社長就任時の赤字とぜい肉を削ぎ落とし、先の第3四半期業績で黒字転換
――先の第3四半期決算では、赤字からの脱却して黒字転換し、各領域で黒字化への流れを固められたれたようですが、現状のジェイテクトRebornへの流れ、あるいは今後、ブランド統一が進む中での業績動向をどのように見ておられますか。
佐藤 よく記者会見でも話していますが、赤字の会社を引き継いだ当時、私が絶望的な心情だったかというと全然そうではなくて、「こんなものは直ぐに黒字になるぞ」という気持ちが正直なところでした。
では一体何をやってきたのかというと、元々が超肥満な会社だったものですから、ぜい肉を少し落とせば黒字になるというのが私の見立てでした。 結果、1年半社長をやってきた今の段階は、ぜい肉をそぎ落として来て〝超肥満〟から〝肥満〟になったところです。但しまだ肥満です(笑)。
——まだ肥満ですか(笑)。
損益分岐点86%で、まだ道半ば。将来への種蒔きとミライの柱づくりへ
佐藤 超肥満のぜい肉を落とした今、去年と売り上げ自体は変わらず、年度末の予想で450億円の営業利益に純利益210億円の数字を公表しています。
つまり売り上げが規模が、去年とほぼ同水準の95%程度と、5%売り上げを落としても黒字になった訳ですから、それだけぜい肉があったという事です。
また損益分岐点で92%だったものが、今は86%位まで来ています。結果、同水準の売り上げでも、これだけの利益が出る。 しかし今の段階は道半ば、まだまだ絞るところは沢山あります。こうした経営努力がここ一、二年間でやるべき事だと考えています。
一方で併せて、未来への種蒔きをしなければならないので、未来の柱となるような種をどこに、どのように蒔くかについて、目下、腐心しなが進めている状況です。
コロナ禍と半導体不足の影響が続く中、大転換期の中長期は群雄割拠
――今のコロナ禍や半導体不足という状況で、OEM(完成車メーカー)に於いても車両生産で、かなり厳しい状況にあります。
トヨタ自動車側も今期は3月時点で850万台程度に留まりそうです。対して来期は逆に1100万台という計画も出ていますが流動的です。
いずれにしても自動車産業全体が大きな転換期にある中、コロナ禍や半導体不足などの課題が併せて出ている現況ですが、佐藤社長から見て、世界の自動車産業の現況をどういう姿として俯瞰しておられますか。
佐藤 半導体の件は、来年度の上期に於いては、まだまだ今と変わらぬ状況が続きそうな感触があり、OEMが生産ラインを止める状況はあり得るだろうと思います。 従って半導体は、今後の潮流を占う要因になると思います。
またそれにも増して、我々が一番頭を悩ませている問題が別にあります。それは輸送費の高騰です。 特にコンテナ関連のコストがべらぼうに上がったものですから、今期後半は無論のこと、来期になると輸送費で相当な費用が掛かると見ています。収益にも大きな影響を与える事になるため喫緊の課題と言えます。
更により長い目で自動車産業全体を俯瞰すると、今は群雄割拠で混沌とした時代になっています。
例えば上流領域では、既存のOEMに対してソフトウェアを主導とする新興勢力が参入して来ています。
これまでのOEMは、自動車を使うお客様へ〝Fun To Drive〟を提案し〝快適さ〟のみならず、〝走り〟も愉しめる自動車像を求め続けて来ました。 しかし対する新興勢は、純粋な〝移動ツール〟としての機能に新たな可能性を見い出し、そこに力を入れています。
また過去から受け継がれた垂直統合型で、自社完結のモノ造りに拘るOEMと、水平分業型で車両製造そのものを外部委託する新興勢もあります。
結局、今の段階では〝クルマづくり〟というひとつの要素を取っても、ありとあらゆる道筋があり、そこにカーボンニュートラルや省エネなどの社会的な要請が加わり、様々な切り口の要素・要因が絡み合っています。
そうした中でOEM側も未来に向けて、どう生きて行くべきか考えており、それを受けて我々サプライヤーも、そこに対して〝どのような格好で食い込んで行くべきか〟という、とても混沌とした先が見通せない状況だと思っています。