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2022年10月11日【自動車部品】

京セラ、世界初の車載ナイトビジョンシステムを開発

山田清志

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左から研究開発本部先進技術研究所の小林正弘所長、大島健夫氏、林佑介氏

 

京セラは10月11日、夜間、雨、霧など視界が悪い環境下でも危険要因になる可能性のある物体を高精度に認識することで安全な運転を支援する「車載ナイトビジョンシステム」を開発したと発表した。同社では2027年以降に事業化することを目指し、今後も研究開発を進めていく方針だ。(経済ジャーナリスト 山田清志)

 

白色光と近赤外光の一体型レーザーヘッドライトを採用

 

「当社の先進技術研究所では、さまざまな社会課題の解決に向け、要素研究やシステム研究を行っている。その研究成果を具現化し、それをADAS(先進運転支援システム)向けに開発したのが今回の車載ナイトビジョンシステムだ」と研究開発本部先進技術研究所の小林正弘所長は説明会の冒頭に話し始めた。

 

現在、夜間の交通事故は昼間に比べて死亡事故率が2.5倍、また霧発生時の交通死亡事故率は事故全体に対して3.3倍に達する。その課題を解決するために、可視光カメラ、赤外線カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなどのセンサーで危険要因の検出を行っているが、どのセンサーも一長一短で検出機能が十分ではなかった。しかも、すべてを搭載すると、コストもかかる。危険認知機能の高度化とセンサー搭載数削減の両立が課題だったという。

 

車載ナイトビジョンシステム

 

「今回開発した車載ナイトビジョンシステムは、独自の照明技術とAI技術の融合により、危険認知機能の高度化とセンサー搭載数削減を同時に実現したものである」と同研究所自動走行システムラボの大島健夫氏は話し、3つの特長があるという。

 

1つ目が白色光と近赤外光の光軸一致・一体型レーザーヘッドライト(White-IR照明)を世界で初めて採用したこと。これにより、光の当たり方に差が出ず、経年変化も生じにくいため、より精度の高い認識結果の表示が可能になった。

 

この一体型ヘッドライトは、米国子会社の京セラSLDレーザーが独自開発した高輝度・高効率かつ小型パッケージのGaN製白色光レーザーを搭載することで実現したもの。ヘッドライト内の白色光をロービーム、近赤外光をハイビームなど、人や物に応じて配光を変化させることができるため、眩しさを抑えながらセンシングができる。また、一体型によりヘットライトの省スペース化とクルマのデザインに自由度が増す。

 

車載ナイトビジョンシステムで映し出された映像

 

交通インフラや小型低速モビリティへの応用も

 

2つ目が京セラ独自のフュージョン認識AI技術によって高精度検出ができること。車両に搭載したRGB-IRセンサーには、先進技術研究所で独自に開発したフュージョン認識AI技術を採用。このAI技術では、可視光画像による認識結果と近赤外光画像による認識結果を単純に足し算するのではなく、可視光画像と近赤外光画像の両方から信頼性の高い領域を組み合わせて判断することが可能になった。

 

文字通り、通常時の認識に強い可視光画像と悪条件の認識に強い近赤外光画像の両方の強みを併せ持つシステムというわけだ。これにより、視界の悪い環境下でも高精度に歩行者や車両を検出し、危険要因の検知とドライバーへの通知を行う。

 

3つ目が大幅なAI学習コストの削減と高精度な認識を両立したこと。従来の手法では、膨大な近赤外光の学習データの収集が必要で時間とコストがかかっていたが、今回開発した手法では、可視光の学習用画像から近赤外光の学習画像を自動生成する学習データ生成AI技術を確立し、大幅な学習コストの削減と高精度な認識を両立した。

 

京セラでは2027年以降の市場投入を目指しているが、車載システムだけでなく、路側機などとの連携によるインフラ側での交通環境の見守りシステムや、夜間の警備や配送などにおける小型低速モビリティ、ドローンなどへの応用も視野に入れている。

 

今回開発した車載ナイトビジョンシステムは、10月18日から千葉県の幕張メッセで開催される「CEATEC 2022」や2023年1月に米国ラスベガスで開催される「CES」に展示する予定だ。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。