム(LiDAR:Light Detection and Ranging)の開発に世界で初めて成功し、フォトニック結晶レーザーがスマートモビリティ応用に向けて極めて有効であることを示すことに成功したと発表した。(坂上 賢治)
来たるべき超スマート社会に於けるスマートモビリティ、すなわちロボット、農機、建機、自動車などの自動運転の実現のためには、光測距システム(LiDAR)は極めて重要になってくる。
このようなLiDARシステムの心臓部の光源には、小型・安価という特徴を持つ半導体レーザーの活用が必須であるが、従来の半導体レーザーは高出力時に、ビーム品質が著しく劣化すると共に、非点収差や大きなビーム拡がりのために複雑なレンズ系を用いてビームを整形してから用いる必要があった。
また部品やその精密な調整にもコストが掛かり、かつ空間分解能を劣化させるという課題があった。加えて動作波長の環境温度依存性が大きいために、太陽光などの背景光の影響も大きくなるという課題もある。
こうした複数の課題に対して先の同研究グループは、高出力動作時にも高ビーム品質で、狭い拡がり角を持つビーム出射が可能で、かつ動作波長の温度依存性が少ないフォトニック結晶レーザーの開発を進めてきました。
そして今回、フォトニック結晶レーザーの性能をより向上させたLiDARの開発に世界で初めて成功した。この成果は、フォトニック結晶レーザーが今後の超スマート社会を支える光源として極めて有望であることを示すものとなった。
この研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「次世代フォトニクス」研究領域に於ける研究課題「変調フォトニック結晶レーザーによる2次元ビーム走査技術の開発(JPMJCR17N3)」(研究代表者:野田 進)の支援を受けて行われたもの。
同研究成果は今後、様々な学会での発表が相次ぐものと想定されるが、特に直近では2020年7月13日~16日に開催される、米国光学会(Optical Society of America)のAdvanced Photonics Congress(On-line)で発表される。
なお今回開発に成功したLiDARへ搭載可能なフォトニック結晶レーザーは、京都大学 光・電子理工学教育研究センター内に設置した光・量子拠点より、MTA(Material Transfer Agreement)を介して、世の中への提供も可能となっている。