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2024年12月20日【イベント】

2024年のF1、1年間で地球から月までの到達距離を走破

坂上 賢治

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F1公式タイヤのピレリ、2024年の1シーズンで地球から月までの距離を走り切る

 

FIAフォーミュラ・ワン世界選手権に公式タイヤを供給したピレリは12月19日、歴代史上最長の24回戦となった2024年シーズンに関して、自社が供給タイヤが、ほぼ「地球と月を結ぶ累積走行距離」を走破したことを明らかにした。

 

その距離は、バーレーンでの最初のフリープラクティスセッションから、アブダビのチェッカーフラッグまでで65.534周、334,942.175キロメートルとなる。これは、地球が27日間の軌道を周回する間に、月に最も近づく地点からの距離で約94%に相当する。

 

 

この記録は、エミリア・ロマーニャと中国グランプリが2024年のカレンダーに追加されたこともあり、その前年の2023年と比較して27,016.375キロメートル分増加した結果だ。

 

このうちスリックタイヤで走行した割合は93.59%。インターミディエイトの使用は5.67%から5.84%( 19,566.862キロメートル )に増加した。対してエクストリームウェットの使用は0.64%から0.57%に減少した。

 

タイヤ種別という切り口で、2024年シリーズを通して最も多く使われたコンパウンドはC3で、昨年との比較で36.57%から32.06%に減少した。またC4は、2番目に多く使用されたコンパウンド( 23.47% )で、3番手はC5で16.84%でC2( 14.97% )を上回り、C1は2024年に再び最も使用されず5.56%となっていてる。

 

 

こうした個々チームがコンパウンドを採択する際の変化を詳しく見ると、例えばメルボルンとインテルラゴスのレースでは、前年よりも柔らかいトリオのコンパウンド( C2-C3-C4からC3-C4-C5 )を使用するなどの決定から変動したことが判る。

 

最長スティント記録では角田選手がシンガポールのトラックを28周走行した

 

またこれらの数字には、プロトタイプタイヤ( 2,306.944キロメートル )に関するデータは含まれていない。プロトタイプタイヤについては今季、メキシコシティのテストで使われたが、昨年はバルセロナ、鈴鹿、メキシコシティの3イベントの金曜のフリープラクティスで使用されていた。

 

このようにF1の統計データに係る切り口は様々であり、単一セットのタイヤで最長スティントを記録したという切り口では、バクーでアルピーヌを駆り、同グランプリでハードと指定されたC3のセットを履いて300.150キロ( 50周 )を走破したピエール・ガスリー選手が挙げられる。

 

 

またジェッダのトラックを43周( 265.525キロ )したシャルル・ルクレール選手はC2のセットで最長走行距離を記録している。ジョージ・ラッセル選手は、モナコでC4のセットで最長走行( 256.949キロ、77周 )を、ニコ・ヒュルケンベルグ選手は、ザントフォールトで242.763キロ、57周を走破した。

 

角田裕毅選手は、シンガポールのトラックを28周、141.820キロメートルを走行した。併せて彼は、モントリオールでインターミディエイトタイヤで最長スティント(1 91.844キロメートル )を走っている。一方、シーズン最後の6レースでチームメイトを務めたリアム・ローソン選手は、エクストリーム・ウェットタイヤ1セットで、誰よりも長い距離( 81.871キロメートル )を走行した。

 

レースウィークエンド中の効率的なタイヤ使用の問題は来季に向けた課題

 

大枠から見た統計データをみるとピレリは、参戦した全チームに合計8,016セットのタイヤを供給した。このうち2,718セットは一度も使用されなかった。

 

その理由は、エクストリームウェットタイヤとインターミディエイトタイヤは「ストリップアンドフィット」ポリシーの対象であるからだ。これらはレースウィーク中に於いて、F1マシンのホイールに装着された。

 

しかし一度も使用されなかったタイヤは、取り外して再装着し、他のラウンドで使用できる。こうした事例らによってピレリは、2024年にはトータル供給で約3,500本分少ないタイヤを生産することになった。

 

 

晴天用に生産されたスリックタイヤは、その11.66%に相当する935セットがホイールに装着されたものの一度もコースを走ることはなかった。

 

更に948セット( 11.82% )が1〜3周を走行した。ちなみに、これらのほとんどは予選やフライングラップのシミュレーションで使用されるセットだったのだが、このようなレースウィークエンド中に、より効率的なタイヤ使用の促す問題については、来季に向けて残された課題といえるだろう。

 

タイヤ交換頻度という切り口では、2024年の全レースの中で日本グランプリが最も多く、鈴鹿では46回のピットストップが行われた。一方、その反対にジェッダでは19回のピットストップしかなかった。

 

ピットレーンでのアクションという点で最も静かな日曜日はモナコで、オープニングラップの赤旗のおかげで、中断中に全てのドライバーが義務付けられたコンパウンドの交換を行うことができ、その後のピットストップは7回だけだった。

 

 

最も暑いレースという切り口では、日曜日のレース中に35.6℃を記録したインテルラゴスが筆頭に挙げられる。対照的にシルバーストーンの温度は、10.9℃からレース中に13.9℃まで上昇した。

 

路面温度に関しては2023年と比較して、昔からの人気コースと新しいコースがある。最も暑いレース賞は58.6℃のハンガロリンクだが、イモラでのレースでは驚くべきことに52.5℃を記録した。路面全体で最も寒かったのはシルバーストーン( 12.8℃ )で、レース中はラスベガスの気温が16.8℃で最も低かった。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。