NEXT MOBILITY

MENU

2019年10月30日【エネルギー】

日立オート、ホンダ主導で同社傘下企業を経営統合へ

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

 日立オートモティブシステムズは、本田技研工業が完全子会社化するケーヒン、ショーワ、日信工業3社の企業連合を吸収し経営統合を目指すと発表した。(坂上 賢治)

 

 

具体的には、日立製作所、日立オートモティブシステムズ、本田技研工業、ケーヒン、ショーワ、日信工業の6社は10月30日、同一議題で各々が取締役会を開いた。

 

 その議題は、複数企業間の経営統合を行うことで、その筋書きは以下となる。まず本田技研工業がケーヒン、ショーワ、日信工業の普通株式を公開買付けを介して完全子会社化する。

 

 

さらに日立オートモティブシステムズを最終的な吸収合併存続会社とする形でケーヒン、ショーワ、日信工業を日立オートモティブシステムズが傘下に収めるというもの。これによりケーヒン、ショーワ、日信工業の3社は吸収合併消滅会社となる。

 

 同案件は、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ及び日信工業の4社を統合させることで、今日技術面の一層の加速化が進むCASE分野で、海外勢を超える国際競争力を得ていくためのものであるという。

実際、今日ではモビリティ分野で100年に一度と言われる大変革時代に直面。電動化、自動運転、コネクテッド技術の世界間競争が熾烈になっている。

 

 

 こうしたなか日本の自動車業界で、ものづくりの頂点に君臨するカーメーカーのみならず、ピラミッド構造下のサプライヤー領域に於いても、ソフトウエア開発のみならず、ハードウエア面でもこれまでの製品業務の枠組みを超える複合技術が求められている。

 

そこで今回は、ホンダ主導で影響下にあるサプライヤー企業群を束ねた上で、日立オートモーティブとの統合を目指す動きを起こした。

 

 

 日立オートモーティブが吸収合併を果たした後の4社の企業規模は、業務範疇では自動車・二輪車システムの壁を跨ぎ、連結売上収益でも1.7兆円に達するメガサプライヤーとして世界の表舞台に躍り出る。

 

これにより、ケーヒンのパワートレイン事業、ショーワのサスペンション事業及びステアリング事業、日信工業のブレーキシステム事業を加えたパワートレインシステム、シャシーシステム、安全システムの3つのコア事業を柱とする総合ティアワン企業となるだろう。それは先のトヨタグループに於けるアイシングループ並びにデンソーを加えた事業連合に匹敵する。

 

 

 今回、日立製作所とホンダを含めた関連6社は、「電動化製品を通じたCO2排出量削減による地球温暖化防止や、自動運転や先進運転支援システムによる交通事故ゼロ社会実現に向けて貢献するとともに、6社の車両制御技術を結集することでストレスフリーな移動体験を提供します。

 

また日立製作所は、ルマーダ(Lumada/日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称)ソリューション等のデジタル技術により、特にコネクテッドの領域において、本統合会社が安全性やモビリティサービスの向上に貢献することをサポートします。

 

これにより、本統合会社は安全で快適な社会の実現と、人々の移動する喜びの拡大をめざすとともに、自動車・二輪車業界の発展に貢献していきます」と話している。

 

 

 なお統合会社の取締役の総数は6名とし、そのうち日立製作所が4名(うち代表取締役2名)、本田技研工業が2名を指名する予定。ブランド名は「HITACHI」をコーポレートブランドとする予定。加えて各社が使用してきた製品ブランドは企業価値最大化の観点から当面の間、継続使用される予定。

 

同経営統合にあたり、関連各社のコメントは以下の通り。

 

株式会社日立製作所 執行役副社長の小島啓二氏「本日、自動車・二輪車システム事業の統合会社設立について合意することができ、大変嬉しく思います。

日立オートモティブシステムズが属するライフセクターでは、誰もが暮らしやすい街づくりを実現して、人々のQoL向上に貢献することを目指しています。

その実現のため、日立オートモティブシステムズは、パワートレインシステム、シャシー、安全システム等コア事業の強化を図っています。今回の本統合会社の設立により、その取り組みを加速させていきます。」

 

本田技研工業株式会社・常務執行役員の貝原典也氏「新しい時代に向けたパートナーシップが組めたことに、大きな喜びと期待を持っています。

ホンダグループの中核として活躍いただいている3社と日立オートモティブシステムズの強みを掛け合わせたシナジーによって、技術進化がますます加速できると確信しています。

この新たなパートナーシップによって、世界中のお客様の移動する喜びの拡大とパーソナルモビリティ産業の発展に貢献していきたいと考えます。」

 

日立オートモティブシステムズ株式会社のプレジデント&CEO ブリス・コッホ氏「自動車・二輪車業界の展望が大きく変化している中、今回の事業強化施策により、電動化製品や内燃機関の基幹部品等のパワートレインシステムをはじめ、サスペンション、ブレーキ、ステアリング、安全システムに於いて、グローバルリーダーとなるグローバルTier1サプライヤーが誕生します。

統合会社は、補完的な拠点体制や技術ポートフォリオのみならず、事業規模の拡大とグローバルリーダーシップポジションの構築を通じ、顧客ニーズへのよりスピーディな対応や、さらなるポジションの強化が可能となります。

新たな仲間と共に、今回の本統合会社の設立がすべてのステークホルダーにとって素晴らしい成功をもたらすことを楽しみにしています。」

株式会社ケーヒン代表取締役・取締役社長の相田圭一氏「世界をリードできる新たなグローバルサプライヤーの発足に参画できたことを嬉しく感じています。

当社は、環境の領域で未来に貢献すべくエンジンや電動パワートレインのマネジメントシステムを提供してまいりました。今回の統合で4社の強みを融合することにより、お客様に対してさらなる魅力あるソリューションが提供できると確信しています。

この統合を機に、私共がこれまで以上に共感と信頼の得られる企業へと成長していくことで、すべてのステークホルダーに対しより多くの喜びを提供してまいります。」

 

株式会社ショーワ代表取締役・取締役社長の杉山伸幸氏「本統合が、予てより当社が重要課題としてきた『より付加価値の高い統合制御システムを提案できるシステムサプライヤーへの変革』を遂げる大きな一歩となることに、期待と責任を感じています。

これまで培ってきた『走る』『曲がる』の技術が、統合各社の優位な技術と融合することで、これからの『CASE』時代を勝ち抜くリーディングカンパニーとなるものと確信しています。

二輪・四輪の両分野において、より付加価値の高いシャシー制御と自動運転の統合制御システムを実現し、業界をリードするサプライヤーをめざす今回のチャレンジは、技術の革新による社会への貢献とお客様からの信頼、そして、従業員の飛躍に大きく寄与するものとなります。」

 

日信工業株式会社・代表取締役社長の川口泰氏「新たなグローバルサプライヤーの発足に参画できることを大変嬉しく思います。

当社は、自動車・二輪車の『環境』と『安心』へのニーズに応えるべく、アルミ製品とブレーキ技術を高めてまいりましたが、今回参画する6社の持つ強みを組み合わせ、シナジーを発揮することにより、将来に渡って、より多くのお客様にトップクラスのソリューションを提供することが可能となります。

新会社が、全てのステークホルダーと社会に、より強固なサスティナビリティをもたらすことができると確信しております。」

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。