計測器や計測ソリューションを手がけるキーサイト・テクノロジーは7月14日、事業戦略説明会をオンラインで開催した。その中でチェ・ジュン社長は注目している業界として、航空・宇宙、自動車・エネルギー、IoT、ネットワークアプリケーション・セキュリティ、通信の5つをあげ、特に日本市場では5G/6G、量子コンピューティング、そしてCASEに注力していく方針だという。(経済ジャーナリスト・山田清志)
「新しいテクノロジーについて、さまざまな業界で今まさに競争中で、しかも新型コロナウイルスの影響から顧客は今後どのように進めるべきかという悩みを持っている。キーサイトはそこに最新のテストツールとプロセスを提供していく。これがミッションであり、目標だ」
キーサイト・テクノロジーのチェ・ジュン社長はこう強調する。同社は1999年に米国ヒューレット・パッカードから電機・電子計測器の製造・販売部門が分離独立して誕生した会社で、米国キーサイト・テクノロジーズの日本法人だ。同社の計測器や計測ソリューションは、世界中のエンジニア、科学者、政府機関、メーカー、一般企業で使われており、その信頼性は高い。
ジュン社長によれば、これまでは航空・宇宙が先端技術の生まれる場であったが、現在は航空・宇宙をはじめ、自動車・エネルギー、IoT、ネットワークアプリケーション・セキュリティ、通信が複雑に絡み合い、どこからでも先端技術が生まれる可能性があるそうだ。
そのうえ、デザインサイクルの加速や生産性の向上など、企業はさまざまな形のイノベーションが必要になっており、キーサイトにはそのための多くのソリューションがあるという。そして、日本市場で力を入れている5G/6G、量子コンピューティング、CASEの取り組みについて紹介した。
例えば、5Gについては商用化に向けて初期の段階から業界団体に参加し、仕様策定のサポートなどを実施。「他社に先駆けてエンドツーエンドのソリューションを提供できる存在になり、6Gにおいても同じことを進めている」(ジュン社長)とのことだ。6Gフラグシッププログラムに参加しているほか、6G実現に向けたテストベッドもすでに構築し、世界各地のラボの研究に利用されている。
量子コンピューティングでは、2016年にフォトニクス技術を手がけた企業や2020年にはマサチューセッツ工科大学のベンチャーを買収し、量子コンピュータに対応する測定ソリューションを展開していく方針だ。
そしてCASEでは、「日本では自動車業界が大きいので、キーサイトが他業界で蓄積してきたノウハウを用いてどう貢献するか、日本法人として特に力を入れている」とジュン社長は話し、電動化やそれに伴う通信、セキュリティなどへの要求に応えていく。そのための施設としてカスタマーセンターを名古屋市に設置している。自動車業界は、IT業界を巻き込んだトランスフォーメーションが加速しており、キーサイトの計測ソリューションの活躍する場がこれから増えてきそうだ。