日立オートモティブシステムズは、本田技研工業が完全子会社化するケーヒン、ショーワ、日信工業3社の企業連合を吸収し経営統合を目指すと発表した。(坂上 賢治)
具体的には、日立製作所、日立オートモティブシステムズ、本田技研工業、ケーヒン、ショーワ、日信工業の6社は10月30日、同一議題で各々が取締役会を開いた。
その議題は、複数企業間の経営統合を行うことで、その筋書きは以下となる。まず本田技研工業がケーヒン、ショーワ、日信工業の普通株式を公開買付けを介して完全子会社化する。
さらに日立オートモティブシステムズを最終的な吸収合併存続会社とする形でケーヒン、ショーワ、日信工業を日立オートモティブシステムズが傘下に収めるというもの。これによりケーヒン、ショーワ、日信工業の3社は吸収合併消滅会社となる。
同案件は、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ及び日信工業の4社を統合させることで、今日技術面の一層の加速化が進むCASE分野で、海外勢を超える国際競争力を得ていくためのものであるという。
実際、今日ではモビリティ分野で100年に一度と言われる大変革時代に直面。電動化、自動運転、コネクテッド技術の世界間競争が熾烈になっている。
こうしたなか日本の自動車業界で、ものづくりの頂点に君臨するカーメーカーのみならず、ピラミッド構造下のサプライヤー領域に於いても、ソフトウエア開発のみならず、ハードウエア面でもこれまでの製品業務の枠組みを超える複合技術が求められている。
そこで今回は、ホンダ主導で影響下にあるサプライヤー企業群を束ねた上で、日立オートモーティブとの統合を目指す動きを起こした。
日立オートモーティブが吸収合併を果たした後の4社の企業規模は、業務範疇では自動車・二輪車システムの壁を跨ぎ、連結売上収益でも1.7兆円に達するメガサプライヤーとして世界の表舞台に躍り出る。
これにより、ケーヒンのパワートレイン事業、ショーワのサスペンション事業及びステアリング事業、日信工業のブレーキシステム事業を加えたパワートレインシステム、シャシーシステム、安全システムの3つのコア事業を柱とする総合ティアワン企業となるだろう。それは先のトヨタグループに於けるアイシングループ並びにデンソーを加えた事業連合に匹敵する。
今回、日立製作所とホンダを含めた関連6社は、「電動化製品を通じたCO2排出量削減による地球温暖化防止や、自動運転や先進運転支援システムによる交通事故ゼロ社会実現に向けて貢献するとともに、6社の車両制御技術を結集することでストレスフリーな移動体験を提供します。
また日立製作所は、ルマーダ(Lumada/日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称)ソリューション等のデジタル技術により、特にコネクテッドの領域において、本統合会社が安全性やモビリティサービスの向上に貢献することをサポートします。
これにより、本統合会社は安全で快適な社会の実現と、人々の移動する喜びの拡大をめざすとともに、自動車・二輪車業界の発展に貢献していきます」と話している。
なお統合会社の取締役の総数は6名とし、そのうち日立製作所が4名(うち代表取締役2名)、本田技研工業が2名を指名する予定。ブランド名は「HITACHI」をコーポレートブランドとする予定。加えて各社が使用してきた製品ブランドは企業価値最大化の観点から当面の間、継続使用される予定。
同経営統合にあたり、関連各社のコメントは以下の通り。
株式会社日立製作所 執行役副社長の小島啓二氏「本日、自動車・二輪車システム事業の統合会社設立について合意することができ、大変嬉しく思います。
日立オートモティブシステムズが属するライフセクターでは、誰もが暮らしやすい街づくりを実現して、人々のQoL向上に貢献することを目指しています。
その実現のため、日立オートモティブシステムズは、パワートレインシステム、シャシー、安全システム等コア事業の強化を図っています。今回の本統合会社の設立により、その取り組みを加速させていきます。」
本田技研工業株式会社・常務執行役員の貝原典也氏「新しい時代に向けたパートナーシップが組めたことに、大きな喜びと期待を持っています。
ホンダグループの中核として活躍いただいている3社と日立オートモティブシステムズの強みを掛け合わせたシナジーによって、技術進化がますます加速できると確信しています。
この新たなパートナーシップによって、世界中のお客様の移動する喜びの拡大とパーソナルモビリティ産業の発展に貢献していきたいと考えます。」
日立オートモティブシステムズ株式会社のプレジデント&CEO ブリス・コッホ氏「自動車・二輪車業界の展望が大きく変化している中、今回の事業強化施策により、電動化製品や内燃機関の基幹部品等のパワートレインシステムをはじめ、サスペンション、ブレーキ、ステアリング、安全システムに於いて、グローバルリーダーとなるグローバルTier1サプライヤーが誕生します。
統合会社は、補完的な拠点体制や技術ポートフォリオのみならず、事業規模の拡大とグローバルリーダーシップポジションの構築を通じ、顧客ニーズへのよりスピーディな対応や、さらなるポジションの強化が可能となります。
新たな仲間と共に、今回の本統合会社の設立がすべてのステークホルダーにとって素晴らしい成功をもたらすことを楽しみにしています。」
株式会社ケーヒン代表取締役・取締役社長の相田圭一氏「世界をリードできる新たなグローバルサプライヤーの発足に参画できたことを嬉しく感じています。
当社は、環境の領域で未来に貢献すべくエンジンや電動パワートレインのマネジメントシステムを提供してまいりました。今回の統合で4社の強みを融合することにより、お客様に対してさらなる魅力あるソリューションが提供できると確信しています。
この統合を機に、私共がこれまで以上に共感と信頼の得られる企業へと成長していくことで、すべてのステークホルダーに対しより多くの喜びを提供してまいります。」
株式会社ショーワ代表取締役・取締役社長の杉山伸幸氏「本統合が、予てより当社が重要課題としてきた『より付加価値の高い統合制御システムを提案できるシステムサプライヤーへの変革』を遂げる大きな一歩となることに、期待と責任を感じています。
これまで培ってきた『走る』『曲がる』の技術が、統合各社の優位な技術と融合することで、これからの『CASE』時代を勝ち抜くリーディングカンパニーとなるものと確信しています。
二輪・四輪の両分野において、より付加価値の高いシャシー制御と自動運転の統合制御システムを実現し、業界をリードするサプライヤーをめざす今回のチャレンジは、技術の革新による社会への貢献とお客様からの信頼、そして、従業員の飛躍に大きく寄与するものとなります。」
日信工業株式会社・代表取締役社長の川口泰氏「新たなグローバルサプライヤーの発足に参画できることを大変嬉しく思います。
当社は、自動車・二輪車の『環境』と『安心』へのニーズに応えるべく、アルミ製品とブレーキ技術を高めてまいりましたが、今回参画する6社の持つ強みを組み合わせ、シナジーを発揮することにより、将来に渡って、より多くのお客様にトップクラスのソリューションを提供することが可能となります。
新会社が、全てのステークホルダーと社会に、より強固なサスティナビリティをもたらすことができると確信しております。」