NEXT MOBILITY

MENU

2021年4月13日【アフター市場】

日本ミシュランタイヤ、新社長就任会見を実施

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 日本ミシュランタイヤ(本社:東京都新宿区)は4月13日に報道陣を招き、同社新社長となった須藤元(すどう げん)氏の就任会見を開いた。なお既に4月1日、B2C事業部 専務執⾏役員の須藤氏を同日付で代表取締役社長とする人事を発表済みだった。(坂上 賢治)

 

新社長の座右の銘は「疾風知勁草/疾風に勁草を知る」

 

これにより日本ミシュランタイヤが発足して以来、初めての日本人社長が就任した。須藤氏は1999年に同社入社。2回の中国赴任でアジリティ(機敏性)を経験し、海外の業界事情にも精通している。先の就任発表時のリリースに於いては「ミシュラングループが掲げる顧客中心主義や地球・人・利益の持続可能性に貢献する精神を礎に〝2050年までにタイヤをすべて持続可能にする〟というグループの取り組みを引き継ぎ推進していきます」と述べていた。

 

 一方2015年から5年半にわたり同職を務めたポール・ぺリニオ氏は、東アジア・オセアニア地域(中国除く)のB2C営業責任者ととしてタイに転任。日本を含む広範エリアの乗用車・商用車・2輪営業部を統括する事になる。

 

 新社長の須藤氏は1971年6月10日(49歳)生まれ。1994年に室蘭工業大学電気電子工学科を卒業し、先にも記載した通り1999年3月に日本ミシュランタイヤ入社。2002年10月中国ミシュランタイヤ、直需タイヤセールスマネージャー2008年1月日本へ帰任した。

 

以降、直需タイヤビジネスビジネスアナリストとして2010年1月から直需タイヤ名古屋セールスマネージャー、2011年10月からは直需タイヤ名古屋オフィスマネージャー、2015年1月からは直需タイヤ東京兼名古屋オフィスマネージャーを務めた。

 

2016年4月に中国ミシュランタイヤへ赴任し副総監・直需セールスダイレクターに。2020年8月に帰国して日本ミシュランタイヤB2C事業部(乗用車、商用車、2輪)専務執行役員。2021年4月、日本ミシュランタイヤ代表取締役社長に就任した。なおミシュランガイドに匹敵するようタイヤ事業の知名度を上げたいと語る須藤氏の座右の銘は〝疾風知勁草/疾風に勁草を知る〟つまり「苦難にあってはじめて、その人の意志の強さがわかる」だと言う。

 

 

新代表取締役社長・須藤元氏の会見挨拶

 

 13日、報道会見の席上で須藤氏は、「4月より日本ミシュランタイヤの代表取締役社長に就任しました須藤元です。 私は1999年に日本ミシュランタイヤに入社し、主に直需タイヤの領域でキャリアを積んでまいりました。

 

昨年7月までミ シュラン中国で直需セールス部門におり、中国の躍進を肌で感じてきました。そして昨年8月に日本ミシュランタイヤに戻り、乗用車、商用車、2輪事業部の営業チームをまとめていました。

 

 この度、ペリニオの後を継ぐことになって大きな責任とやりがいを感じています。一方で私たちを取り巻くビジネス環境は大転換期を迎えています。ミシュランのビジネスも、タイヤを中心としながらもIoTを活用したトラック・バス用タイヤの管理システム TPMS(タイヤプ レッシャーモニタリングシステム)などのサービス&ソリューション、ミシュランガイドなどのエクスペリエンス、3D タルプリンティング(群馬で実施・展開中)など、ハイテク・マテリアル分野など多岐に拡大しています。

 

〝タイヤと共に、タイヤ関連で、タイヤを超越して〟人類・社会・ お客様に貢献することが私たちミシュラングループが描くサステナブルな未来です。そんなミシュランには〝People-Planet-Profit〟という世界観があります。これは人や環境に貢献することで、利益が生まれ、会社を存続させて、さらに社会に貢献していくという考え方です。

 

 このPeople-Planet-Profitという考え方の源流には、まず〝People:人〟の持続性があります。ミシュランは〝人への尊重〟をミッションに掲げ、お客様、株主、従業員、私たちを取 り巻くすべてを等しく尊重し関わる方々の人生をよりよく持続するために行動します。

 

