F1公式タイヤのピレリ、2024年の1シーズンで地球から月までの距離を走り切る
FIAフォーミュラ・ワン世界選手権に公式タイヤを供給したピレリは12月19日、歴代史上最長の24回戦となった2024年シーズンに関して、自社が供給タイヤが、ほぼ「地球と月を結ぶ累積走行距離」を走破したことを明らかにした。
その距離は、バーレーンでの最初のフリープラクティスセッションから、アブダビのチェッカーフラッグまでで65.534周、334,942.175キロメートルとなる。これは、地球が27日間の軌道を周回する間に、月に最も近づく地点からの距離で約94%に相当する。
この記録は、エミリア・ロマーニャと中国グランプリが2024年のカレンダーに追加されたこともあり、その前年の2023年と比較して27,016.375キロメートル分増加した結果だ。
このうちスリックタイヤで走行した割合は93.59%。インターミディエイトの使用は5.67%から5.84%( 19,566.862キロメートル )に増加した。対してエクストリームウェットの使用は0.64%から0.57%に減少した。
タイヤ種別という切り口で、2024年シリーズを通して最も多く使われたコンパウンドはC3で、昨年との比較で36.57%から32.06%に減少した。またC4は、2番目に多く使用されたコンパウンド( 23.47% )で、3番手はC5で16.84%でC2( 14.97% )を上回り、C1は2024年に再び最も使用されず5.56%となっていてる。
こうした個々チームがコンパウンドを採択する際の変化を詳しく見ると、例えばメルボルンとインテルラゴスのレースでは、前年よりも柔らかいトリオのコンパウンド( C2-C3-C4からC3-C4-C5 )を使用するなどの決定から変動したことが判る。
最長スティント記録では角田選手がシンガポールのトラックを28周走行した
またこれらの数字には、プロトタイプタイヤ( 2,306.944キロメートル )に関するデータは含まれていない。プロトタイプタイヤについては今季、メキシコシティのテストで使われたが、昨年はバルセロナ、鈴鹿、メキシコシティの3イベントの金曜のフリープラクティスで使用されていた。
このようにF1の統計データに係る切り口は様々であり、単一セットのタイヤで最長スティントを記録したという切り口では、バクーでアルピーヌを駆り、同グランプリでハードと指定されたC3のセットを履いて300.150キロ( 50周 )を走破したピエール・ガスリー選手が挙げられる。
またジェッダのトラックを43周( 265.525キロ )したシャルル・ルクレール選手はC2のセットで最長走行距離を記録している。ジョージ・ラッセル選手は、モナコでC4のセットで最長走行( 256.949キロ、77周 )を、ニコ・ヒュルケンベルグ選手は、ザントフォールトで242.763キロ、57周を走破した。
角田裕毅選手は、シンガポールのトラックを28周、141.820キロメートルを走行した。併せて彼は、モントリオールでインターミディエイトタイヤで最長スティント(1 91.844キロメートル )を走っている。一方、シーズン最後の6レースでチームメイトを務めたリアム・ローソン選手は、エクストリーム・ウェットタイヤ1セットで、誰よりも長い距離( 81.871キロメートル )を走行した。
レースウィークエンド中の効率的なタイヤ使用の問題は来季に向けた課題
大枠から見た統計データをみるとピレリは、参戦した全チームに合計8,016セットのタイヤを供給した。このうち2,718セットは一度も使用されなかった。
その理由は、エクストリームウェットタイヤとインターミディエイトタイヤは「ストリップアンドフィット」ポリシーの対象であるからだ。これらはレースウィーク中に於いて、F1マシンのホイールに装着された。
しかし一度も使用されなかったタイヤは、取り外して再装着し、他のラウンドで使用できる。こうした事例らによってピレリは、2024年にはトータル供給で約3,500本分少ないタイヤを生産することになった。
晴天用に生産されたスリックタイヤは、その11.66%に相当する935セットがホイールに装着されたものの一度もコースを走ることはなかった。
更に948セット( 11.82% )が1〜3周を走行した。ちなみに、これらのほとんどは予選やフライングラップのシミュレーションで使用されるセットだったのだが、このようなレースウィークエンド中に、より効率的なタイヤ使用の促す問題については、来季に向けて残された課題といえるだろう。
タイヤ交換頻度という切り口では、2024年の全レースの中で日本グランプリが最も多く、鈴鹿では46回のピットストップが行われた。一方、その反対にジェッダでは19回のピットストップしかなかった。
ピットレーンでのアクションという点で最も静かな日曜日はモナコで、オープニングラップの赤旗のおかげで、中断中に全てのドライバーが義務付けられたコンパウンドの交換を行うことができ、その後のピットストップは7回だけだった。
最も暑いレースという切り口では、日曜日のレース中に35.6℃を記録したインテルラゴスが筆頭に挙げられる。対照的にシルバーストーンの温度は、10.9℃からレース中に13.9℃まで上昇した。
路面温度に関しては2023年と比較して、昔からの人気コースと新しいコースがある。最も暑いレース賞は58.6℃のハンガロリンクだが、イモラでのレースでは驚くべきことに52.5℃を記録した。路面全体で最も寒かったのはシルバーストーン( 12.8℃ )で、レース中はラスベガスの気温が16.8℃で最も低かった。