写真左からLGエナジーソリューション CEOのクウォン・ヨンス(Kwon Youngsoo)氏と、ホンダ 代表執行役社長の三部敏宏氏
LGエナジーソリューションとEV用バッテリー生産合弁会社設立で合意
LGエナジーソリューション(LGES)と本田技研工業(ホンダ)は8月29日、北米に於いて現地生産・現地販売されるホンダ・アキュラ両ブランド車のEV用リチウムイオンバッテリーを米国内で生産するべく、双方による合弁会社設立で合意した。(坂上 賢治)
この新たな合弁会社は、関連当局の承認を経て2022年中に設立される予定。更に同合意に基づき、LGESとホンダは、総額約44億米ドルを投資し、米国に生産工場を建設する流れだ。
より具体的には、建設地の確定を経て2023年初頭に拠点工場の建設に着工。2025年中の量産開始を視野に据えている。なお同バッテリー工場で生産されるリチウムイオンバッテリーは、全量が北米のホンダ工場へ供給され、その生産能力は最大約40GWh(ギガワット時)となる見込み。
拠点は主力の四輪工場のあるオハイオ州へのアクセスを考慮しながら選定を進める
両社は今日、急速に成長している北米内の電動化市場を鑑み、バッテリーをタイムリーかつ安定的に現地調達する事自体が最重要との共通認識に基づき、今合意に至った。工場建設地の選定は、まだ確定していないとしているものの、ホンダの現行・主力四輪工場であるオハイオ州へのアクセスを考慮しながら進めるものとみられる。
本田技研工業の三部敏宏取締役・代表執行役社長は、「ホンダは、2050年迄に当社が関わる全ての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルを実現するとした目標に向けて取り組んでいます。
〝需要のあるところで製品を生産する〟という当社伝統のポリシーは、EVの重要なコンポーネントの調達に於いても共通しており、これを踏まえてホンダは、世界の各地域でバッテリーの現地調達や生産を進めています。世界有数のバッテリーサプライヤーであるLGESとの米国に於ける合弁事業に係る合意は、こうしたホンダの取り組みを示すものです」とコメントした。
対して合弁先のLGエナジーソリューションのクウォン・ヨンス(Kwon Youngsoo)CEOは、「LGESでは、大切なお客様の信頼と尊敬を獲得するという最終的な目標に向けて、主導的なバッテリーイノベーターとしての地位を確立する事を目指しています。
新たな合弁会社は、高いブランド評価を持つホンダの電動化推進に協力し、お客様に持続可能なエネルギーソリューションを提供する事で、我々の中長期戦略の新たなマイルストーンとして、急速に成長する北米の電動化市場に寄与していく事になります」と述べた。
ちなみにホンダは北米のEV生産に関して、まずはGMが開発したリチウムイオン電池「アルティウムバッテリー」と同社のプラットフォームを採用したモデルを2024年に2車種発売する。
更に2027年以降は、コストを抑えた量販価格帯の新EVを展開する予定。そのためにはグローバル環境下で設備の共通化を含めたコスト低減策を推し進める必要がある。従ってホンダとしては、北米に於いてはGMからのみバッテリー供給を受けるだけでなく、GM以外の企業との合弁会社設立が必要であると判断し、予てより同方策の検討も重ねていた。
2025年以降は、米国防省が指定した原材料の使用が禁止される
ホンダは、2035年迄に日・米・中の3市場で、四輪車販売に占めるゼロエミッション車の比率を80%へ引き上げる計画であり、これに向けて米国当地でバッテリーを含む車両生産の内製化率を高める必要に迫られている。加えてホンダが2030年迄に年間200万台以上のEVを生産するのであれば、国際環境下で160GWhもの膨大なバッテリーを用意しなければならない。
そうしたなかでホンダが今回、米国内でのバッテリー製造拠点増強させる理由は、目下、米国でBEVとPHEV対象に、バッテリー容量に応じた税額控除が実施されている点にある。
この同税額控除の対象バッテリーは、北米あるいは米国と自由貿易協定を結んでいる国で調達された重要鉱物(リチウム等)が40%(2023年のコストベース)以上含まれている事が求められるだけでなく、同重要鉱物の内包比率は毎年10ポイントずつ増加し、来たる2027年には80%になる見込み。
この結果、同税額控除の対象となるのは段階的に北米で組み立てられた車両のみとなっていく流れだ。併せて今後、米国務省が〝懸念国〟として指定した特定国からの重要鉱物は、2025年以降、次第に使用自体が禁止されていく流れにある。つまり今後は、米国製のバッテリーを積んだ米国製EVだけに税額控除が適用されるようになっていく可能性が高い。これが今回のホンダによる投資行動に繫がっている。