出光興産は6月19日、全固体リチウムイオン二次電池(以下、全固体電池)の普及・拡大へ向け、固体電解質の小型実証設備第1プラント(稼働開始:2021年11月/※1)の生産能力を増強(完工時期:24年度内を計画)。加えて7月より小型実証設備第2プラント(※2)の稼働も開始すると発表した。
これにより、全固体電池の開発を進める自動車・電池メーカーなどに固体電解質を、着実に供給するとしている。
全固体電池は、その実用化により、電気自動車(EV)に於ける航続距離拡大や充電時間の短縮、安全性の向上が期待される本命の次世代型電池。自動車・電池メーカーなどによる開発の加速に伴い、その材料ニーズもより一層に高まっていると云う。
出光は、全固体電池やこれを搭載するEVの実用化に向け、必要不可欠な固体電解質の性能向上や量産技術の開発を加速。質と量の両面で応えることで、その普及・拡大に貢献していく。
[固体電解質の事業化へ向けた取り組み]
・小型実証設備(第1プラント、第2プラント)で製造したサンプルを活用し、自動車・電池メーカー等のニーズを把握しながら開発を進めることで、迅速に適切な材料仕様を作り上げる。
・小型実証設備での実証を足掛かりに、次のステージとなる大型パイロット装置での量産技術の確立(※3)とその先の事業化へつなげていく。なお、事業化に向けては、日本のみならず、グローバル目線での自動車・電池メーカーや材料メーカーとの共同取り組みを強化。以下の拠点を窓口・接合点として活用する。
– Idemitsu Research and Business Development Europe AG(スイス・バーゼル)。
– Idemitsu Advanced Materials Korea Co., Ltd.(韓国・京畿道烏山市)。
– Idemitsu Americas Holdings Corporation(米国・カリフォルニア州サンノゼ)。
・材料メーカーと共同で新たな高性能材料の開発にも取り組んでいく。
概要図(中期経営計画資料より抜粋)
出光は、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を掲げ、また昨年11月に発表した中期経営計画(対象年度:2023~2025年度) では、「3つの事業領域」の社会実装を通して「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たすことを表明。
今回の取り組みを、電気自動車(EV)や蓄電池などの普及拡大に寄与するものとして、この3つの事業領域に於ける「一歩先のエネルギー」、「多様な省資源・資源循環ソリューション」に向けた取り組みと位置付けていると云う。
事業ポートフォリオ転換に向けた3つの事業領域。
※1:第1プラントは、出光興産千葉事業所(千葉県市原市)内に所在(タイトル写真)。
※2:第2プラントは、出光興産リチウム電池材料部(千葉県袖ケ浦市)内に所在。
※3:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」の一つとして採択対象(期間:2022年度から2027年度の6年間を予定)。