日立Astemo (以下、日立アステモ)は5月19日、 山梨工場(山梨県南アルプス市)および福島工場(福島県伊達郡桑折町)で製造する一部自動車用製品の定期試験(※1)等で不正行為(2021年12月22日公表/※2)があった問題について、特別調査委員会や自社による調査結果を公表した。
この問題は、山梨・福島工場で製造するブレーキ構成部品やサスペンション構成部品に関して、取引相手との間で定めた定期試験を実施していないにも関わらず報告書に虚偽のデーターを記載していた他、設定条件を変更して出荷検査を実施する、規格から外れた製品を出荷するなどしていたもの。
日立アステモは、これまでに不正行為があったと確認された製品について、社内検査を実施した結果、安全性および性能に問題がないと判断。現在までに判明している全ての事実を顧客に開示した上でも、安全上の問題が確認されていないことなどから、道路運送車両法等への法令違反はないと主張している。
※1:製品の工程検査や出荷検査とは別の抜き取り試験で、顧客との間で試験項目を定めているもの。
※2:(日立アステモ)一部製品における定期試験未実施などの不適切行為に関するお知らせ(PDF)。
今回、日立アステモでは、山梨・福島の両工場で発覚した不正行為とその類似事案の一部について、特別調査委員会による調査を実施すると共に、国内外の全製造拠点に於いて自社による社内調査と特別調査委員会による上記調査に関連したスクリーニング調査を実施。その結果、コンプライアンス文化や管理監督体制が相当期間に亘って不十分であったことを深く認識したと云う。
そのため、組織全体で改善策を策定し、関連する教育、プロセスの見直しや、人財・設備面での投資などを不正行為の再発防止を目的として実施し、それらを継続的に改善することを決定した。
また今後は、今回明らかになった不正や不十分な監督について深く反省し、再発防止に向け、強固なコンプライアンス文化を発展・定着させることを約束。懲戒処分については、その関与の度合いや当時の役割など、様々な観点を踏まえて処分決定後に公表するとしている。
1. 主な調査結果
不正行為に該当する案件・適切な再発防止策を実施するため、背景も含めた原因について、国内外の全製造拠点を対象に、特別調査委員会・自社で追究した結果、15拠点22製品で不正行為があったことを確認。全ての重要項目について「報告書 」にまとめた。
・山梨・福島工場での一部の自動車部品の試験や仕様、報告に於いて2021年12月22日に公表したもの以外にも不正行為があった。
・日本の生産工場(11工場)の他、米国、メキシコ、タイ、中国の生産工場(各1工場)でも、同様の不正検査・報告行為などが行われていた。
・不正が行われていた期間と関連する顧客企業数は2021年12月22日の報告よりも多く、約40年続いていたケースもあった。
・コンプライアンス通報制度があり、制度を利用したケースがありながら、事態は改善されず、会社の内部通報制度が十分に機能していなかった。
2. 原因分析
調査の結果、不正行為には以下の複数の原因があったことが確認された。
・拠点運用とその監督に於ける経営陣の誤った姿勢に起因する、品質保証に関するコンプライアンス意識の低さ、コンプライアンス監視の不徹底、品質保証に関する自浄作用の欠如により、不正が継続して行われた。
・営業部門に於ける受注活動の段階で、現場では対応できない内容での試験検査項目や製品スケジュールの合意がなされるなど、実現困難なコミットメントを許容する文化があった。
・試験を実施するための人員の慢性的な不足、試験に必要な設備が整備されない状態に加え、一貫性のない業務手順により、従業員独自の解釈や手順が存在した。
3. 再発防止策
経営陣や現場の工場関係者を含むあらゆるレベルの問題に対して、以下の対策を幅広く講じた。
・月2回以上のCEOによるメッセージ発信を含む、経営陣による品質とコンプライアンスに関するゼロトレランス方針の追求と全社的なコミュニケーションの強化。
・品質保証部門の権限強化に加え、事業軸を通さない独立した品質保証レポートラインの構築および品質保証に関わる人的・物的リソースへの投資の増強。
・幹部職員および営業・工場の第一線で活躍する従業員への「品質」に関する教育・研修。
・部門間の連携や情報共有を強化するための業務プロセスの変更。
・手順の標準化、プロトコルの厳格な実施。
・内部監査体制の強化と内部通報制度の改善。
・データの改竄が発生し得ない機器のデジタル化や自動化の推進。
・3線ディフェンスの構築・強化。
日立アステモは、これら実施済み、或いは現在進行中、計画中の取り組みに加えて、継続的な効果を実現するため、必要に応じて施策の追加、拡大、改訂を行うと共に、更なる項目や懸案事項については、通常業務に於ける最善手法として、顧客や関係するステークホルダーと共に検証。透明性を維持しつつ継続協議することで、要望に応じてエンジニアリングや文書類などを適宜更新・修正し続けて、組織全体に浸透させることで、顧客や社会との信頼関係の回復に努めていきたいとしている。