世界最大級の電子計測器プライベートイベント「Keysight World 2020東京」に先立ち14日に記者会見を開く
キーサイト・テクノロジー(本社:東京都八王子市、社長:チェ・ジュン)は7月14日の午後14時、キーサイト戦略に関するオンライン記者発表会を開き弊誌も同日参加・取材した。世界最大級の電子計測器プライベートイベント開催にあわせて実施したもので、発表会では充電時間が大幅に短縮できる次期型EV(電気自動車)開発向けソリューションや6G(第六世代通信規格)などへの取り組みを表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
ジュン社長は16、17日の2日間開催するプライベートイベント「Keysight World(キーサイト・ワールド)2020東京」で披露する注目技術について、次世代高速デジタル規格と並んで自動車分野を掲げた。
CASEに代表されるように、自動車分野はいまや新たなテクノロジーが多発しており、こうした「テクノロジーが変化しているところは、(業績が)大きく伸びている」と強調。このような自動車技術の進化に対応し、キーサイトは米デトロイト、ドイツ、上海、名古屋の世界4か所にカスタマーセンターを設けて積極的に、技術開発を支援する。
母体のキーサイト・テクノロジーズ・インク(米国カリフォルニア州)はヒューレットパッカードから分離・独立などを経て成長した。電子計測器を主力に、通信エコシステム、航空宇宙/防衛、自動車、エネルギーなど対応する業種は多岐にわたる。
こうしたなか、最新の技術動向や計測技術を紹介するキーサイト・ワールドは日本発祥のイベントで、開催地域がグローバルに広がった。米国、中国、アジア各国のほか、今年からは欧州でも開催されることになった。ただし、今年の東京開催は新型コロナウイルス感染症の影響で、セミナーや製品デモはすべてオンラインでの実施となった。
本体のバイスプレジデント・アジアパシフィック統括本部長をも兼務するジュン社長は今年のキーサイト・ワールド東京で注力する技術テーマの一つとして6Gを掲げた。
実用化が始まったばかりの5G(第五世代通信規格)についてもキーサイトが「準備を開始したのは16年前にさかのぼる。そこから事業を立ち上げ、多くのソリューションが提供できるようになった」と述べ、2030年ごろ実用化されると見られている6Gについても先行を目論む。
また、5G対応のソリューションについてはまず通信端末への展開が始まったのに続き、自動運転やコネクテッドカーなどの自動車分野への広がりに期待感を示した。
次期EV、EV充電機器開発向けソリューションを発表、EV充電時間の短縮に寄与
加えて、キーサイトが今年のイベントで目玉の一つとして提案するのがEVおよびEV充電器(EVSE)向けの充電アナライザー(CDS)・ソリューションだ。キーサイトの傘下となったScienlabのCDSポートフォリオを拡充し、充電中に使用されるEMC(電磁両立性)対応CDSと高出力・超急速充電対応CDSの2種類のソリューションの提供を開始すると発表した(新製品の正式発表日は7月15日付)。
環境対策の観点から、いまや世界の主要自動車メーカーの積極的なEV投入が目立っている。しかし、実際に市販されているEVはまだ内燃機関の100分の1に満たないのが実態だ。
普及拡大のネックとなっているのがEVの航続距離の短さや充電時間の長さ。このうち、航続距離については高速走行で400キロメートル前後まで延びるものが登場しつつあり、満足度が高まってきた。
一方、EVの充電時間に関しては急速充電器でもバッテリーの80%以上充電するのに30分、40分かかるのが現状。このため、数分で充足できるガソリン車などと比べて、満足できる状態にない。
そこで出力を高めて、充電時間短縮を目指す超急速充電器の開発が進んでいる。現状の急速充電器は出力50キロワット級が多く、最大でも150キロワット級にとどまる。
これに対し、出力を300キロワット、400キロワット級に高めて、充電時間の大幅な短縮を目指す動きだ。マーケティング部門オートモーティブ担当の辻井修マーケティング・イニシアティブ・マネージャーは日本のチャデモ規格でもこうした超高速充電導入の検討が始まっているという。
こうした新たな急速充電器が採用されれば、EVの充電時間は今の3分の1に短縮でき、内燃機関の充填時間に近づく。しかし、製品化にあたっては高電圧化など、電送ケーブル発熱の問題があり、冷却ケーブルへの変更などの対応が不可欠。ノイズなどの問題もある。
キーサイトの最新ソリューションはこのような次期の充電器開発に向け、EVおよびEVSEの両面から、実査の充電条件下でEMC試験が可能だ。また、テストを自動化し、生産性向上や時間も短縮でき、チャデモを含む世界の主要な充電規格に対応している。