独ポルシェAGは11月16日(シュトゥットガルト)、本社域内のツフェンハウゼン工場へ約2億5000万ユーロを投資。未来を見据えた大規模な設備追加・拡張工事など現時点のアップグレード状況を世界に向けて初披露した。
実際に、そこではパナメーラ及びカイエン用のV8内燃エンジンの新たな組立工場が建設されており、いずれは電動ポルシェ・マカン用の電気パワーユニットの組立もこの拠点に統合される。これにより新世代マカンの生産は、2024年から新工場が中核的役割を果たすようになる。
加えて目下拡張中となっている新鋭拠点では、ボクサーエンジンを搭載するモデルと、次世代EVとなる718型のスポーツカーが、同一の組立ラインで生産されることになるという。
同計画は既に始動済みで、2022年から車体工場内の物流エリアを順次拡張。ポルシェ博物館の向かいのポルシェプラッツにある旧ポルシェセンターの敷地にも、新しい建物が追加される。
そんな来たる2025年に完成予定とされる新工場の建屋部分は2つのフロアに跨がり、全自動化された部品倉庫から車体工場へ対象車両の部品がダイレクトに供給される仕組みへと変わる。
その部品保管庫は、およそ35,000立方メートルの規模で、収容量は約2000トンに達する。これはパレットとコンテナの保管スペース換算で実に40,650個に相当する。
こうした現況についてポルシェAGで生産・物流担当取締役を務めるアルブレヒト・ライモルト氏は、「我々とって911の60周年と、356 No.1ロードスターの75周年を迎えたこと。それは本当に特別なことでした。
そんな特別な今年、本社工場の再建措置と新たなスポーツカーの生産体制に係る拡張工事を行うことになったのですが、それはツッフェンハウゼン工場単体としても、我々の未来を俯瞰した特別なマイルストーンだと言えるでしょう。
また今回の生産拠点の転換及び拡張工事により、今後は、工場の生産効率性が大きく向上し、ものづくりの品質基準の底上げとなり、内燃エンジンを積む車両とBEV車両の混合生産も稼働可能になります。
これは次世代スポーツカー生産のためのスマートファクトリー計画という枠組みを超えて、ポルシェにとっての真に新たな章が始まることを意味します。また今後のクルマづくりは、未来を見据えて順次アップグレードされていく予定です。
そこには生産プロセスの進化が色濃く反映されます。例えばタイカンを生産する場合、次世代の最新鋭スポーツカーも同じ場所で生産されるようになり、電動マカンの電動パワートレインの組立も、既存のエンジン工場を改良し統合させます。
このように同一ライン上で異なる車両を混合生産する目的は、我々の生産プロセスの能力と柔軟性を飛躍的に高めるためです。またこうした生産工程の拡張には、車両品質の確保のためのテストベンチ、生産車両を送り出す物流エリアの改善など多岐に亘ります。
一方で新しい車両生産を想定したプロセスにも逸早く取り組み始めています。具体的には将来、生産を手掛けることになる2ドアスポーツカーの生産ライン枠も既に確保済みです。そこでは現在、電動ポルシェのタイカンの生産に導入されるのと同じく、無人搬送車(AGV/Automatic Guided Vehicle)も使用されることになります。
この最新世代のAGVは、従来の組立ラインと置き換えることにより、より柔軟な生産プロセスに応えられるようになります。特に単一ライン上で、内燃エンジン車と電動パワートレイン車を混合生産する場合に最も有益に働く仕組みとなってくれるでしょう。
そんな未来の生産工場では、車両組み立て時の品質管理手段も更に洗練します。例えば新しい組み立てプロセスには、新設の品質保証ステーションが既に統合して組み込まれています。組立ライン以降で求められる個々工程のチェック管理は、組立プロセスの終了時点ですぐさま始まります。そのための新たなライトトンネルも既に用意されています。
より下流の仕上げエリアでは、より明確なプロセス構成とアップグレードされたテスト手順が提供されるようになりました。これには、音響テストベンチを電気自動車の要件に適合させるなどの点検活動が含まれます。さらに、漏れ検査や表面検査のためのテストベンチも全面的に刷新されます」と説明した。