インフィニオン テクノロジーズ (以下、インフィニオン)は5月19日、CoolSiC™ MOSFET技術を採用した新しい車載用パワーモジュールを発表した。
新しいHybridPACK™ Drive CoolSiC™は、電気自動車 (EV) のトラクション インバータ向けに最適化された1200Vのブロック電圧を持つフルブリッジ モジュール。同製品は、高電力密度および高性能アプリケーション向けの車載用CoolSiCトレンチMOSFET技術をベースにしているが、これにより、特に800Vのバッテリーシステムや大容量のバッテリーを搭載した車両において、より長い航続距離を可能にするインバータの高効率化とバッテリー コストの低減を実現したという。
同モジュールを採用した現代自動車グループのエレクトリフィケーション開発チーム長のジンファン ジョン (Jin-Hwan Jung) 博士は、次のように述べている。
「現代自動車グループのElectric Global Modular Platform (E-GMP) の800Vシステムは、充電時間を短縮した次世代電気自動車向けの技術基盤となるものです。インフィニオンのCoolSiCパワー モジュールをベースにしたトラクション インバータを使用することで、Siベースのソリューションと比較して低損失による効率性の向上により、車両の航続距離を5%以上伸ばすことができました」
また、インフィニオンのイノベーション&エマージング テクノロジー部門の責任者であるマーク ミュンツァー (Mark Münzer) 氏は以下のように述べている。
「自動車のe-モビリティ市場は非常に活発化しており、新しいアイデアやイノベーションの基盤が整ってきています。SiCデバイスの価格が大幅に低下したことで、SiCソリューションの商業化が加速し、電気自動車の航続距離を向上するSiC技術を採用したよりコスト効率の高いプラットフォームが実現するでしょう」
HybridPACK™ Driveは、2017年に初めて発表されたもので、インフィニオンのシリコンEDT2技術を使用し、実際の走行サイクルで最高の効率を実現するように特別に最適化されている。750Vおよび1200Vクラスの中で、100kWから180kWまでのスケーラブルなパワーレンジを提供。同製品は、20以上の電気自動車プラットフォーム向けに100万個以上の出荷実績を持つ。
新しいCoolSiCバージョンは、インフィニオンの炭化ケイ素トレンチMOSFET構造をベースにしている。トレンチ構造は、平面構造と比較してより高いセル密度を可能にし、その結果、クラス最高の性能指数を実現。これによりトレンチMOSFETは、より低いゲート酸化膜電界強度で動作させることができ、同社では信頼性の向上につながったとしている。
また、同パワー モジュールは、同じフットプリントでシリコンからシリコンカーバイドへの容易なアップスケールが可能だ。これにより、1200Vクラスで最大250kWの高出力化を実現しながら、駆動距離の拡張やバッテリーサイズの縮小、システムサイズとコストの最適化を実現するインバータ設計が可能になった。異なる出力レベルに対して最適なコスト パフォーマンスを提供するため、チップ数の異なる2つのバージョンが用意されており、1200Vクラスでは400Aまたは200AのDC定格バージョンを提供している。
◾️CoolSiC™車載向けMOSFETテクノロジー
第1世代のCoolSiC™車載用MOSFET技術は、トラクション インバータでの使用に最適化されており、特に部分負荷状態での伝導損失を最小限に抑えることに重点が置かれている。シリコン カーバイドMOSFETの低いスイッチング損失と組み合わせることで、シリコンIGBTと比較して、インバータ動作の効率向上が可能になるという。
車載用CoolSiC™ MOSFETは、効率的で信頼性の高い車載用トラクション インバータやその他の高電圧アプリケーションを設計する上で鍵となる、短絡の堅牢性と高度な宇宙線およびゲート酸化物の堅牢性を達成するように設計およびテストされているとのこと。HybridPACK™ Drive CoolSiC™パワー モジュールは、車載用パワー モジュールのAQG324規範に適合している。
◾️供給状況
新しいHybridPACK™ Drive CoolSiC™は現在量産中で、2021年6月から出荷開始の予定。