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2020年12月3日【エネルギー】

JFE、高速モータ用Si傾斜磁性材料を開発

NEXT MOBILITY編集部

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【図1】商品開発の方向性と新規開発鋼『JNRF™』の磁気特性

 

 

JFEスチールは、このたび、CVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術(※1)を用い、高周波鉄損(※2)の低減と磁束密度(※3)の向上を両立した高速モータ用Si傾斜磁性材料『JNRF™』を新たに開発。これにより、モータの高トルク化と大幅な高効率化(省エネ)を両立することが可能となる。JFEスチールが、12月3日発表した。

 

(※1) CVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術

鋼帯の焼鈍ラインにChemical Vapor Deposition (化学気相蒸着)法を適用し、連続通板しながら炉内でSiCl4(四塩化珪素)ガスと鋼帯を反応させ、鋼のSi濃度を高めるプロセス技術。

(※2)  高周波鉄損

鉄損とは、鉄心を交流で励磁した際に生じるエネルギー損失であり、主に熱として失われる。高周波で励磁した際に発生するエネルギー損失は特に高周波鉄損と呼ばれ、高速モータにおいては高周波鉄損が低いほどモータ効率は高くなる。

(※3)  磁束密度

磁束密度とは、材料の磁化されやすさの指標であり、磁束密度が高い材料ほど強い電磁石となる。モータにおいては、磁束密度が高い材料を用いることで、より大きなトルク(力)を得ることができる。

 

 

電磁鋼板(※4)はモータや変圧器等の電気機器の鉄心材料として広く用いられており、電気機器の性能を左右するキーマテリアルである。近年、電気機器小型化の観点から駆動周波数(※5)の高周波化が進展しており、電磁鋼板には、高周波域での鉄損の低減が求められるようになってきている。高周波域での鉄損を低減するためには、鋼の電気抵抗を高めるSi(珪素)の添加量を増やすことが有効であり、JFEスチールは独自開発したCVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術を用い、高Si鋼(6.5%Si鋼)『JNEXコア®』、および表層のみのSi濃度を高くしたSi傾斜磁性材『JNHFコア®』を開発・販売し、お客様の製品品質向上に貢献してきた(図1①)。

 

(※4) 電磁鋼板

鉄にSiを添加した材料のことで珪素鋼板とも呼ばれる。モータ、変圧器等の鉄心材料として広く用いられ、絶縁被膜を表面に塗布した薄鋼板が積層されて製品に使用される。

(※5) 駆動周波数

電気機器において、電流・電圧などが1秒ごとに振動する回数のこと。一般的に、高回転で駆動するモータは、駆動周波数が高くなる。

 

 

一方で、高速モータ用途においては、高周波域での鉄損低減とともに、高トルク化の観点から高磁束密度化への要求も強くなっており、拡大する様々なモータ用途に対応するため、電磁鋼板のラインナップを拡充する必要があった。

 

そこでJFEスチールは、浸珪量と拡散条件の最適化によるSi濃度分布のコントロール(図2)および結晶方位制御(図3)に取り組み、従来の無方向性電磁鋼板(3%Si鋼板)並みの磁束密度(トルク)を維持しつつ、モータの大幅な高効率化(省エネ)を可能とする高速モータ用Si傾斜磁性材料 『JNRF™』の開発に成功した(図1②)。今後は、電気自動車の駆動モータ、家電製品用モータ、およびドローンモータなど、小型・高速化が進展するモータ分野での適用拡大を目指すとしている。

 

 

【図2】CVD連続浸珪プロセスとSi濃度分布のコントロール

 

 

【図3】結晶方位制御

 

 

JFEスチールは、これからも、高機能を有する電磁鋼板の開発を推進し、電気機器の高効率化・小型化をはじめとするお客様のニーズに応えていくことで、持続可能な社会の実現に貢献するとしている。

 

※『JNEXコア®』、『JNHFコア®』はJFEスチール(株)の登録商標。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。