出光興産は11月5日、全固体リチウムイオン電池向け固体電解質の商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼働を開始したと発表した。
近年、世界各国において厳しい環境規制や脱炭素社会の実現に向けた目標が掲げられ、EVや定置用電池等の市場が急拡大している。その中で全固体リチウムイオン電池は、航続距離の拡大・充電時間の短縮・安全性向上等に寄与する、EV普及の鍵を握る次世代電池として実用化開発が進んでおり、EV以外のさまざまな用途への適用範囲拡大も見込まれている。
こうした中、出光興産は全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである固体電解質を開発している。出光興産は石油化学事業で培った高純度の硫化リチウム製造法を確立しており、さらに硫化リチウムを原料とする硫化物系固体電解質について数多くの特許を保有している。これまで蓄積してきた技術を実用化し、原料からの一貫生産と安定供給体制の構築を目指すべく、固体電解質の商業生産に向けた実証設備を建設し、稼働を開始した。今後は固体電解質の量産プロセス実証およびさらなる性能向上等を図り早期事業化を推進していく。
また、出光興産は2021年5月に発表した中期経営計画の見直しにおいて、2030年ビジョンを「責任ある変革者」と定め、既存の製油所・事業所といった製造拠点を新たな低炭素・資源循環エネルギーハブへと転換する「CNXセンター構想」を掲げている。出光興産は2030年までにCNXセンターのモデルを構築することを目指しており、固体電解質の製造基地としての製油所・事業所の有効活用についても検討を進めていく。