ジェイテクトとしての強みを生かすため一体化を決断
――事業領域が異なる部分で、ジェイテクトとしての一体感を得ることが難しい状況だったのですね。
佐藤 顧問時代の客観的な視点でジェイテクトを俯瞰(ふかん)すると、豊田工機の工作機械というのは、トヨタ自動車向けの工作機械。特にエンジン部品を加工するための工作機械を作ってきた。
つまりトヨタ自動車お抱えの工作機械メーカーだった。従って一般の市販向け工作機械や研削盤で、我々は独自の強みについて意識する事がなかった。
翻(ひるがえ)って自社の周辺環境を長い目で見ると、いずれエンジン製造は縮小していく状況であるから、未来を視野に一般向けの工作機械にも真摯に取り組まねばならない。しかし実際には、こちらにもあまり力を注いでこなかった。
旧光洋の軸受にしても、赤字すれすれの状況下でありながら十分に攻め切れておらず、今後必要なソフト開発に係る領域が活性化していない。 加えて代理店を筆頭に、外部からの声に耳を傾けると、ライバルメーカーと比較して様々な弱点も認められた。
そういう事が半年間の顧問時代に見えてきたものですから、社長になった時に〝早い段階で自らのブランドを統一したい〟と思っていました。
ただ去年が光洋ブランドの100周年だったので、100年の節目をまずは迎えた翌年の101年目にジェイテクトブランドへ一本化する決断をした。
その理由は、そもそも会社が合併したら最初にやるべき事が、ブランドの統一だと確信していたからです。
しかし実際には、会社の複雑な事情があり、なかなかそれが出来なかった。 既に合併してから15年も経つ訳ですから、これからのジェイテクトとしての発展を考えると、いつまでも光洋(精工)と豊田(工機)のブランドを残していても仕方がない。
また折角、ブランド統一を行うのだから、豊田工機の工作機械とは違い、新たにジェイテクトとなって「変わったね」と言われる工作機械を提供したい。
軸受にしても、光洋精工の時代を経て、ジェイテクトになったら悪いところが刷新され「良くなったね」と言って頂けるように、ブランド統一と併せて、我々のやっている仕事が見直されるようなところへ持って行きたいと考えています。
ワン・ジェイテクトから自然に〝ワン〟が取れる事が最終目標
――全く違う事業領域の光洋精工と豊田工機の統合ですから、ジェイテクトは逆に、これを生かして生き残る道を求めて行くという事ですね。
佐藤 そうなんです。実のところジェイテクトはトヨタグループの中にあっても、未来を切り拓く〝種〟を無限と言って良い程、膨大に持つ組織です。
例えば祖業であるベアリング分野でも、また工作機械の分野も、加えて子会社群にも最先端の熱処理を手掛けているところを筆頭に、多様な技術を保有しています。
そうした技術資産を、各々が独自で抱え込んでしまわず、互いにコラボし合ってシナジー効果を生み出せれば、もっと新しい事業が立ち上がり、そこから更に良い製品が出来ると思っています。
ですから組織の壁を出来るだけ早く取り除いて〝One JTEKT〟を旗頭に未来を目指したい。
但し、このOne JTEKTは我々にとつての通過点でしかなく、早くこの〝One〟が取れるのが本当の目標です。 つまり最初はOne JTEKTと言っていますが、このOneが取れて自然な流れで自身を〝ジェイテクト〟と言えるようになるのが最終目標だと思っています。
駆動系・操舵とベアリング、工作機械の3本柱にアフター体制を追加
――ジェイテクトは、光洋精工と豊田工機という全く違った分野の組織が一緒になり、広範な事業領域がある訳ですが、佐藤体制になって以降、事業本部を4事業本部を備えた本部制に移行されましたね。
佐藤 そうですね。アフター事業を入れると4つですね。
――基本的には駆動系・ステアリングの自動車事業本部に、ベアリング主体の産機・軸受事業本部。 それに工作機械・システム事業本部。この3つの分野に壁はあるのでしょうが、それをうまくコラボし、これらのフローをブランド統一で新たな方向へと動かして行きたいという事ですね。
佐藤 はい。そういう事です。