出光興産は4月20日、千葉事業所(所在地:市原市)の隣接エリアに於ける使用済みプラスチックを原料とした「油化ケミカルリサイクル商業生産設備」への投資を決定(2025年度商業運転を開始予定)し、併せて「環境エネルギー社 」と、使用済みプラスチックを原料とした生成油の生産を行う合弁会社「ケミカルリサイクル・ジャパン」を、4月に設立すると発表した。
近年、海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応が推進されていることに加え、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されるなど、プラスチックの資源循環を一層促進する重要性や社会的ニーズが高まっている。
国内では、約820万トン/年の使用済みプラスチックの内、再生品への利用は2割程度しかなく、5割以上の使用済みプラスチックは、再生が困難との理由から、サーマルリサイクルとして焼却されることにより大量のCO2が排出されており、従来にない革新的なケミカルリサイクル技術が求められている。
出光ではこれまで、油化装置の技術確立に向け、環境エネルギー社と共同で使用済みプラスチックを原料とした生成油の生産に取り組んできたが、今回、合弁会社「ケミカルリサイクル・ジャパン」を設立。
回収した使用済みプラスチックから、この合弁会社の独自技術を用いて生成油を生産した後に、原油に替わる原料として、出光の既存設備である石油精製装置および石油化学装置にて精製・分解・重合して「リニューアブル化学品」を生産する。なお最終的には、これを原料に新たなプラスチック製品がプラスチック製品製造会社などで生産される。
出光は、従来ゴミとして焼却されていたプラスチックを、再び貴重な資源として再利用し、循環型社会の実現とCO2削減に貢献する同事業について、長年化石燃料を取り扱い、化石資源由来のプラスチック製造に深く関わってきた企業であるからこそ、責任を持って取り組むべきことであり、また石油精製と石油化学の両事業を展開してきたからこそ、その強みを活かせるものであると考えていると云う。
それ故、千葉事業所エリアに於ける事業モデルの確立後は、国内各地の出光のグループ製油所・事業所へ油化装置の設置を行い、全国の使用済みプラスチックを対象とした、より大規模な事業展開を進めていきたいとしている。
出光は、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を掲げ、また昨年11月に発表した中期経営計画(対象年度:2023~2025年度) では、「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つの事業領域の社会実装を通して、「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たしていくことを表明。この事業を3つの事業領域のうち「多様な省資源・資源循環ソリューション」の社会実装に向けた重要な取り組みに位置付けていると云う。
[新会社の概要]
– 社名:ケミカルリサイクル・ジャパン株式会社
– 代表者:岡村 仁彦(出光興産株式会社から出向)
– 本社:東京都中央区新富一丁目18番8号 RBM築地スクエア6階
– 工場:出光興産株式会社 千葉事業所隣接エリア
– 使用済みプラスチック処理能力:2万t/年
– 生産開始時期:2025年度
<各社役割>
・ケミカルリサイクル・ジャパン:油化装置の建設、生成油の製造販売。
・出光興産:生成油の引取、リニューアブル化学品・燃料油の製造販売。
・テラレムグループ社(市川環境ホールディングスより商号変更)、前田産業:使用済みプラスチックの調達。