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2022年4月21日【特集・解説】

ジェイテクト佐藤和弘社長に訊く、CASE時代を生き抜く道

NEXT MOBILITY編集部

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ジェイテクトの企業理念は、三角形の基本理念に基づく

 

 

――――ジェイテクトとしての企業理念は、先ほど、〝No.1 & Only One〟と言う話がありましたが、そこを改めてお伺い出来ればと思います。

 

 

 佐藤 当社には三角形の〝ジェイテクトの基本理念〟があります。このトライアングルが達成出来る会社で、対象社員であれば、絶対に他に負ける事は無いとした理念です。

 

 実はこの理念の大元は、トヨタの〝TQMの基本理念〟で、トヨタでは上段に〝お客様第一〟と記されています。 私はトヨタで品質担当として、この理念の徹底を長年担ってきました。

 

しかしこれが出来たのは昔の事なので、当時はお客様だけに注視すれば良かった。しかし今は〝地球のため〟〝世の中のため〟を念頭に据えないと、正しい企業とは言えなくなりました。

 

 例えば他社でも、よく見掛ける企業理念には、難しい言葉と共にSDGsやESGが並べられています。しかし現場の社員が「それで理念が伝わりますか」と私は心から思っており、今、必要なことを簡単に分かるようにしたい。

 

 ちなみにここでの「地球のため」とは、土であり、空気であり、水であり、動植物の世界を大切にする事で、これらは全て炭素中立に帰着します。

 

 次の「世の中のため」とは、我々がB to Bの会社でありつつB to Cへ最終的には製品を提供し、お客様に喜んで貰うのがあるべき姿です。それにより利益を得て、税金を収め、雇用も安定的に守っていく。これが世の中のためです。

 

 では「お客さんのため」とは、良品廉価な製品づくりで貢献していく事です。良品廉価なモノづくりが社会貢献に繫がる。そのために皆で弛まぬ改善を重ねないと良品廉価は達成出来ません。それらがこの三角形で謳われています。

 

 これが出来る組織は、他に負けない強い会社になれます。今後も先行き不透明ですが、全員参加で対話を積み重ねて、ジェイテクトの体質強化を高めて行きたいと考えています。

 

 

薫陶(くんとう)を受けた〝年輪経営〟で種まきの大変さを実践していく

 

 

――トヨタ時代のキャリアから見ると、佐藤社長は品質保証のエキスパートでした。カスタマーファースト推進本部長もやられていた。そうした中でジェイテクトの社長に就任されて〝年輪経営〟を標榜されていますが、その経緯については。

 

 

 

 佐藤 この年輪経営は、この理念で著名な伊那食品・最高顧問の塚越寛さんと、トヨタの役員時代に大変に懇意にさせて頂き、直接に薫陶を受けたことが発端となっています。従って塚越さんの年輪経営をそのままイメージしています。

 

 塚越さんとお話をさせて頂いた時に、年輪経営は、その姿から右肩上がりに売り上げも、利益も伸びて行き、連続的に増収増益を重ねていく形になっています。確かにこれは理想の企業像ですが、〝言うは易し行うは難し〟です。そんな伊那食品さんの経営をつぶさに見ると、寒天という極めて狭い製品領域で増収増益を刻み続けています。

 

 これはどういうことかというと、伊那食品さんは、毎年毎に新たな製品やサービスを投入しているのです。 同社は、主力製品のシェアが8割もあるにもかかわらず、売り上げの約1割を研究開発費に使っている。

 

普通シェア8割は、ほぼ独占の状態で、本来は挑戦せずに事業を維持するだけでも安定経営が可能になる。しかしそれは横ばいを意味するのであり、右肩上がりにはならない。

 

 だから同社は、新たに毎年種蒔きをし育てながら刈り取っていく。つまり種を一生懸命に蒔いていくところが、この年輪経営の根幹にあると思います。そこで弊社も、中計のところで言っているのですが、種蒔きという、未来にこれから育っていく種を一生懸命蒔いて行かないと、右肩上がりなんて到底出来ない。

 

 年輪経営には、そういう意味があり、伊那食品さんは、この言葉を美しく使ってはいるけれども、ものすごく大変だぞと社内で言っています。

 

 

黒字転換のステージを経て、来期から先行投資も攻めていく

 

 

――種まきという意味では、先ほど自動運転と電動化を大きなテーマとして挙げられていました。 その自動運転と電動化は、相性も効率性という見方でも良い組み合わせであり、OEMもサプライヤーも、纏まった研究開発費を投下しています。これを踏まえ、ジェイテクトとしての先行投資についてのお考えは如何ですか。

 

 

 

 佐藤 社長職に就任以降、経営が厳しい状態でしたので、同じ設備投資額でも中身が濃い経営を心掛けて来ました。 そして迎えた今年は、予定通りに行けば、純利益で210億位を望めるステージに入るため、来年度はいよいよ攻めていく年だと考えています。

具体的には競争力を上げる部分、新規で投資していく部分などの種蒔きにも心を留めながら攻めてい行きたい。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。