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2022年10月7日【トピックス】

日野、経営責任の明確化など3つの改革を発表

NEXT MOBILITY編集部

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日野・外観

 

 

日野自動車は10月7日、エンジン認証に於ける一連の不正に対して、経営責任の明確化(取締役、専務役員の辞任・報酬減額)をはじめとする以下3つの対応を、同日、実施したと発表した。

 

1.問題に対する経営責任の明確化。
2.国土交通省への「型式指定に係る違反に対する再発防止報告書」提出。
3.二度と不正を起こさないための「3つの改革」の策定・公表。

日野自動車・ロゴ

日野は、トラックやバスをはじめとする製品を世に出すための型式認証のプロセスに於ける約20年に亘る不正、またその間、国交省から認証申請上の不正行為有無について報告要求があったにも関わらず、そこでも虚偽報告を行いさらに不正を重ねたことを、企業としての存在意義を問われる極めて重大な問題であると受け止め、今一度、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命に立ち返り、経営層が強い覚悟を持って率先垂範し、二度と不正を起こさないよう、全社を挙げて改革を推し進めるとしている。

 

 

[各対応の内容]

 

1.経営責任の明確化

 

問題に対する経営責任を明確化すべく、取締役、専務役員の辞任および報酬の減額等を、以下の通り行う。

 

(1)取締役・専務役員および専務役員の辞任(2022年10月7日付)

 

<職位、氏名、現担当>
– 取締役・専務役員、皆川 誠、生産本部(本部長)
– 取締役・専務役員、久田 一郎、コーポレート本部(本部長)
– 取締役・専務役員、中根 健人、事業基盤強化推進室・コンプライアンス推進室担当
– 専務役員、長久保 賢次、技術開発本部(本部長)

 

※取締役3名辞任後も法令・定款に定める取締役の員数は満たされている。

 

(2)本部長の降職(2022年10月7日付)

 

<職位、氏名、現担当>
– 執行職、玉木 豊久、品質本部(本部長)

 

(3)取締役、専務役員の報酬減額

 

<職位:減額内容>
・代表取締役社長:月額報酬の50%を6ヶ月間
・専務役員(本部長):月額報酬の30%を3ヶ月間
・社外取締役・非常勤取締役:月額報酬の20%を3ヶ月間

 

(4)過去の代表取締役・役員の報酬自主返納

 

2003年以降に当社の代表取締役であった元役員および調査報告書により問題が生じた風土等への関与が指摘された元役員に対し、当時の報酬の一部について自主返納を求める。

 

(5)当面の体制

 

上記を受けて、以下の組織変更・人事異動を実施。

 

① 組織改正(本部レベル組織の変更)(2022年10月7日付)

 

・コーポレート本部、生産本部の廃止

※改革遂行に向けた新たな執行体制を検討中のため、当面の暫定措置。

 

② 本部長、副本部長の担当変更(2022年10月7日付)

 

<氏名、新、現>
– 小木曽 聡、経営全般,技術開発本部(本部長)、経営全般
– 山手 昇、社長付、コーポレート本部(副本部長)
– 玉木 豊久、事業基盤強化推進室 執行職、品質本部(本部長)
– 小野 匡弘、品質本部(本部長),品質保証領域(領域長)、品質保証領域(領域長)

 

 

2. 国交省への「型式指定に係る違反に対する再発防止報告書」提出

 

国土交通省からの是正命令(9月9日付)に対して、10月7日、再発防止報告書を提出。その指摘を踏まえ、不正行為の直接的な原因である開発・法規認証のプロセスに対して既に講じてきた再発防止策(※)に加え、不正の背景となった経営および企業風土の問題に対する抜本的な対策を着実に進めていく旨を報告。

 

※「型式指定に係る違反に対する再発防止報告書」:。

 

■型式指定に係る違反の是正命令の概要(国交省)

 

(1) 以下の措置を含めた抜本的な再発防止策を策定し、型式指定に係る違反を是正すること。

 

①不正行為を起こし得ない型式指定申請体制の構築。
②開発部門の業務実施体制の改善。
③社内の技術管理体制の再構築。

 

(2)上記再発防止策を1ヵ月以内に報告すると共に、その後の実施状況についても当面四半期毎に報告すること。

 

■日野の報告内容(以下、原文ママ)

 

“ 今後、各種施策の着実な実行と併せて、取締役会ならびに外部専門家を含むコンプライアンス委員会にて進捗を確認し、監督・支援を行ってまいります。実施状況の進捗については、四半期ごとに国土交通省へ報告し、その内容を公表してまいります。”

 

 

3. 二度と不正を起こさないための「3つの改革」

 

日野は、型式指定の申請プロセスに於いて長期に亘って不正が行わてきた主な原因に、経営が現場に寄り添えず、収益や台数といった量的拡大を優先し法令順守や健全な風土の醸成が疎かになった結果、あるべき「クルマづくり」が見失われてしまったことがあると考え、今後、総ての礎となる企業理念「HINOウェイ」に則り、会社の使命を実現して再び社会への責任を果たしていくため、二度と不正を起こさないよう「経営」「企業風土」「クルマづくり」に於いて、以下の改革を進める。

