自動運転と電動化への取組みを介して未来を切り拓く道へ
――CASEあるいはMaaS、カーボンニュートラル実現への対応が求められています。
その中で特に電動化の流れは、〝内燃機関からEVシフト〟という大きなうねりが出てきている訳ですが、当然OEMも、そのサプライヤーとしての部品メーカーも、これらが生き残りへを賭けた大きなテーマとなっています。
従ってジェイテクトとしては、現在の事業領域の中でどう生き抜いて行くかという状況になるかと思います。 それに対する課題や展望は、サプライヤーサイドの立場として、どのように見ておられるのですか。
佐藤 その通りで、我々もCASEやMaaSへの対応が求められています。 そうした中でジェイテクトとしては、〝自動運転〟と〝電動化〟が一番身近かなテーマだと考えます。
まず自動運転のところでは、これまでも様々な技術を既に公表していますが、例えばステアリング系では「ステア・バイ・ワイヤ」のように操舵構造が機械的に繫がっていない状態で、電気信号を介して操舵を行う世界が早晩普通になる時代がやってきます。
その先には、トヨタの「イーパレット」のようにステアリング自体が無くなってしまう車両も登場するでしょう。 このような手動操舵や自動操舵に関わる技術に関しては、我々の保有技術が存分に活かせると思います。
次に電動化では、今後おそらく化石燃料を使う内燃エンジンや、油圧動作のブレーキシステムなどを搭載する車種ラインナップが次第に縮小して行くでしょう。
その代わりにホイール周りに、先の自動操舵機能の一部や電動ブレーキ機能。更には駆動力伝達の役割を担う電動モーターをも内蔵するインホイールタイプのユニットも〝イーアクスル〟に続くモジュール化のひとつとして標準化されるでしょう。
ただ電動化と、ひとくちに言っても、このようなモジュール化を目指すスタイルは、様々な機能を組み合わせて使う事になります。 従って完全なインホイールタイプとは別に、車両のタイプに因っては、ホイール内に組み込む機能や装置は一部に留め、車体側の搭載装置と組み合わせるものなど様々なバリエーションも成立し得ます。
従って装置や機能の組み合わせも多角的に捉え、我々が次世代車に対してどのような形で食い込んで行けるのかを、柔軟に考えて行かなければならないと思っています。
ジェイテクトの将来に向け、現況の3本柱を5本柱に育てたい
――今お話頂いた内容と重複しますが、今後の自動車産業は2025年、あるいは2030年に向けて、環境対応への備えも急がれているように思います。 このような環境下でジェイテクトが目指す経営方針や重点課題などについて、どのような見立てをお持ちでしょうか。
佐藤 まず先のステアリングやハブ周り、ベアリングも含めた工作機械などは、いずれも祖業由来の技術的背景を持つ心強い3本柱です。 しかし、より遠い将来を見据えると、歴史上には様々な栄枯盛衰がある訳ですから、更に2本程度の新たな柱が欲しい。
そのためには、中長期視野で〝種蒔き〟を行い、現業とのシナジー効果を如何に生み出すかが大切です。 例えば、我々が長年磨いてきた保有技術や部品製造のノウハウは、電動車両の心臓部のひとつと言えるイーアクスル製品の開発過程に於いても貢献出来るでしょう。
また当社が近年、注力するギア駆動時の静粛化技術も我々強みのひとつですが、そこにベアリング技術を組み合わせれば新たな「ギアASSY」が出来る。
このような新しい製品群は、提供先を既存産業向けに限定する必要は無い訳ですから、今後の伸張が期待されるロボット産業などにも活かす事で、これらが実現すれば確実に未来へ向けた新事業領域となります。
最後に、将来への期待をもう一例挙げると、それは既存の蓄電池とは異なる仕組みで電気を溜めるコンデンサ「キャパシタ」があります。
これは先のステア・バイ・ワイヤ機構の非常用電源としても有用ですが、そもそも蓄電並びに放電時の効率が極めて高く、低環境負荷等の優位性もあるため、私の個人的な感触では現段階での想定範囲を超え、当社の未来を切り拓いてくれる大きな存在になると思っています。