より具体的には、従業員ひとりひとりが自律性を高め、お客様が真に求め・喜んで頂けるタイヤ、ソリューション、サービスを実現します。これを背景に私は従業員に〝ワクワクする、やりがいのある仕事をしよう〟と伝えています。

 

お客様を筆頭に様々な人々に喜ばれ、社会を変える仕事は、きっと ワクワクしてやりがいがあるはずです。サービスをお届けする従業員がワクワクしてこそ、ブレークスルーを起こすイノベーショ ンが生まれると信じています。

 

 

持続可能性がミシュランの未来のカギとなると 固く信じている

 

 また従業員には〝伝える〟こと、〝伝えようと努力すること〟の重要性をもっと認識して貰いたいと思っています。従業員同士がアイディアを伝えることでより良いサービスが生まれる。お客様に想いを伝えることでより強固なパートナーシップが生まれる。

 

日本の活動を海外に伝えることで、日本ミシュランタイヤの存在感がグループの中で増していく。以心伝心を尊ぶこの国で〝伝える〟〝言葉にする〟事で顧客満足を高め、ひいては世界で日本の存在感を高めていきたいと思います。

 

 次に〝Planet:地球〟の持続性です。今、地球環境への貢献は私たち人類の責務です。解決策の一つとしてミシュ ランは2050 年までにミシュランタイヤを100%持続可能にすることを宣言しています。

 

現在、ミシュランのタイヤを構成する素材のうち30%は、既に天然素材またはリサイクル素材、持続可能な原材料を使用しています。これを約30年で100%までに高めるため、ミシュラングループは全力を挙げて技術開発に取り組んでいます。これはグループ全体の取り組みだけでなく、日本に根差したCSR 活動としても積極的に推進していきます。

 

 最後に〝Profit:利益〟の持続性です。People-Planetの取り組みを持続可能にするため、企業の利益は無くてはならないものです。私は従業員がワクワクしてお客様が真に求めるものを提供していけば、自ずと企業利益は高まると信じます。

 

130年前の1889年に、この会社が創業した時からミシュランは常に時代を先取り、革新的な製品やサービスへの挑戦の歩みを止めませんでした。私たちもその歴史の一環を担い、ミシュランという企業を、そしてこの社会を進化させて 次の世代に引き継ぎます。

 

 これらすべてが完全に共存した時、私たちの未来は変わります。我々は持続可能性がミシュランの未来のカギとなると 固く信じています。人のために、地球のために、そしてその活動を支える収益確保のために、日本ミシュランタイヤはひとり ひとりが自立的に社会の中の存在意義と役割を果たし、より強い組織となって日本社会に貢献します。

 

 加えてよりお客様に喜ばれ、私たちも利益を上げることができる日本らしいビジネスを自由な発想とチームワークで作っていきます。変化はチャンスであり変化は進化です。日本ミシュランタイヤとその取り組みをさらに進化させるため、皆様のご指導ご鞭撻を頂きますよう、どうぞ宜しくお願いします」と述べた。

 

 

前代表取締役社長のポール・ペリニオ氏の会見挨拶

 

 この後、日本の報道関係者向けに語る最後の機会として、前社長のポール・ぺリニオ氏は、「本日は、お忙しい中ご参加頂きありがとうございます。 日本ミシュランタイヤの前代表取締役社長として、報道関係の皆様へ私から最後のメッセージをお送りします。まず2015年に日本ミシュランタイヤの社長に就任してから5年半、社長就任前から合わせると合計 18年に亘って、皆様から様々なご支援をいただき心から感謝しています。

 

 日本ミシュランタイヤでは、トラックバスマーケティングから始まり、乗用車・商用車マーケティングダイレクター、コマーシャル ダイレクター、そして最後は社長として様々なポジションで素晴らしい日々を過ごしました。

 

日本での在任中、私はできるかぎり多くお客様・パートナー企業の皆様の元に足を運び、率直なご意見を直接お聞きすることを大切にしていました。日本のお客様、そしてメディアの皆さんからも多くのことを学ばせて頂きました。

 

 それらは、日本社会に貢献するために日本ミシュランタイヤはどうあるべきか、多くの示唆に富むものでした。 私は日本が好きで、この国に住む人も大好きです。 途中、イギリス、フランス、アイルランド、ベルギー・オランダ・ルクセンブルクなどの各国のミシュランでキャリアを積みながらも、 多くの時間を日本ミシュランタイヤで過ごしたのは、日本の〝思いやり〟というコンパッションとリスペクトの心に共感していた からです。

