液体水素エンジンGRカローラ
走行中のボイルオフガス活用への挑戦と仲間づくり
トヨタ自動車は11月16日~17日に行われる「ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第7戦 S耐ファイナル 富士」に、液体水素を燃料とする「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(液体水素エンジンGRカローラ)で参戦する。
また上記参戦を契機に、走行中に発生するボイルオフガス(タンク内の液体水素燃料が外部からの自然入熱等で気化してしまう水素を指す)活用を想定したコンセプトモデルを展示し、ともに技術開発に挑戦する仲間を募る。
今回仲間を募る契機となった液体水素は、気体水素に比べて密度が高く、同じ容量のタンクに沢山の水素が入る一方で、ボイルオフの課題がある。というのは先の通りで、これまで走行中に燃料タンク内で発生したボイルオフガス(気化した水素)は、活用されることなく大気中に放出されていたからだ。
ボイルオフガス活用の全体像
そこでトヨタは、今回ボイルオフガスの活用に係る新技術を盛り込んだコンセプトモデルを展示する。このコンセプトモデルは、現在段階ではコンセプト段階ではあるが、この新たなコンセプト実現すればボイルオフガスをエネルギーとして回収・活用することで、液体水素システム全体のエネルギー効率の向上が期待できる。今回のトヨタによる技術開発に係る仲間募集は、この技術の実用化に向けた取り組みの一環となる。
(1)ボイルオフガスを燃料として再利用する方策
タンク内の液体水素から発生したボイルオフガスを自己増圧器(外部からのエネルギーに頼らず圧力を高める装置)に送ることで、再利用できる燃料を作り出す技術開発に取り組んでいます。ボイルオフガスも圧力を加えることで水素燃料としての再利用(エンジンなどへの燃料噴射)が可能ですが、通常であれば増圧には電力などのエネルギーを必要とします。今回展示した自己増圧器では、ボイルオフガス自体が持つ圧力を操作することで、新たにエネルギーを使うことなく約2~4倍に増圧し、再利用燃料を作り出します。
ボイルオフガスを増圧する自己増圧器(左のメーターに表示された圧力が増圧後、右が増圧前)
(2)ボイルオフガスを活用した発電
(A)のボイルオフガス(気化した水素)の再利用を行う際の増圧工程では、一定の割合で余ったボイルオフガスが排出される。
これを今回開発した小型の燃料電池パッケージ(FCスタック)に送り、水素を化学反応させて発電する。生み出した電力は、液体水素ポンプ用のモーターなどの動力としての活用を想定。
仮にこれが実現すれば本来オルタネーター(小型発電機)での発電量に相当する電力をボイルオフガスから補うことが可能になり、エネルギー効率の向上が期待できる。
ボイルオフガスで発電する小型FCスタック
(3)触媒を通じて余ったボイルオフガスを安全に放出
(A)の発電工程で使いきれなかったボイルオフガスは、これまでと同様に触媒を通じて水蒸気に変換し、車外に安全に放出される。
余ったボイルオフガスを処理する触媒
トヨタでは、「引き続き、モータースポーツの厳しい環境を通じてクルマと人を鍛え、カーボンニュートラルの実現に向けて仲間とともに進化を続けていきます」と話している。