 

(1)「人財尊重」と「正しい仕事」を実践する経営改革

 

二度と不正を起こさないために、経営の在り方から見直していく。

 

①経営の人心一新

 

原点に立ち返り、「お客様・社会のお役に立つ」を起点に、HINOウェイで掲げる「誠実」「貢献」「共感」をすべての判断基準とする。経営層は「現場を重視、人に寄り添う」ことを常に心がけ、現場・職場へ足を運び、その声に耳を傾ける機会を増やすなど、コミットメントとして行動宣言を提示、実践できているかの評価を従業員から受ける。

 

②「みんなでお客様・社会のお役に立つ」を実現する組織体制

 

縦割り組織の弊害であるセクショナリズムや根回しの常態化、部署間のコミュニケーション不足を解消し、機能を超えて関係者が目的を共有し「一緒に考え一緒に走る」体制を実現できる組織づくりを行う。

 

③健全な経営を支えるガバナンス

 

全社レベルでの「正しい仕事」の確実な実践を担保するため、内部統制システムと経営監督機能を強化。自浄作用が働くよう、内部監査の体制拡充・実効性の外部評価を行う。また、業務プロセス・規定類・マニュアル・データ管理の再整備と運用徹底により、全社での業務マネジメントの適正化を進める。さらに、取締役会による監督機能の強化に向け、外部機関による取締役会の実効性評価を行うと共に、議論の重点を事業目標達成から経営基盤強化へシフト。また、多様性のある人員構成への見直しも行う。

 

④ 不正を許さず、風化させないコンプライアンス意識確立

 

二度と同様の問題を起こさないよう、今回の問題を理解するための対話の場の設定や、社内常設施設による展示を行うと共に、この問題を定期的に振り返り考える機会も設定。外部専門人材の登用や経営層・従業員の意識向上のための取組み等、コンプライアンス強化を推進し、全社にコンプライアンスファーストの意識を確立する。

 

(2)「人財尊重」を中心に据えた組織風土変革

 

顧客や社会の役に立つことが自身の仕事であるとの認識を、経営層をはじめとする全員が持ち、これまでの内向き・保守的・一方通行といった風土から脱却、ありたい風土を目指して一人ひとりの意識と行動の変革を目指す。

 

①みんなで顧客に向き合い、協力し合う文化

 

「お客様起点」の意識醸成・定着に向けて、顧客の現場や販売会社、異業種企業との積極的な人財交流を推進。協力し合う文化の土台として、社内での相互理解を深めるため、労使間の対話機会の増加や、「風土改革チーム」による階層別対話会、社長と全従業員の対話機会も拡大し、あらゆる方向での対話や人のつながりの活性化を図る。また、心理的安全性を保つ職場環境づくりとして、ハラスメントの撲滅活動(パワハラゼロ活動)を継続して進める。

 

②主体性と能力を引き出す人づくり

 

人づくりを支える施策・人事制度として、手挙げ制によるプロジェクト参画など、一人ひとりの挑戦意欲を高める機会・制度を拡充すると共に、キャリアデザインと連動したローテーション施策の運用を強化。また、従業員がいきいきと働く機会の創出と環境整備の推進として、技能員も含めたITツールの全員支給、職場環境の改善、スキルアップ教育など、人づくりへ積極的に投資していく。

 

(3)新しい「日野のクルマづくり」のための構造改革

 

不正を二度と起こさないためのクルマづくりの仕組みを構築する。

 

①クルマづくりのプロセスの再構築・再定義

 

「みんなでクルマをつくる」体制の確立に向け、中心となるチーフエンジニアの役割を再定義し、従来の開発中心ではなくプロジェクト全体を「経営」する立場を明確化。併せて、法規認証部門の開発部門からの分離をはじめとする牽制・チェック機能の強化や、身の丈に合った企画立案の徹底など、合理的なクルマづくりができるプロセスを策定し運用する。

 

②あるべきプロセスの正しい運用

 

製品の「品質」を確保するため、開発や認証・品質保証プロセスが適切に運用される仕組みを構築し、外部の目による実効性チェックを導入。クルマづくりの大前提として、法規をタイムリーに把握し正しく解釈し、開発プロセスに取り入れる体制・仕組みを確立する。また、ソフトウェア管理についても、担当者間で連携して開発/管理するプロセスを策定し運用して行く。

 

 

日野は、年内公表を予定している新たな組織の人選を目下進めており、また改革を全社で確実にかつ強力に推進するためのプロジェクト等についても、新たな執行体制の構築と連動させて整備。特に、組織・風土に関する課題や施策については、社内各組織の若手社員も積極的な変革の担い手となり全社横断的な改革を進める。

 

また今後、全社を挙げてこれらの改革を着実に実行していくと共に、外部の目も入れた評価・検証により、取り組みの改善・強化を継続的に実施し、これら進捗を定期的に公表。一人ひとり、一つ一つの仕事が社会と密接に繋がっていることを深く心に刻み、二度と不正を起こさず、社会への責任を果たしていくことを目指すとしている。

 

 

■(日野)エンジン認証不正に関する公表情報の一覧:https://www.hino.co.jp/corp/news/2022/20220401-003234.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。