自動変速機(AT・CVT)専門メーカーのジヤトコは、6月30日、環境性能と運転性を飛躍的に進化させた中・大型FF車用の新型無段変速機(CVT/※1)「Jatco CVT-X(JF022E/以下、CVT-X)」を開発したと発表した。
なおCVT-Xは、2021年6月に欧州で発売された日産自動車のキャシュカイに搭載されている。
ジヤトコでは、1997年に世界初となる2リッタークラスの金属ベルト式CVT「F06A」の量産を開始してから、CVTのパイオニアとして、これまで累計5,000万台以上のCVTを生産してきた。
CVT-Xは、そんなトランスミッション専門メーカーが技術の限界に挑んで開発し、CVTでは困難とされていた伝達効率90%超を達成した、環境性能と運転性を飛躍的に進化させた自動変速機。名称の“X”には、「究極」や「無限の可能性」、「未知への挑戦」といった意味が込められていると云う。
[CVT-Xの主な特長]
・ターボエンジンにも最適なCVTとして商品化
CO2排出量を抑え、高い燃費性能を実現するダウンサイジングターボエンジンとの組み合わせにも対応。エンジンの効率の良い領域を積極的に使いながら、ターボ加給時のトルクに瞬時に追従する油圧応答性や、トルクコンバーターのロックアップ応答性など、ターボエンジンにより適したCVTに仕上げられている。
・徹底的なフリクション低減を実現
オイルポンプやシールリング、ベアリングなどメカフリクションを徹底的に見直し、従来の同クラスCVT(当社CVT8)比で、約30%のフリクション低減に成功。また、変速機構として新たに採用したチェーンは、ピン間のピッチを現行に対して10%短くして巻き付き径を小さくすることで、変速比幅8.2を実現。これにより高速走行時のエンジン回転数をより低回転化することに成功した。さらに、トルクコンバーターのロックアップ構造を見直して、スリップロックアップ領域を拡大したこと等により、同クラスCVT(当社CVT8)比で燃費を8%向上させた。
・優れた運転性を実現
ショートピッチチェーンの採用により8.2を実現した変速比幅や、トルクコンバーターに多板ロックアップ機構を採用し、ロックアップ完了までの時間を大幅に短縮したことで、発進からの優れた加速性能を実現。また、変速ではフィードフォワード制御とフィードバック制御の双方を組み合わせ、変速時間の短縮と変速ショックを高次元で両立。ドライバーのアクセル操作から車の挙動までの応答スピードを極限まで高め、意のままの走りを実現した。
・快適なNVH(※2)性能を実現
ピン間の距離に従来のピッチとショートピッチの両方を配置したランダムピッチチェーンと、新形状の高剛性チェーンガイドを採用することで弦振動を抑制。これによりチェーンCVTでありながら、静粛性の高い快適な走りを実現した。
※1: Continuously Variable Transmission
※2: Noise, Vibration, Harshness