組込メモリー開発メーカーのフローディアは10⽉26⽇、シリーズC投資ラウンドにて帝人などから約12億円の資⾦調達を行ったことを発表した。同社はこの資⾦を活⽤して、既存の組込メモリー事業を拡⼤していくと共に、新たにエッジコンピューティング側のAI演算に向け、単位消費電⼒あたりの演算能⼒が圧倒的に⾼い半導体デバイスを開発を加速させていくとしている。
今回の資⾦調達では、帝⼈がリード投資家となり、東京エレクトロンの100%⼦会社であるTEL Venture Capital Inc.と共に、第1回クロージングにて合計5.3億円の第三者割当増資を引き受けた。また第2回クロージングにおいては、みやこキャピタル、丸紅ベンチャーズ、NECキャピタルソリューション、IDATEN Venturesが、合計5.1億円の第三者割当増資を引き受けている。さらに⽇本政策⾦融公庫も1.8億円の融資を実⾏している。
同社はこれまでに、INCJや⼤⼿ファウンドリUMC傘下のUMC Capital(台湾)、最先端半導体の設計会社であるFaraday Technology(台湾)等から約24億円の資⾦調達を⾏っており、今回の資⾦調達によって累計資⾦調達⾦額は約36億円になる。
フローディアは、ルネサスエレクトロニクス出⾝の技術者が2011年に設⽴したベンチャー企業。マイコン、パワー半導体、センサー等に使われる、組込み型の不揮発性(電源を切っても記憶内容を維持する)メモリー製造に必要な⼯程や回路設計を、知的財産(IP)として半導体メーカーにライセンス提供する事業を展開している。
同社の不揮発性メモリー技術は、データの書込み・消去にFNトンネル現象を使うため、ホットキャリアを利⽤する競合他社の技術と⽐べて、メモリーセル1つあたりの書込み・消去に使う電⼒が100万分の1と極めて極めて低い。さらに耐熱性に優れ、チップへの集積に必要な追加コストを1/3程度にまで低減できるといった特徴を持つ。
こうした点からすでに⾞載⽤のマイコンに搭載されている他、東芝のマイコンに採⽤されるなど実績が積み上がっている。また、台湾のファウンドリ(半導体製造企業)にも採⽤され、すでにこのファウンドリが製造するスマホ⽤部品の組込メモリーとして利⽤中だ。
また、同社の不揮発性メモリーは、既存の製造プロセスを利⽤しながら、他の回路や設計資産に影響を与えずにチップに集積できるという点も大きな特徴。
5Gスマホやスマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、各種IoT機器などの開発において、回路の集積度の向上と消費電⼒の低減は、これまで以上に重要になるとされる中、これまで別々のチップに集積していたデジタル回路とアナログ回路を、同⼀チップに混載するといったことが求められている。同社は、デジタル―アナログ混載チップの製造プロセスとして今後主⼒となる130nm BCD plus(Bipolar・CMOS・DMOS 混載)のプラットフォームに不揮発性メモリー技術を搭載すべく、主要ファウンドリと協業を進めており、2021年初頭からの⼤量⽣産に繋げるよう計画中とのことだ。
そして、今後開発を加速させていくとした単位消費電⼒あたりの演算能⼒が圧倒的に⾼い半導体デバイスについては、同半導体デバイスが実用化されれば、AI演算時の消費電⼒を⼤幅に抑えることが可能になり、現在はクラウドを利⽤しなければ実現できない⾼度なAI演算を、エッジ側で⾏うことが可能になるとしている。
現在、⾼度なAIの演算は主にデータセンター等クラウド側にある⼤規模サーバー群で⾏われているが、クラウドでのAI演算は、膨⼤な電⼒を要する事やデータセキュリティの点での課題が指摘されている。⼀⽅、⾃動運転⾞やドローンなど、リアルタイム性が必要な⽤途では、クラウドに依存せずにエッジ側でAI演算を⾏うことが必須とされている。同社の半導体デバイスの開発はこれらの課題に応えるものとなることが期待される。
■フローディア:floadia.com/jp