サイバーセキュリティ・テクノロジー・プロバイダーのエフセキュア(F-Secure、本社: フィンランド・ヘルシンキ、日本法人: 東京都港区) は1月28日、加賀FEI(本社: 神奈川県横浜市、荻原淳二社長) と日本で車載を中心にしたIoTデバイスのセキュリティコンサルティングサービスに関するパートナーシップ契約を結んだと発表した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
自動運転・コネクテッドカーの普及を背景に、セキュリティ対策の要望が相次ぐ
オンラインで共同会見した両社はコネクテッドカーの普及を背景に、車載分野の「セキュリティ関連のコンサルティングサービスの要望が増えており、それぞれ両社の強みを生かすことで活動領域を拡大し、成長発展できる」と強調した。
エフセキュアは過去10年以上、自動車関連、車載IoT機器の診断実績があり、ドイツの大手自動車メーカー4社やイタリアの自動車メーカーなどと車両全体を対象としたセキュリティ診断も実施し、数多くの診断実績を有する。
さらに半導体チップの設計上の欠陥についてもこれまでに2つを開示。これらは独ボッシュの要請などに応じて診断したもので、未然に脆弱性を見つけるノウハウを持つ。
日本でも車載IoT機器メーカーを対象に実機への攻撃テストを含むハンスオントレーニングなどの実績がある。とくに自動車や航空機分野などで多くの実績がある。
パートナーシップ契約の背景は「車載分野からの相談が需要なテーマになってきた」こと
一方の加賀FEIは電子デバイス製品関連商社であり、2020年12月に富士通エレクトロニクスから現社名へ変更。2019年に加賀電子が株式の70%を取得してグループ化したため。
現在の株主構成は加賀電子85%、富士通セミコンダクター15%となっており、FEIは富士通の英語表記という。
荻原社長はパートナーシップ契約を結んだ背景として「車載分野からの相談が需要なテーマになってきた」ことを掲げた。このため、車載分野のセキュリティ診断に強みを持つエフセキュアと日本の顧客が多い加賀FEIとの連携が生かせると判断した。
両社はすでに日本で2018年から協業を開始しており、依頼プロジェクト依頼件数は10数件にのぼる。荻原社長は車載関連事業について「今後5年、10年の長いスパンで高まっていくだろう」と述べた。
日本の車載IoT機器分野でセキュリティ環境を進化させていきたいという意欲を示す
近年、多くの自動車がWi-FiやBluetoothなどを経由して車両外との通信を行うコネクテッドカー化が進み、車両はもはや複雑なソフトウェア/ハードウェアの集合体となっている。
こうした中、通信可能デバイスの増加とともに外部からのアタックサーフェス (攻撃可能領域) も広がってきており、2015年のジープ・チェロキーのハッキング実験などを機に、車両・車載機器メーカーはデバイスの一層のセキュリティ対策が迫られている。
エフセキュアのアジアパシフィック地域担当バイスプレジデントのキース・マーティン氏 は「外部ネットワークとの接続可能なコネクテッドカーは急速な成長が期待される分野。両社の提携で、日本の車載IoT機器分野でセキュリティを進化させ、安全な自動車の実現に寄与したい」とコメントした。
両社が得ている信頼とサービス・技術を組み合わせることによる相乗効果に期待
荻原社長は両社のパートナーシップ契約について「自動車分野が中心となるだろう。エフセキュアの知見とノウハウ、加賀FEIの信頼とサービスを組み合わせることで相乗効果が期待できる」と述べた。
車載機器を中心にしたIoT機器のコンサルティングサービスにおける活動領域は、商品企画から開発・設計、テスト・評価、出荷・運用に及び、それぞれの領域でセキュリティトレーニングやセキュリティガイドライン作成支援、脅威分析、ペネトレーションテスト、セキュリティインシデント管理支援などの活動を行うことになる。
実用化が始まった5G(第5世代移動通信サービス)についてもハードウェア診断からバックエンドネットワーク診断まで多数の実績があり、今後、診断サービスの依頼が増えるだろうと見ていた。