自動車業界向けに組み込み/コネクテッドソフトウェア製品を提供するエレクトロビット(ドイツ/エアランゲン)と、The Qt Company(フィンランド/エスポ―)は7月6日、自動車メーカーでの次世代デジタルコックピットの高効率開発に資するべく、互いの技術提携を発表した。( 坂上 賢治 )
より具体的には、Qt Device CreationフレームワークおよびNXPのi.MX 8 Series Applications Processorを、エレクトロビットのAUTOSAR開発のためのEB tresosソフトウェアとユーザーインターフェースエンジニアリングサービスを組み合わせた。
これにより、既製のソフトウェアとハードウェアを活用して最先端のヒューマンマシンインターフェース (HMI)の開発を目指す自動車メーカーに対して、ユニークなターンキーアプローチを提供出来るようになった。
昨今、没入型デジタル体験や先進機能への需要が高まるにつれ、デジタルコックピットは、次世代自動車に於いて重要で魅力的なコンポーネントになっている。
調査会社Mordor Intelligence社によると、その市場規模は2027年まで年間平均成長率13パーセントを実現すると考えられており、自動車メーカーは、先進の車両内体験を開発するための高効率で手頃な価格のアプローチを鋭意模索し続けている。
そうした中、Qtとエレクトロビットは、AUTOSARアーキテクチャ上でのHMIランタイムを可能にする初の市販ソリューションとして誕生した。これにより、ハイパーバイザーを使用するにあたってのコストや複雑性・時間の要件を無くし、シングルコアやマルチコアプロセッサでの実行を可能とした。
両社によると、このアプローチ手段は、今後のHMIの全体的な開発プロセスの加速と迅速な市場投入を支える事になるとしている。
両社では実際にQt Device Creationフレームワークは、組み込みプラットフォームにおいて豊かなユーザーインターフェースの創出を可能にするものにであり、対してEB tresos AUTOSARアーキテクチャスタックは、これに最新のセキュリティ機能および安全機能を追加。限られた容量のマイクロコントローラでもマルチコアSOC上でもASIL-Dまでの要件をサポートすると言う。
また同ソリューションには、エレクトロビットのユーザーインターフェースエンジニアリングサービスチームへのアクセスも含まれている。更にコンチネンタルオートモーティブのLinux Instrument Cluster、ソフトウェア無線(SDR)、ドライバーモニタリング、eTravel Companionなどのサードパーティの追加機能のソフトウェアの統合も可能だとしている。
The Qt Companyの自動車部門プロダクトダイレクターのMiao Luo氏は「エレクトロビットと連携して、当社のHMI開発ソフトウェアとエレクトロビットの市場実績のあるAUTOSARソフトウェアおよび統合技術を組み合わせたユニークなソリューションを提供できることを嬉しく思います。この統合アプローチは、ソフトウェア定義型車両を開発するための最も早く、簡単な方法を提供します」と話している。
一方でエレクトロビットのユーザーエクスペリエンスダイレクターのJörg Scherer氏は「エレクトロビットはQtとのこの協業に、当社の数十年にわたるAUTOSARの経験、ECUソフトウェアおよびサービスを提供できることを誇りに思っています。
2社の協力のもと、HMIランタイムをAUTOSARに組み入れ、自動車メーカーの次世代車両向け先進コックピットの開発を容易にする最初の市販ソリューションを提供します」と結んでいる。