― LEADERS VOICE Volume_26 / ジェイテクト 取締役社長 佐藤 和弘 ―
100年に一度の大変革期を迎えている自動車産業下で、今後の生き残りを賭ける程、厳しい環境に置かれているのが〝サプライヤー〟と呼ばれる自動車部品関連企業だ。
次世代技術のCASE対応やMaaSへ向かう今日の趨勢(すうせい)は、部品サプライヤーの既存ビジネスを根底から覆す事にもなりかねない。その一方で、サプライヤーの技術力を生かすビジネスチャンスの到来でもある。
特にトヨタグループの有力サプライヤーの中でも、異色の存在が光洋精工と豊田工機が2006年に合併して誕生したジェイテクトだ。 既に合併から15年が経過したジェイテクトは、駆動系、ステアリング機構にベアリング(軸受け)、工作機械、FAシステムなど多角的な事業を抱える。
2020年6月から、そのジェイテクト社長に就任したのが、トヨタ自動車に於ける品質保証のエキスパートでカスタマーファースト推進本部長を務めてきた佐藤和弘氏だ。
佐藤体制に移行して以降、ジェイテクトは社内改革の実践と共に、中長期を視野に未来を生き抜いていくための経営指針の策定を経て、トヨタグループ企業の在るべき姿を目指す道へと舵を切っている。 そこで今回は、佐藤社長にジェイテクトの改革の成果と、サプライヤーとしての今後の方向づくりなどについて聞いた。(主筆・佃 義夫)
トヨタの有力サプライヤーとして、本格的な事業ブランド統一
――ジェイテクトと言えば、トヨタグループの有力サプライヤーとして異色の存在で、旧光洋精工と旧豊田工機の合併で誕生し話題になりました。
2006年にジェイテクトとして新たなスタートを切り、2020年に佐藤社長がジェイテクトのトップに就任され、コロナ禍などの転換期を経た中、今後、ジェイテクトをどう引っ張っていくか、また率いていくのか、という状況にあるかと思います。
そうした中で今年に入り、4月から事業ブランド統一を打ち出された。このジェイテクトとしての事業ブランドの統一に併せ、昨年からは〝ジェイテクトReborn〟という方向づくりも進めておられる。まずは、この考え方についてお聞きしたい。
佐藤 私はトヨタ自動車から2020年の1月にジェイテクトに来て顧問になった訳ですが、社長になるまでの6カ月間、〝顧問〟としての立場で、この会社がどういう会社で、どういう状況なのかをじっくり見させて頂いた。
その後、私が経営を引き継いだ時には赤字だったものですから、それを抱えた上で、どう舵取りしていくかを前提に、色々会社の中を注視すると、気に掛かる事や不十分なところが見えて来ました。
そうした中で最も大切だと思った事は、〝旧光洋〟と〝豊田工機〟が同居しているけれども家族になっていない事。 そこで〝ジェイテクトReborn〟を掲げた時に「同居から家族へ」というキャッチフレーズも併せて打ち出したのです。
この〝家族になっていない〟は、どういう意味かというと、各々の事業は事業部でシッカリやっているけれど、お互いのところには干渉しないし、協力もしない。ましてや子会社との連携も無いという状況だった。