 

この心は、ミシュラングループが大切に守っている〝人の尊重〟の精神そのものでした。 私は、皆さんのお陰で成長することができました。皆さんと共に仕事をした経験は私の宝物です。人として、ビジネスパー ソンとして私を育てて頂き、ありがとうございました。

 

 

日本の〝三方よし〟の考えはミシュランの経営理念と通じるもの

 

 ここで翻ってみると、日本の市場は大きな転換期を迎えており、これから衰退するビジネスもあるでしょう。しかし私は、日本という国に大きな 可能性を感じています。特に自動車・タイヤ業界は、サステナブルで利益の出る成長のタネは必ずあると考えています。

 

ミシュランの企業ポリシー〝People-Planet-Profit〟は、人や環境に貢献することで利益が生まれ、会社を存続させてさらに社会に貢献していくという考え方で、これは日本 語で昔から〝三方よし〟と言われるwin-winの考え方で、私はこの三方が完全に共存した時、all sustainableな素 晴らしい世界が生まれると確信しています。

 

またAll sustainable, すべてを持続可能に。 日本には古くからリサイクルの考えや価値観が根付いています。サステナビリティは新しい世界のトレンドですが、日本にとっては慣れ親しんだ考え方とも言えます。

 

 今後、未来に向けて持続可能な社会やビジネスを日本がリードしていくことは自然であり、その 中で日本ミシュランタイヤも貢献できることがあると私は信じています。そのためにミシュラングループは with tires (タイヤと共に), around tires (タイヤ関連で), beyond tires (タイヤ を超越して)、を原点としたビジネスを展開していきます。

 

日本の皆さんの成長を、私はこれから中国を除く東アジア・オセアニア地域の乗用車・商用車ビジネスのセールスダイレクターという立場から応援します。後任の社長となる須藤にも、今までの私と同様に皆様の暖かいご指導・ご鞭撻頂けますよう宜しくお願い致します。 これからも、みなさんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。 皆さんも、皆さんのご家族も、どうぞお元気で。今まで本当にありがとうございました。Merci beaucoup!」と語った。

 

 

会見の質疑応答で、同社が取り組むTaaSについて語る

 

 なお会見の質疑応答では、同社が取り組むTaaS(タイヤ・アズ・ア・サービス)についての質問があった。これはタイヤやエンジンに搭載されたセンサーが収集した燃料消費量やタイヤの空気圧、気温、スピード、ロケーションなどのデータを分析・活用。

 

タイヤ提供企業が、単なるタイヤの製造・販売を越えて走行距離に基づいてタイヤ使用量を課金。ひいては燃費削減支援や運行管理支援を行いバリューチェーンをサービス領域にまで拡張するものだ。

 

これについてペリニオ氏は、「これは、TaaS(タイヤ)というよりもMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に立脚したもので、我々タイヤ供給メーカーは、モビリティサービスの提供企業として車両や事業ソリューションを司るオーナーだけに応えるのみならず、サービスを直に利用するドライバーのニーズにも応えなければなりません。この点に私たちは腐心しています。

 

なお、こうした取り組みは2014年に、ブラジルのトラックに於けるフリートマネジメント(車両管理)を手掛けるサスカーを当社が買収した(13億5000万レアル/当時の約620億円を支払い、かつサスカーが抱える2億4700万レアルの負債を引き受けた)の買収などあります。

 

日本国内に於いても、こうしたニーズをお持ちのお客様がおられると思いますので、様々なステークホルダー各位様と手を取り合って変化し続けるマーケットニーズに応え、お客様にとって最適なソリューションの提供や製品パフォーマンスの向上に貢献していきたいと思います」と結んでいた。

 

 ちなみにミシュランは、他にも2017年に米事業者向け決済サービス大手フリートコア(FLEETCORE)・テクノロジーズから商用車向けテレマティクスを手掛ける子会社ネクストラック(NexTraq)を買収。2019年には、英Masternaut(マスターノート社/欧州大手の車両向けテレマティクスプロバイダー)などを買収。タイヤ製造・供給メーカーを越えた事業成長を目指し、積極的な取り組みを展開している。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。