川崎重工業は11月2日、車両およびモーターサイクル&エンジン事業の分社化を来年10月に、また、船舶海洋とエネルギー・環境プラントの事業統合を来年4月に行うと発表した。
川崎重工は、これら分社・統合により、事業運営を「陸・空輸送システム」「モーションコントロール&モータービークル」「エネルギー&マリンエンジニアリング」の3グループとすることで、各事業をより効果的に連携していくとしている。
1.車両およびモーターサイクル&エンジン事業の分社
(1)車両事業
車両事業については、自主再建の目途が付きつつある中で、分社により資本の独立性を高めることで、自律的事業経営を徹底する。
現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、国内では乗客数減少に対応した鉄道関連投資計画の見直し、海外では新線の建設工事の遅れも生じているが、鉄道システムは、大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴うニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込めるため、業界関係各社との連携・協業を含め、難度の高いプロジェクトや鉄道システム全体におよぶ需要に、機動的かつ柔軟に対応していく。
また一方で、導入を進める航空宇宙システム事業の生産技術・品質管理手法の展開をさらに進め、品質の安定化とコスト競争力を高めることで、堅調な鉄道関連需要を取り込んでいく。
(2)モーターサイクル&エンジン事業
二輪車やオフロード四輪車をはじめとするパワースポーツ事業は、同社唯一の量産型コンシューマービジネスとして、分社により意思決定のスピードを向上。新たなライフスタイルの提案など、顧客に密着した製品・サービスを提供することで、さらに強固なブランドを構築し、引き続きグループにおける「Kawasaki」ブランドの牽引役とする。
なお、パワースポーツ事業領域においては、顧客層の高齢化や環境規制への対応などの課題もあるが、その成長に向け、電動化や先進安全技術などの共同開発および機能部品の共有化など、業界内での連携を強化し、市場の活性化に努める。
また一方で、汎用エンジンを含む同事業は、精密機械・ロボット事業との連携により量産型事業における経営資源の融通や油圧機器・汎用エンジンでの農機・芝関連市場における連携に加え、ロボット・リモート技術を取り入れるなど、近未来モビリティー開発なども進めることで、新たな事業機会の獲得に取り組んでいく。
2. 船舶海洋とエネルギー・環境プラントの事業統合
船舶海洋の商船事業は、坂出工場の事業規模を縮小し、ガス関連船を主体として事業再建を進めてきたが、原油価格低迷長期化の影響などもあり、事業環境は極めて厳しい状況にある。一方で近年、水素への注目が世界的に高まっていることから、その利活用に早くから取り組んできた川崎重工の強みを活かせる機会が急速に広がりつつある。
現在、船舶海洋部門では液化水素運搬船、またエネルギー・環境プラント部門では水素ガスタービンや水素貯蔵タンク、水素液化システムなどを開発しているが、両事業の統合により、経営資源を集中し、水素エネルギー分野におけるリーディングカンパニーとして、水素社会実現に向けた取り組みを加速する。
また、両事業が保有する燃料供給システムや自律運航船などの舶用推進技術を融合することで、マリンエンジニアリングの高度化も図る。
坂出工場については、当面LPG運搬船などの建造を継続しながら、液化水素運搬船をはじめとする水素関連製品の開発・製造・エンジニアリングの拠点として再編していくと共に、その広大な用地を、新たな事業拠点として活用していくことも検討する。