日野自動車は9月16日、エンジン認証不正を巡る問題で、排出ガス性能が基準に適合している車種の出荷再開について、9日に国土交通省の承認が得られたとして、10月より当該車種(記事末尾・参考を参照)の生産を順次再開すると発表した。
なお、生産再開にあたっては、確かな品質の製品を安定して提供するための前提として、「コンプライアンス」「健康・安全」「品質」に万全を期すため、生産計画や体制が現場のリソーセスに無理がないか、人財育成に十分な時間を割けるものになっているか等を改めて精査。再開前に自社工場の全職場に於いて、これらの確保ができているかを総点検する他、取引先とのコミュニケーションを引き続き密に取って、混乱をきたすことがないよう準備を進めていくと云う。
生産活動に於ける企業風土改革について
日野は、一連のエンジン認証申請に於ける不正問題の原因の一つに、経営が現場に寄り添えず、適正なプロセスよりもスケジュールや数値目標が優先されやすい環境と仕組みになっていたことがあると考えていると云う。
このセクショナリズムやパワハラ体質なども含めた組織風土や企業体質の問題については、外部有識者から成る特別調査委員会や国交省からも指摘があったことから、この問題を重く受け止め、現在、全社挙げての人財尊重の企業風土改革の一環として、経営層をはじめとする一人ひとりに対し、“これまで掲げてきた「コンプライアンス」「健康・安全」「品質」をスケジュールや数値目標よりも優先する”という意識の再徹底と、その環境と仕組みづくりを推進。
生産活動に於いても、良い製品の安定供給に向け、「コンプライアンス」「健康・安全」「品質」を「日程」「量」よりも優先すべく、経営層は現場の声に真摯に向き合い、従業員一人ひとりが仕事の意義を改めて深く理解し、一体となって現場力を高める活動を行っており、今後は、以下の具体的施策を段階的に進めていく。
[生産活動に於ける現場に寄り添う取組み事例]
<対話の活性化>
・各職場と経営層の対話会:経営層自ら現場に足を運び、声を聞き、経営に反映(3月~)。
・職場懇談会:職場ごとに「本音の対話」の実現・定着を目指す(7月~)。
<人財育成>
・既存の技能教育体系を見直し、OJTでの技能体得を含めさらなる高度化を図る(実施予定)。
・客目線で品質を確保するための業務に集中し、社内報告のための資料作りなど「内向き」の業務を見直し。創出した時間を、人財育成等の現場に寄り添う活動に活用(実施予定)。
<意識改革>
・認証不正問題を正しく理解し、風化させないための集いの開催・定着(9月~)。
・本年策定した新たな企業理念「HINOウェイ」の「基本理念」「サスティナビリティ方針」「行動規範」と、3つの価値観「誠実」「貢献」「共感」を全員に浸透(6月~)。
<各工場での独自の取組み>
・スピークアップタイム:コンプライアンスに関するテーマで職場ごとに議論。30分/回、隔月実施(羽村工場にて6月~)。
・ES(従業員満足)意識調査(古河工場にて5月~)。
・コンプライアンス推進チームの強化:職場相談員による困り事の吸い上げと対策 (新田工場にて9月~)
[(参考)車種別生産計画]
<車種、車種、エンジン機種、生産再開予定、生産場所>
– 中型トラック、日野レンジャー (一部車型)、A05C(尿素SCR)、11月1日(火)、日野自動車古河工場(茨城県)
– 小型トラック、日野デュトロ、N04C(HC-SCR)、10月3日(月)、日野自動車羽村工場(東京都)
– バス、日野セレガ (一部車型)、A05C(尿素SCR)、調整中、ジェイ・バス小松工場(石川県)
– バス、日野メルファ、A05C(尿素SCR)、調整中、ジェイ・バス小松工場(石川県)
– バス、日野ブルーリボン ハイブリッド、A05C(尿素SCR)、調整中、ジェイ・バス宇都宮工場(栃木県)
– バス、日野ポンチョ、J05E(尿素SCR)、調整中、ジェイ・バス小松工場(石川県)
※小型トラック「トヨタ・ダイナ」も10月3日(月)より生産再開予定。
※排出ガス性能が基準未達もしくは燃費性能の諸元値未達の車種の生産再開時期は未定。
対象:E13C(尿素 SCR)・A09C(尿素 SCR)搭載の「日野プロフィア」「日野セレガ」、A05C(HC-SCR)搭載の「日野レンジャー」、N04C(尿素 SCR)搭載の「日野リエッセⅡ」。
※2022年9月16日現在、A05C(尿素 SCR)搭載の「日野レンジャー」は少量生産中、10月は生産停止予定。その他車種は生産停止中。
■(国交省)型式指定に係る違反の是正命令(全文/PDF):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001512122.pdf