クボタは12月20日、バッテリーのシステム開発で強みを持つ台湾スタートアップの「XING Mobility (ジン・モビリティ)」を傘下に持つ「XING Technology(ジン・テクノロジー/本社:ケイマン諸島)」への出資を発表した。
具体的にはXING Technologyが実施するシリーズB株式ラウンドをクボタが主導。これによって同社傘下のXING Mobilityが持つ浸漬冷却バッテリー システム(バッテリーセルを冷却液に浸して均一に冷却する。これにより発火時の類焼も予防する)にアクセスする立ち位置を確保した。
ジン・モビリティの浸漬冷却式バッテリーシステム浸漬冷却バッテリー パックは、従来の間接液冷バッテリー パックと比較し20 ~ 30% 低い温度を維持。熱性能テストの結果では、浸漬冷却法と間接液体冷却法の間のセル表面温度の10度デルタとバスバー温度の20度デルタが浸漬冷却ソリューションを使用した熱制御能力差を表している。総体的に浸漬冷却バッテリー パックは間接液冷バッテリー パックと比較して温度が20~30%提言される。
ちなみに今回クボタが、XING Mobilityへの積極的関与を加速させている背景には、クボタ自身が農業機械や小型建設機械の二酸化炭素排出量を削減し、速やかにカーボンニュートラルに移行しなければならないという実情がある。
目下、こうした産業機械領域ではパワーユニットの電動化がカーボンニュートラル達成の早道と考えられており、それゆえ製品の出力数値や、連続稼働時間を左右する高性能蓄電池の調達が最重要課題に浮上しているのだ。
従ってクボタ自身でも、独自技術を背景にトラクタや小型建設機械の電動化技術を磨き続けているのだが、電動モーターによる過酷な環境下での高出力運転を早期に実現するには課題が多く、特に、その核心となるバッテリーシステムの開発は大きな課題になっていた。
今回、クボタが投資したXING Mobilityは、様々な形状のバッテリーセル(電池の最小単位)に対して柔軟にバッテリーシステムとして組み込むことができる技術を有していると世界市場でも注目されており、実際、既にトラックや鉱山機械、蓄電システムなどに採用された実績も持っている。
そんな自らの技術的な蓄積についてXING MobilityのロイスYCホン共同創設者兼CEOは、「「2015 年以来、当社は主に電気自動車用の浸漬冷却バッテリーで技術の最前線に立ってきました。
現在、そんな我々のバッテリーシステムは既に量産段階に到達しており、今後は自動車メーカーだけでなく、エネルギー貯蔵ソリューションプロバイダーへの提供などを視野に世界展開を見据えている段階にあります。
そうしたなか、今回クボタが主導した戦略的投資は、当社の浸漬冷却技術がヘビーデューティ用途で実現可能であることの示す証左となるものであり、これは当社の国際環境での更なる成長を約束するものとなるでしょう」と述べた。
加えて、これまでXING Mobilityの成長を牽引してきた投資家の1人で、北京・Cherubic Ventures(チェルビック・ベンチャーズ)創設者のMatt Cheng氏(マット・チェン)は、「今回のクボタからの資金調達は、XING Mobilityの液浸冷却イノベーションの未来に新たな可能性を切り拓くことになるでしょう。
というのは、この投資は農業分野へ向けた同技術の新たな可能性を見いだすための重要な第一歩になるからです。 Cherubic Venturesも、この新たなステージへ向けたXING Mobilityの飛躍に立ち会うことができることを誇りに思います」と話している。
一方でクボタは、同出資を通じてXING Mobilityとの連携を強化。それが自社の電動化製品の付加価値アップに繫がることに期待を寄せている。また将来的には、多くの産業機械メーカーの課題を解決するバッテリーシステムの開発・外販に繋げることにより、世界の産業機械領域のカーボンニュートラル実現に貢献できるようになると結んでいる。
[ジン・モビリティの概要]
– 社名:XING Mobility Inc.
– 代表者:Royce YC Hong
– 株主構成:XING Technology Inc.(100%)
– 設立:2015年
– 所在地:台湾 台北市
– 事業内容:バッテリーシステムの開発、設計、製造、販売。
– 従業員数:65名(2023年8月時点)