岩手大学発ベンチャーのAIスタートアップ企業エイシングは、5月31日、クラウドを介さず導入機器側で自律学習をするエッジAIで、自動運転車や産業機器向けにリアルタイムな予測が可能な独自AIアルゴリズム「ディープ・バイナリー・ツリー(以下、DBT)」について、従来の最大50%予測精度を向上させた「DBT-HQ(High Qualty)」をリリースすると発表した。
自動運転車や産業機械向けAIは、近年、今までクラウド上で実行されることが一般的だった情報処理を、エッジ(導入機器)側で実行する「エッジAI」が注目されている。そんな中、同社では導入機器単体がクラウドを介することなくリアルタイムに自律学習することが可能な独自のAIアルゴリズム「DBT」を提供している。
そもそもエッジAIにおけるAIアルゴリズムには、クラウド接続を必要とせず導入機器側で学習データの更新が可能な自律学習型と、クラウド接続が必要なクラウド型の2種類があり、「DBT」は自律学習型に属する。
従来の「DBT-HS」では導入機器単体で学習できる、かつ学習・予測処理が高速である一方、計算リソースの観点から、その精度においてはクラウド型に劣っている課題を抱えており、同社では自律学習型でありながら、導入機器がより高精度にリアルタイムな自律学習・予測を行うことができるAIアルゴリズムの研究・開発を進めていた。
そして、その研究・開発の成果として、クラウド型に近い高精度の予測を実現した自律学習型のAIアルゴリズムが、今回リリースする「DBT-HQ」だ。
この「DBT-HQ」に関し同社では、従来型の「DBT-HS」と新たに開発した「DBT-HQ」を比較したデータ検証を実施。手書き英字の特徴量からアルファベットを特定する検証において、「DBT-HS」が63.0%の正解率だったのに対し、「DBT-HQ」では90.6%という高い正解率を達成している。
この検証により、使用するデータによって精度の差に変化はあるものの、「DBT-HQ」は「DBT-HS」に対しておおよそ10〜50%程度学習と予測の精度が向上している結果となり、自律学習型でありながら、よりクラウド型に近い予測精度を実現したことが実証されている。
また、同社では、今回の「DBT-HQ」は「導入機器側でのリアルタイム予測とより精度の高い予測を必要とする自動運転車や産業機械への導入に適しており、今後モビリティ業界や製造業界への実装化を中心にすすめていく」予定。
加えて、同社では、従来の従来の高速処理を得意とする「DBT-HS」と高精度予測の「DBT-HQ」を、「顧客の導入目的や適応対象に合わせて提供」していく方針だ。