オランダのデジタル地図大手、ヒアテクノロジーズ(HERE Technologies)は11月4日、日本およびアジア太平洋地域(APAC)の事業戦略に関するオンライン記者会見を開いた。この中で、高精度のデジタル地図をベースに、ラストマイルの物流効率化やMaaS機能を持つモビリティ向け産業ソリューションを2021年に提供開始することを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)
日本の特性にあったスタンダードマップ「HEREマップ」を提供へ
オンライン会見には、ヒアテクノロジーズAPAC総責任者のスタニミラ・コルヴァ上席副社長(地域本部・シンガポール)、5月にヒア・ジャパン社長に就任した高橋明宏氏、それにヒアと資本・業務提携した三菱商事の田代浩司HEREプロジェクト室室長が登壇した。
コルヴァ上席副社長はアジア・太平洋地域は近い将来に世界のGDPの半数を占めることが予想されている「非常に重要な地域」と述べたうえで、ヒアは自動車分野に強く、その点でも「日本は重要な市場だ」と強調した。
また事業展開にあたっては、中核事業は位置情報データをベースに、パートナーシップとの連携を通じて、様々な分野にソリューションを提供する戦略を示した。
具体的には、ヒアのプラットフォームをベースに、マーケットプレイスやワークスペースを提供。これをパートナーに活用してもらうことで、様々な課題に対応したソリューションサービスの提供を目指す。自動車分野では自動運転、コネクテッドなど大きなターゲットになるとした。
また、ヒアの株式の30%を共同で取得した三菱商事、日本電子電話(NTT)との連携では、IoT(モノのインターネット)や5G分野へのソリューション展開に期待感を示した。
高橋社長は日本市場の事業戦略について解説し、Increment Pの日本地図データをベースに、ローカライズされた高精度地図を開発し、提供開始すると述べた。これによりグローバルレベルで連携してきた自動車メーカーなどへ、同様のサービスが「日本で提供できる」とした。
MaaS機能を備えたモビリティ向け「HERE WeGo」ソリューションを2021年提供へ
展開するのは「HEREマップ」で、日本字サイズに合わせて開発。さらに日本固有の情報を考量し、実用、汎用性を備えるとともに、カスタマイズが可能という。これにより日本おける「スタンダード」マップを目指す。
また、ロケーションに関わる課題に対応したフルスタック・サービスの開発にも取り組む。
地図表示、ルート検索、フリートテレマティクス、交通情報、インターモーダルルーティングなどのロケーションサービスを備えたワークスペース、マーケットプレイスなどのプラットフォームを開発、提供。これをビジネスに合わせて、カスタマイズすることで課題解決のソリューションにつなげる。
これを応用し、分野ごとの課題解決に対応した産業ソリューションも提供する。具体的にはラストマイルやミドルマイルの配送効率化に寄与する物流ソリューション、MaaS機能を備えたモビリティ向け「HERE WeGo」ソリューションを2021年に提供する計画だ。
田代室長はヒアの位置情報サービス・プラットフォームを活用し、物流やモビリティ・サービスの高度化・効率化事業をスタートさせたことを明らかにした。人や物の動きに合わせて、新しいサービスソリューションの構築を目指すもので、具体的に車両管理・ルーティング技術を活用した物流・サプライチェーン、乗り合いソリューションなどを含めたオンデマンドな交通サービスの開発に着手した。
実際に、物流分野で物流事業者と実証実験を始めたほか、国交省が今年7月にスマートモビリティチャレンジの一つとして選択した会津Samurarai MaaSプロジェクトにも参画。こうしたサービスの一部を2021年にもビジネス化したいと述べた。