日立ABBパワーグリッド社は12月4日、英国の再生可能エネルギー導入拡大に対応するため、新たな系統安定化ソリューションとして、STATCOM(Static Compensator:静止型無効電力補償装置)と同期調相機を組み合わせた世界初のハイブリッド調相設備(電圧調整と電圧損失軽減のための設備)の1年間の実証運転を、スコットランド・グラスゴー近郊のエスピー・エナジー・ネットワークス社の275kV変電所において開始したことを発表した。
実証は、スコットランドの送配電事業者であるSP Energy Networks(エスピー・エナジー・ネットワークス社)と、ストラスクライド大学、デンマーク工科大学と共同で行う。
今回導入するハイブリッド調相設備は、STATCOMの高速かつ連続で電圧変動を抑えることができる特徴により、再生可能エネルギーの出力変動や細かな需要側の変化に対応しながら電圧を一定に保ちつつ、同期調相機の特徴である慣性力により、系統事故時などに BESS(Battery Energy Storage System:バッテリーエネルギー貯蔵システム)や予備発電機などによるバックアップが起動するまでの時間を確保し、系統の安定化に寄与する。
この実証は、ハイブリッド調相設備の技術的・商業的な課題を解決するために、フェニックス・プロジェクトと名付けられて2018年にスタートしたもの。英国の電力・ガス規制機関Ofgem(オフジェム)のOfgem Network Innovation Competition(NIC)の資金提供を受けている。フェニックス・プロジェクトの成果を英国の送配電事業者が活用した場合、6,000軒以上の家庭の電気使用量に相当する6万 2,000トン以上の二酸化炭素排出量の累積削減が期待できる。
日立ABBパワーグリッド社グリッドインテグレーションビジネスユニット担当役員であるNiklas Persson(ニクラス・パーソン)は、「発電所には安定したエネルギー供給が求められますが、風力発電 や太陽光発電などの再生可能エネルギー発電システムは、天候の変化に応じて出力が変動します。 今回提供する先進的なハイブリッド調相設備は、既存の技術と革新的な制御システムを組み合わせ たもので、信頼性の高い安定したエネルギー供給を可能にすると同時に、英国のカーボンニュートラ ルの未来に向けた取り組みを加速させます。」と述べた。
エスピー・エナジー・ネットワークス社のプロセス・技術担当役員、Colin Taylor(コリン・テイラー)は、 「パンデミックの中、フェニックス・プロジェクトを推進できたことを大変誇りに思います。この世界初の 革新的なプロジェクトは、本実証の開始により、重要なマイルストーンに到達しました。今回実証を行 うハイブリッド調相設備により、電力システムの安定性とレジリエンスのレベルを維持しながら、さらに 多くの再生可能エネルギーを電力システムに導入することが可能になります。」と述べている。
今回実証運転を行う革新的なハイブリッド調相設備は、従来の発電システムから再生可能エネルギー発電システムへのスムーズな移行と電力ネットワークへの統合を支援し、英国のカーボンニュートラルの未来に大きく貢献することが期待されている。
■ハイブリッド調相設備の構成
モジュラー・マルチレベル・コンバータ(MMC)*1 バルブ技術を利用したSTATCOMと、ブラシレス励磁*2 システムを備えた4極モーターの同期調相機が並列に動作し、三巻線変圧器*3 を介して母線*4 に接続されている。
*1 複数のセルを接続したモジュールで構成された変換装置
*2 同期調相機に励磁電流(磁束を発生させるための電流)を供給する方法の1つ
*3 三本の巻線を持つ変圧器
*4 受変電設備の基幹線
■フェニックス・プロジェクトとハイブリッド調相設備の詳細情報
– エスピー・エナジー・ネットワークス社ウェブサイト フェニックス・プロジェクト紹介ページ(英語)
https://www.spenergynetworks.co.uk/pages/phoenix.aspx
– 日立ABBパワーグリッド社 同期調相機紹介ページ(英語)
■日立ABBパワーグリッド社
https://www.hitachiabb-powergrids.com/jp/ja/
■日立グループ パワーグリッドポータルサイト
https://www.hitachi.co.jp/products/energy/pg/