JFEスチールは11月11日、スズキと共同推進している電気自動車(Battery Electric Vehicle/以下、BEV)のバッテリーを衝突から保護する車体構造の軽量化について、「JFEトポロジー最適化技術」を、車体設計に適用する目途を付けたと発表した。
BEVは車体下部に大型バッテリーを搭載するため、衝突時にバッテリーセルを保護するバッテリーパックと車体構造が必要となる。その構造部材には、一般的にアルミニウムが用いられるが、強度確保のために板厚を厚くせざるを得ないため、バッテリー保護部材の軽量化が課題となっていたと云う。
そこでJFEスチールとスズキは、車体構造の最適化による軽量化を目的に、鋼板のみから成るバッテリー保護車体構造の開発を推進。開発にあたって、「JFEトポロジー最適化技術」をバッテリー保護部の設計に活用し、バッテリーにかかる荷重が特に大きくなるポール側突(タイトル図)時の衝突性能を評価。今回、構造部材に各種超ハイテンを最適配置することで、アルミニウムを用いることなく、衝突性能を満たしつつも、バッテリー保護部材の大幅な軽量化を達成する目途が立った。
トポロジー最適化技術とは、与えられた設計空間から、要求される特性に必要な要素を残存させて最も効率のよいレイアウトを求める解析手法。
一般的なトポロジー最適化技術では、部品単体ごとに最適化を行うため、数百もの部品の間の複雑な荷重の流れを車体構造に十分に反映させることは困難であるが、「JFEトポロジー最適化技術」では、設計空間(部品を配置する空間)を、車体の一部として組み込んで解析することにより、車体各部への荷重伝達を車体構造に正確に反映できるため、より少ない重量で衝突性能を効率的に向上させられるとのこと。
これまでも様々な部品の接合位置や形状の最適化に寄与してきた(※1)が、鋼板製バッテリー保護車体構造の最適化に適用されるのは、初めての事例となると云う。
JFEスチールでは、高強度鋼板の開発・製造だけでなく、顧客の工程の省力化や商品の性能向上に資するソリューションを提供するため、自動車用鋼板の利用技術を「JESOLVA」として体系化するなど、自動車の設計段階から顧客と技術的に協力し合うEVI(※3)活動を積極的に展開。今後も、ニーズに合った様々な製品と利用技術を開発・提案し、自動車車体の軽量化によるCO2排出量削減と高性能化に寄与することで、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
※1)JFEトポロジー最適化技術に関する過去のプレスリリース:
・『JFEトポロジー最適化技術』が三菱自動車工業株式会社に採用~自動車車体において初の接合位置最適化技術を開発~:https://www.jfe-steel.co.jp/release/2017/12/171212_1.html
・『JFEトポロジー最適化技術』がスズキ株式会社に採用~自動車車体における部品形状最適化技術を開発~:https://www.jfe-steel.co.jp/release/2019/01/190109.html
※2)EVI(Early Vendor Involvement):自動車メーカーの新型車開発時に設計初期段階から参画し、新型車のコンセプトに合わせた鋼材使用・部材加工方法やパフォーマンス評価等を提案・開発する活動。
■(JFEスチール)JFEの自動車用鋼板利用技術 JESOLVA(PDF):https://www.jfe-steel.co.jp/products/usuita/catalog/b3j-013.pdf