未来を見据え、ナンバーワン&オンリーワンのビジョン実現
――中長期視野で種蒔きを行い、事業の柱を5本へ持って行くというのが狙いなんですね。
佐藤 新事業を含めた5本柱を育て上げる一方で、既存ビジネスの競争力も引き上げて行くというのが、私の考える中期的な戦略です。
当社はこれまで、どちらかというと過去のデータや実績に基づき、実現可能な事業を積み上げていく〝フォアキャスト〟的な成長を重ねて来ました。 しかし今後は、目標となる未来を定めた上で現在を振り返り、未来起点で今何をすべきかを〝バックキャスト〟的に考えて成長して行ける組織に育てたい。
実は予てよりジェイテクトグループのビジョンでは〝No1 & Only One〟というものがあるのですが、基本的な考え方は、これに尽きます。
例えるならば〝既存ビジネスであるならナンバーワンになれ、競争力を上げろ〟。また今度は新しいステージに立ったなら〝オンリーワンの技術を伸ばして行け〟。これが我々が目指すべき理想の姿だと思います。
名実共にトヨタグループ有力プライヤーとしての立ち位置を目指す
――ジェイテクトは、事業領域が広いだけに、未来に向けてそれを活かして行く事が大事ですね。一方で、ジェイテクトはトヨタ傘下で、主要グループの中核に位置付けられています。
従って〝トヨタと共に〟と言う部分も当然あるかと思います。そうしたトヨタのグループ企業としての生き方については、どのように考えておられますか。
佐藤 私はトヨタで育ち、豊田章男社長を筆頭にグループ全体で力を合わせるというマインドで育てられましたから、先に申し上げた通りでジェイテクトでは、若干、違和感がありました。 従って当社を名実共にトヨタグループの会社にして行く必要があると承知しています。
ちなみに愛知県の刈谷地区は、ご存じの通り、トヨタのグループ企業が本社を構えている地域です。豊田工機も元々は刈谷に本社がありました。 しかしその後、色々な経緯があったのだと思いますが、なぜか当社の場合、直近まで名古屋駅前のミッドランドスクエアの15階に本社が置かれていました。
本社といっても、いわゆる経営管理部門が名古屋駅前にあっただけで、私は「どうしてここにジェイテクトの本社があるのだろう」とずっと思っていました。
その後、ジェイテクトの顧問になった時「我々はここにいるべきではない。刈谷に行こう」と思い、実際に社長になって4日後に役員達を集め、「ここから撤退して刈谷に行くぞ」と言いました。
そうしたら、みんなきょとんとしているので、「君たちに2週間の時間を与えるから考えろ」と言って、明けた2週間後に「刈谷に移るのに反対の者はいるか」と言ったら誰もいなかったので、「では決定」という事で、私は6月25日に社長になりましたが、7月末の取締役会に本社移転を提案して認められ、年末にはもう刈谷に移動していました。
――そうだったのですか。