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2023年5月19日【トピックス】

日立アステモ、製品検査不正に係る調査結果を公表

NEXT MOBILITY編集部

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日立Astemo・HP

 

日立Astemo (以下、日立アステモ)は5月19日、 山梨工場(山梨県南アルプス市)および福島工場(福島県伊達郡桑折町)で製造する一部自動車用製品の定期試験(※1)等で不正行為(2021年12月22日公表/※2)があった問題について、特別調査委員会や自社による調査結果を公表した。

 

この問題は、山梨・福島工場で製造するブレーキ構成部品やサスペンション構成部品に関して、取引相手との間で定めた定期試験を実施していないにも関わらず報告書に虚偽のデーターを記載していた他、設定条件を変更して出荷検査を実施する、規格から外れた製品を出荷するなどしていたもの。

 

日立アステモは、これまでに不正行為があったと確認された製品について、社内検査を実施した結果、安全性および性能に問題がないと判断。現在までに判明している全ての事実を顧客に開示した上でも、安全上の問題が確認されていないことなどから、道路運送車両法等への法令違反はないと主張している。

 

※1:製品の工程検査や出荷検査とは別の抜き取り試験で、顧客との間で試験項目を定めているもの。
※2:(日立アステモ)一部製品における定期試験未実施などの不適切行為に関するお知らせ(PDF)

日立Astemo・ロゴ

今回、日立アステモでは、山梨・福島の両工場で発覚した不正行為とその類似事案の一部について、特別調査委員会による調査を実施すると共に、国内外の全製造拠点に於いて自社による社内調査と特別調査委員会による上記調査に関連したスクリーニング調査を実施。その結果、コンプライアンス文化や管理監督体制が相当期間に亘って不十分であったことを深く認識したと云う。

 

そのため、組織全体で改善策を策定し、関連する教育、プロセスの見直しや、人財・設備面での投資などを不正行為の再発防止を目的として実施し、それらを継続的に改善することを決定した。

 

また今後は、今回明らかになった不正や不十分な監督について深く反省し、再発防止に向け、強固なコンプライアンス文化を発展・定着させることを約束。懲戒処分については、その関与の度合いや当時の役割など、様々な観点を踏まえて処分決定後に公表するとしている。

 

 

1. 主な調査結果

 

不正行為に該当する案件・適切な再発防止策を実施するため、背景も含めた原因について、国内外の全製造拠点を対象に、特別調査委員会・自社で追究した結果、15拠点22製品で不正行為があったことを確認。全ての重要項目について「報告書 」にまとめた。

 

・山梨・福島工場での一部の自動車部品の試験や仕様、報告に於いて2021年12月22日に公表したもの以外にも不正行為があった。

・日本の生産工場(11工場)の他、米国、メキシコ、タイ、中国の生産工場(各1工場)でも、同様の不正検査・報告行為などが行われていた。

・不正が行われていた期間と関連する顧客企業数は2021年12月22日の報告よりも多く、約40年続いていたケースもあった。

・コンプライアンス通報制度があり、制度を利用したケースがありながら、事態は改善されず、会社の内部通報制度が十分に機能していなかった。

 

2. 原因分析

 

調査の結果、不正行為には以下の複数の原因があったことが確認された。

 

・拠点運用とその監督に於ける経営陣の誤った姿勢に起因する、品質保証に関するコンプライアンス意識の低さ、コンプライアンス監視の不徹底、品質保証に関する自浄作用の欠如により、不正が継続して行われた。

・営業部門に於ける受注活動の段階で、現場では対応できない内容での試験検査項目や製品スケジュールの合意がなされるなど、実現困難なコミットメントを許容する文化があった。

・試験を実施するための人員の慢性的な不足、試験に必要な設備が整備されない状態に加え、一貫性のない業務手順により、従業員独自の解釈や手順が存在した。

 

3. 再発防止策

 

経営陣や現場の工場関係者を含むあらゆるレベルの問題に対して、以下の対策を幅広く講じた。

 

・月2回以上のCEOによるメッセージ発信を含む、経営陣による品質とコンプライアンスに関するゼロトレランス方針の追求と全社的なコミュニケーションの強化。

・品質保証部門の権限強化に加え、事業軸を通さない独立した品質保証レポートラインの構築および品質保証に関わる人的・物的リソースへの投資の増強。

・幹部職員および営業・工場の第一線で活躍する従業員への「品質」に関する教育・研修。

・部門間の連携や情報共有を強化するための業務プロセスの変更。

・手順の標準化、プロトコルの厳格な実施。

・内部監査体制の強化と内部通報制度の改善。

・データの改竄が発生し得ない機器のデジタル化や自動化の推進。

・3線ディフェンスの構築・強化。

 

日立アステモは、これら実施済み、或いは現在進行中、計画中の取り組みに加えて、継続的な効果を実現するため、必要に応じて施策の追加、拡大、改訂を行うと共に、更なる項目や懸案事項については、通常業務に於ける最善手法として、顧客や関係するステークホルダーと共に検証。透明性を維持しつつ継続協議することで、要望に応じてエンジニアリングや文書類などを適宜更新・修正し続けて、組織全体に浸透させることで、顧客や社会との信頼関係の回復に努めていきたいとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。