鹿島は10月7日、実坑道である神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)にて、トンネル工事における全工種の自動化を実現すべく、「A4CSEL for Tunnel」の実規模施工試験を開始したと発表した。
鹿島は、建設業界における喫緊の課題である「熟練技能者不足」、「頻発する労働災害」、「他産業と比べて低い生産性」の抜本的な解決を図るため、「建設現場の工場化」を目指し、施工の自動化を中心とした技術開発を進めている。
こうした中、山岳トンネル工事においては、特に作業環境が厳しく、坑夫の経験に頼っていた切羽周辺の施工を、データに基づく自動化により安全性や生産性、施工品質を飛躍的に向上させることを目的に「A4CSEL for Tunnel」の開発を2018年から推進。これまでは、2018年11月に開設した模擬トンネル(静岡県富士市)を試験フィールドとして、基本動作の確認をしてきた。
「A4CSEL for Tunnel」は、建設機械の自動化による切羽周辺の無人化、ならびに工学的に裏打ちされた「上手な作業」を効率よく行う自動運転の実現により、安全性と生産性の向上を高度に両立させる施工システム。山岳トンネル掘削工事における一連の作業ステップである[1]穿孔 [2]装薬・発破 [3]ずり出し [4]アタリ取り [5]吹付け [6]ロックボルト打設の自動化技術で構成されている。
今回、神岡鉱業の協力のもと、同社が所有する試験坑道において、データに基づく独自の穿孔計画法により、自動穿孔作業から発破掘削までのステップを実施し、効率的穿孔・発破技術を実証する業界初の試みに挑戦することとなった。併せて、これまで開発してきた多くの自動化技術を実工事現場と同等の環境で実証し、それらの有効性および実用性も確認していく。
今後は、神岡試験坑道で2年間にわたって実施工での実証試験を行い、「A4CSEL for Tunnel」の各作業ステップの自動化を進め、順次実工事への導入を予定する。また、この実規模施工試験を通してデータに基づく最適化施工を実現できる人材を育成するなど、自動化施工に即した施工体制の構築も並行して進行するとしている。
■神岡試験坑道 工事概要
場所:岐阜県飛騨市神岡町
諸元:トンネル掘削321.3m 掘削断面積:アプローチ部43.9m2、自動化施工試験部73.5m2