トヨタ自動車入りは自然に。品質保証畑は自ら志望してエキスパートに
――佐藤社長は、トヨタ自動車入りは当時のトヨタ自工で、同志社大学の工学部卒ですね。 同志社というと日産の内田社長が同志社大学神学部から商社経由で日産入りしたのが話題になりました(笑)。佐藤さんは、同志社の工学部からトヨタ自工入りというのは、どういう背景だったのですか。
佐藤 私は出身が愛知県豊田市で、父親もトヨタ自工でした。トヨタ自動車が大きくなって行くのを見ながら育ってきたものですから、Uターンで豊田の地元に帰りました。 何故かというと、祖父が畑を持っていて、「お前、戻ってきてここに家を建てろ」と。それが頭の中に残っていて豊田に戻るのだったらトヨタに入ろうかと考えて今に至ります。
そんな訳でトヨタは大好きな会社ですが、実はクルマはそれ程好きじゃない。実際そう言って章男さんに怒られています(笑)。
ちなみにトヨタに入ると、大抵の人はエンジン開発などを希望しますが、工学部出身の私は図面を描くのが嫌いで、社内説明会の時に図面を描かない部署はないのかと聞き、誰も応募しない品質保証部門を第1希望と書いて、すんなり決まった。そういう背景です。
――品質保証畑のエキスパートになって、様々な部門を跨がってご覧になり、視野が広くなられたのは収穫だったかも知れませんね。
佐藤 そうですね。品質保証を皮切りにTQMも担い、役員になってからはサービス部門にも携わらせて頂き、補給部品にも関わりを持ちました。 今はそうした品質保証畑をやって来て本当に良かったと思います。
例えばトヨタで品質保証会議をやると、営業も含め広域部門が全員出席します。従って営業では何が課題であり、生産技術での課題であり、工場で技術部がどうなっているかなど、全てを知る事が出来ます。
ジェイテクトに来た時にどの部署を見ても何ら違和感がないというか、色々な事にコメント出来る。勿論、必ずしも個別の深いところ迄100%知り得る訳ではありませんが、オールマイティな便利屋のようなところがあり、会社全体を理解するためには本当に助かります。
結果、製造会社のありとあらゆるところの一連の問題に通じながら、色々勉強させて貰ったのですから。
座右の銘は〝本気〟と〝利他〟
――佐藤社長の座右の銘や人生訓。ご趣味は、どんなものですか。
佐藤 座右の銘ですと、先程の三角形の話の中にもありましたが、「本気」という言葉が大好きです。 何故かと言うと、どんな事をやるにしても意志が入っていないものは成功しないと思っているからです。
「私はこれがしたい」だとか、「私はこれをしてあげたい」と言う、そうした強い意志があるから物事が進むし、諦めずにやれると思っています。
大体、本気がない人が仕事をしているから会社は問題になってしまうので、本気というのが私の中では一番の座右の銘です。 後は伊奈食品の塚越さんから教えて頂いた忘己利他の「利他」ですね。この利他が役員になってから特に心に響くようになりました。このふたつが座右の銘です。
――ご趣味は。
佐藤 左記の通り、私の出身大学が同志社大学で、妻が京都女子大だった事。また2人とも京都が好きなので、夫婦で京都の町歩きをするのが趣味です。
ジェイテクト取締役社長、佐藤和弘氏(さとう かずひろ)のプロフィール
佐藤和弘氏は1956年(昭和31年)4月生れ。1979年(昭和54年)同志社大学工学部機械工学科卒、同年4月トヨタ自動車工業入社。2001年(平成13年)トヨタ自動車品質保証部企画室室長、2005年(平成17年)同社品質保証部長。2008年(平成20年)同社田原工場品質管理部長、2010年(平成22年)同社BRコミュニケーション改善質主査、同年同社BRコミュニケーション改善室室長、2012年(平成24年)同社常務理事カスタマーサービス領域領域長。2014年(平成26年)同社常務役員カスタマーファースト推進室長、2016年(平成28年)同常務役員カスタマーファースト推進本部長兼Global Chief Quality Officer、2017年(平成29年)同社専務役員、2019年(令和元年)同社執行役員カスタマーファースト推進本部長兼Global Chief Quality Offcer。2020年1月(令和2年)ジェイテクト顧問、同年6月ジェイテクト取締役社長就任。
*同コンテンツは、当編集部の隔月刊誌「NEXT MOBILITY」 からの転載記事です。転載にあたり一部の記述を刷新しました。