日立Astemoは5月25日、自動運転や先進運転支援技術による走行において、前後左右の不快な揺れや加速度を抑制し、快適な移動空間を実現するための、AD ECU(自動運転用電子制御ユニット)などにおける高精度な軌道計画技術として、「Dynamics planning(ダイナミクス・プランニング)」のアルゴリズムを開発したと発表した。
自動運転技術の開発では、車両を安全に目的地まで航行させるシステムの構築が必要となる。同時に自動運転のレベルが上がるにつれて、ドライバーは運転操作から解放され、様々な過ごし方ができるようになるため、車室内の快適さも重要な要素となってくる。
しかし、現在の一般的な先進運転支援技術では、車線に合わせた中央寄りの経路を一定速度で走行するため、左右の不快な揺れや加速度が発生する場合があり、車室内の快適性を損ない、乗り物酔いなどを引き起こしやすくする可能性があるという。
例えば運転の上手な熟練ドライバーは、カーブを曲がる際に、車線幅を有効に利用した緩やかな軌道を描いたり、軌道の曲がり具合や進入速度に応じて、適切な速度コントロールをしたりといった動作を行う。そうすることで、走行により生じる前後左右の不快な揺れや加速度が小さく滑らかになるからだ。
自動運転や先進運転支援技術による走行において、こうした熟練ドライバーのように車室内を快適に保って走行する軌道と速度を算出するためのアルゴリズムが、今回発表された「ダイナミクス・プランニング」だ。
「ダイナミクス・プランニング」では、カメラなどの外界認識センサー、MPU(Map Position Unit)による地図情報や、将来的にはインフラからの交通情報などを活用して、車両前方の走行可能領域をAD ECUなどに入力する。
すると走行可能領域の幅を有効に利用して、カーブを曲がる際などにはなるべく緩やかなカーブを描くことで、車両にかかる加速度や加速度の変化を抑える走行軌道と、その軌道に沿い走行した際に生じる加速度が小さくかつ緩やかになるような速度とをプランニングしてくれる。
このような軌道計画をする場合、従来の手法では、車両の重量や車長などの車両諸元を用いて複雑な計算を行うため、AD ECUなどにおいて高い演算能力が必要となるという課題があった。また、強い風の力や路面の凹凸などによる意図しない外乱要素があると車両が快適に走らない場合もあったという。
そこで日立Astemoでは、車両諸元や外乱要素に対する対応を独自の車両制御技術で担うことにより、車両諸元を使わないシンプルな軌道計画を可能とするアルゴリズム「ダイナミクス・プランニング」の開発に至ったとのことだ。
なお、同技術については、2021年5月26日(水)~5月28日(金)にオンライン開催される公益社団法人自動車技術会主催の春季大会で発表される予定だ。