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2022年4月21日【特集・解説】

ジェイテクト佐藤和弘社長に訊く、CASE時代を生き抜く道

NEXT MOBILITY編集部

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自動運転と電動化への取組みを介して未来を切り拓く道へ

 

 

――CASEあるいはMaaS、カーボンニュートラル実現への対応が求められています。

 その中で特に電動化の流れは、〝内燃機関からEVシフト〟という大きなうねりが出てきている訳ですが、当然OEMも、そのサプライヤーとしての部品メーカーも、これらが生き残りへを賭けた大きなテーマとなっています。

 従ってジェイテクトとしては、現在の事業領域の中でどう生き抜いて行くかという状況になるかと思います。 それに対する課題や展望は、サプライヤーサイドの立場として、どのように見ておられるのですか。

 

 

 佐藤 その通りで、我々もCASEやMaaSへの対応が求められています。 そうした中でジェイテクトとしては、〝自動運転〟と〝電動化〟が一番身近かなテーマだと考えます。

 

 まず自動運転のところでは、これまでも様々な技術を既に公表していますが、例えばステアリング系では「ステア・バイ・ワイヤ」のように操舵構造が機械的に繫がっていない状態で、電気信号を介して操舵を行う世界が早晩普通になる時代がやってきます。

 

 その先には、トヨタの「イーパレット」のようにステアリング自体が無くなってしまう車両も登場するでしょう。 このような手動操舵や自動操舵に関わる技術に関しては、我々の保有技術が存分に活かせると思います。

 

 次に電動化では、今後おそらく化石燃料を使う内燃エンジンや、油圧動作のブレーキシステムなどを搭載する車種ラインナップが次第に縮小して行くでしょう。

 

 その代わりにホイール周りに、先の自動操舵機能の一部や電動ブレーキ機能。更には駆動力伝達の役割を担う電動モーターをも内蔵するインホイールタイプのユニットも〝イーアクスル〟に続くモジュール化のひとつとして標準化されるでしょう。

 

 ただ電動化と、ひとくちに言っても、このようなモジュール化を目指すスタイルは、様々な機能を組み合わせて使う事になります。 従って完全なインホイールタイプとは別に、車両のタイプに因っては、ホイール内に組み込む機能や装置は一部に留め、車体側の搭載装置と組み合わせるものなど様々なバリエーションも成立し得ます。

 

 従って装置や機能の組み合わせも多角的に捉え、我々が次世代車に対してどのような形で食い込んで行けるのかを、柔軟に考えて行かなければならないと思っています。

 

 

ジェイテクトの将来に向け、現況の3本柱を5本柱に育てたい

 

 

――今お話頂いた内容と重複しますが、今後の自動車産業は2025年、あるいは2030年に向けて、環境対応への備えも急がれているように思います。 このような環境下でジェイテクトが目指す経営方針や重点課題などについて、どのような見立てをお持ちでしょうか。

 

 

 

 佐藤 まず先のステアリングやハブ周り、ベアリングも含めた工作機械などは、いずれも祖業由来の技術的背景を持つ心強い3本柱です。 しかし、より遠い将来を見据えると、歴史上には様々な栄枯盛衰がある訳ですから、更に2本程度の新たな柱が欲しい。

 

 そのためには、中長期視野で〝種蒔き〟を行い、現業とのシナジー効果を如何に生み出すかが大切です。 例えば、我々が長年磨いてきた保有技術や部品製造のノウハウは、電動車両の心臓部のひとつと言えるイーアクスル製品の開発過程に於いても貢献出来るでしょう。

 

 また当社が近年、注力するギア駆動時の静粛化技術も我々強みのひとつですが、そこにベアリング技術を組み合わせれば新たな「ギアASSY」が出来る。

 

 このような新しい製品群は、提供先を既存産業向けに限定する必要は無い訳ですから、今後の伸張が期待されるロボット産業などにも活かす事で、これらが実現すれば確実に未来へ向けた新事業領域となります。

 

 最後に、将来への期待をもう一例挙げると、それは既存の蓄電池とは異なる仕組みで電気を溜めるコンデンサ「キャパシタ」があります。

 

これは先のステア・バイ・ワイヤ機構の非常用電源としても有用ですが、そもそも蓄電並びに放電時の効率が極めて高く、低環境負荷等の優位性もあるため、私の個人的な感触では現段階での想定範囲を超え、当社の未来を切り拓いてくれる大きな存在になると思っています。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。