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2022年6月8日【ESG】

独アウディ、部品・完成車の輸送を鉄道にシフト

NEXT MOBILITY編集部

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ドイツのアウディ(AUDI AG)は6月3日(現地時間/日本での発表は8日)、ハンガリーで生産されるバッテリーモジュールとセルのブリュッセルへのトラック輸送を鉄道に切り替える“ロジスティクスの包括的カーボンニュートラルな取り組み”に着手すると発表した。

audi・ロゴ

アウディは、この輸送切り替えにより、CO2の年間排出量約2,600トンを削減し、また輸送コストも大幅に抑制。切り替えは、5月から既に開始されており、2023年初頭までには完了する予定で、この結果を踏まえて、今後、バッテリーコンポーネントの全ての輸送に鉄道を採用する計画だ。

 

アウディのサプライチェーン責任者、ディーター・ブラウン氏は、「ブリュッセルは、アウディにとって先駆的な役割を果たしています。今回、アウディの生産ネットワーク全体で、バッテリーモジュールとセルの持続可能なロジスティクスコンセプトを開発しました。今後の結果により、将来的にすべての生産拠点でこのソリューションを採用したいと考えています」と、述べている。

 

アウディでは、この取り組みを、同社の包括的な持続可能性への道のりに於ける主要なマイルストーンと位置付け、企業の環境フットプリント(※1)の削減を、現在、全拠点での適応を進めている環境プログラム「Mission:Zero(ミッション・ゼロ/※2)」の中心的な目標として、捉えていくとしている。

 

 

 

鉄道輸送への切り替えでCO2排出量とコストを削減

 

ベルギー工場で生産されるバッテリー式電気自動車(BEV)である「Audi e-tron」と「Audi e-tron Sportback」で使用されるバッテリーの部品(モジュールとセル)は、これまでハンガリーのサプライヤーから、毎日12~15台のトラックに満載され、約1,300kmの距離を輸送されてきた。

 

現在アウディは、このトラックでの輸送を、ドイツ鉄道貨物(DB Cargo)の「DBeco plus」サービスに可能な限り切り替えることで、CO2の排出量を毎年約2,600トン削減。また、ブリュッセル工場への納入プロセス全体の最適化により、年間コストを数百万ユーロを抑制していると云う。

 

「DBeco plus」サービスでは現在、オーストリアとドイツの区間で、風力や水力、太陽光といった再生可能エネルギー由来の電力のみを輸送に使うことでカーボンフリーな輸送を実現。またハンガリーとベルギーの区間では、気候証明書によって相殺した、“DBecoニュートラル”を使用していると云う。

 

またドイツ鉄道貨物は、鉄道路線を持たないハンガリーのサプライヤーに対して、ジェールの拠点にロジスティクスセンター(LC)を開設。バッテリーモジュールは、先ずトラックでメーカーから出荷され、このLCで鉄道車両に積み替えられて、鉄道で1,000km以上離れたブリュッセルまで輸送される。

 

アウディのブリュッセル・マネージング・ダイレクターであるフェルカー・ジャーマン氏は、ブリュッセル工場でのこのアプローチの重要性について、「私たちの拠点は、2018年以来、既にネットカーボンニュートラルを実現しています。さらに、あらゆるレベルで環境保護に貢献するために、サプライチェーンを持続可能なものにする対策にも取り組んでいます」と、説明している。

 

 

全社的なコンセプト

 

アウディでは、ブリュッセルに於ける鉄道輸送へのシフトを、近い将来、全体に拡大する予定であり、特にバッテリーモジュールやセルといった在庫回転率が高いコンポーネントについては、2025年までに鉄道のみで輸送することを目指していると云う。

 

そのため、インゴルシュタットのアウディ本社では、鉄道出荷されたモジュールとセルを使用したバッテリーを製造する準備も整え、それらを自動車製造に使うための新しい機器とプロセスも用意。他の工場でも、バッテリーコンポーネントを鉄道輸送に切り替えるための準備を既に整えていると云う。

 

アウディはまた、現在、約68%が鉄道出荷されているヨーロッパ生産の完成車についても、今後、鉄道の割合を、より増加させていくとしている。

 

 

※1)環境フットプリント:環境負荷を測る場合に二酸化炭素以外にも存在する環境に負荷を与える物質全てを指標物質とし、これを定量化するもの。EUでは、最終的に、個々の製品に対するこの表示を義務化しようという動きがある。

※2)Mission:Zero:アウディの全社的な環境プログラム。アウディブランドは、プログラムに於いて、2025年までの全拠点での完全なカーボンニュートラル化に加え、重要な活動分野として、生産とロジスティクスの脱炭素化に加え、水の使用、資源効率、生物多様性を掲げている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。