ジェイテクトの企業理念は、三角形の基本理念に基づく
――――ジェイテクトとしての企業理念は、先ほど、〝No.1 & Only One〟と言う話がありましたが、そこを改めてお伺い出来ればと思います。
佐藤 当社には三角形の〝ジェイテクトの基本理念〟があります。このトライアングルが達成出来る会社で、対象社員であれば、絶対に他に負ける事は無いとした理念です。
実はこの理念の大元は、トヨタの〝TQMの基本理念〟で、トヨタでは上段に〝お客様第一〟と記されています。 私はトヨタで品質担当として、この理念の徹底を長年担ってきました。
しかしこれが出来たのは昔の事なので、当時はお客様だけに注視すれば良かった。しかし今は〝地球のため〟〝世の中のため〟を念頭に据えないと、正しい企業とは言えなくなりました。
例えば他社でも、よく見掛ける企業理念には、難しい言葉と共にSDGsやESGが並べられています。しかし現場の社員が「それで理念が伝わりますか」と私は心から思っており、今、必要なことを簡単に分かるようにしたい。
ちなみにここでの「地球のため」とは、土であり、空気であり、水であり、動植物の世界を大切にする事で、これらは全て炭素中立に帰着します。
次の「世の中のため」とは、我々がB to Bの会社でありつつB to Cへ最終的には製品を提供し、お客様に喜んで貰うのがあるべき姿です。それにより利益を得て、税金を収め、雇用も安定的に守っていく。これが世の中のためです。
では「お客さんのため」とは、良品廉価な製品づくりで貢献していく事です。良品廉価なモノづくりが社会貢献に繫がる。そのために皆で弛まぬ改善を重ねないと良品廉価は達成出来ません。それらがこの三角形で謳われています。
これが出来る組織は、他に負けない強い会社になれます。今後も先行き不透明ですが、全員参加で対話を積み重ねて、ジェイテクトの体質強化を高めて行きたいと考えています。
薫陶(くんとう)を受けた〝年輪経営〟で種まきの大変さを実践していく
――トヨタ時代のキャリアから見ると、佐藤社長は品質保証のエキスパートでした。カスタマーファースト推進本部長もやられていた。そうした中でジェイテクトの社長に就任されて〝年輪経営〟を標榜されていますが、その経緯については。
佐藤 この年輪経営は、この理念で著名な伊那食品・最高顧問の塚越寛さんと、トヨタの役員時代に大変に懇意にさせて頂き、直接に薫陶を受けたことが発端となっています。従って塚越さんの年輪経営をそのままイメージしています。
塚越さんとお話をさせて頂いた時に、年輪経営は、その姿から右肩上がりに売り上げも、利益も伸びて行き、連続的に増収増益を重ねていく形になっています。確かにこれは理想の企業像ですが、〝言うは易し行うは難し〟です。そんな伊那食品さんの経営をつぶさに見ると、寒天という極めて狭い製品領域で増収増益を刻み続けています。
これはどういうことかというと、伊那食品さんは、毎年毎に新たな製品やサービスを投入しているのです。 同社は、主力製品のシェアが8割もあるにもかかわらず、売り上げの約1割を研究開発費に使っている。
普通シェア8割は、ほぼ独占の状態で、本来は挑戦せずに事業を維持するだけでも安定経営が可能になる。しかしそれは横ばいを意味するのであり、右肩上がりにはならない。
だから同社は、新たに毎年種蒔きをし育てながら刈り取っていく。つまり種を一生懸命に蒔いていくところが、この年輪経営の根幹にあると思います。そこで弊社も、中計のところで言っているのですが、種蒔きという、未来にこれから育っていく種を一生懸命蒔いて行かないと、右肩上がりなんて到底出来ない。
年輪経営には、そういう意味があり、伊那食品さんは、この言葉を美しく使ってはいるけれども、ものすごく大変だぞと社内で言っています。
黒字転換のステージを経て、来期から先行投資も攻めていく
――種まきという意味では、先ほど自動運転と電動化を大きなテーマとして挙げられていました。 その自動運転と電動化は、相性も効率性という見方でも良い組み合わせであり、OEMもサプライヤーも、纏まった研究開発費を投下しています。これを踏まえ、ジェイテクトとしての先行投資についてのお考えは如何ですか。
佐藤 社長職に就任以降、経営が厳しい状態でしたので、同じ設備投資額でも中身が濃い経営を心掛けて来ました。 そして迎えた今年は、予定通りに行けば、純利益で210億位を望めるステージに入るため、来年度はいよいよ攻めていく年だと考えています。
具体的には競争力を上げる部分、新規で投資していく部分などの種蒔きにも心を留めながら攻めてい行きたい。