ロームは10月20日、ADAS(先進運転支援システム)関連のセンサやカメラ、レーダー及びカーインフォテインメント、クラスター等に向けて開発した、バッテリ電圧変動に強い車載プライマリDC/DCコンバータ*1)、「BD9Pシリーズ」*2) 全12機種を発表した。
今回発表された「BD9Pシリーズ」は、ローム独自の先端電源技術である「Nano Pulse ControlTM※」を搭載すると共に、新たな制御方式を採用したことにより、一般的に背反する高速応答と高効率の両立を実現した電源IC。
同製品は、一般品と比較して電圧変動時の出力のオーバーシュートを1/10以下に抑制。これまでオーバーシュート対策として使用されていた出力コンデンサの追加が不要になっている。それによりバッテリからの入力電圧変動時においても安定した機器動作が可能になる。
また高負荷時の変換効率を92%(出力電流1A時)とするだけでなく、軽負荷時の変換効率においても、85%(1mA時)を達成しており、軽負荷から高負荷まで業界トップクラスの高効率を実現。これにより、走行時だけではなく、エンジン停止時の低消費電力化にも貢献する。
近年、自動車の電装化はますます進んでいるが、自動車のバッテリ及び発電機から供給できる電力には限りがあるため、低消費電力化が求められている。一方で、バッテリ及び発電機から出力される電圧は、大きく変動するものであり、そうした中で電力供給をコントロールする電源ICにおいては、安定動作に貢献する高速応答と、省エネに貢献する高い電力変換効率を両立することは困難とされてきた。「BD9Pシリーズ」は、こうした課題に応えた形となる。
さらに、新製品と、その後段に接続されるセカンダリDCDCコンバータ「BD9Sシリーズ」を組み合わせることで、従来の電源回路より高効率かつ高速な車載用電源回路を構成できる。これらは、ロームが提案する「リファレンスデザイン」として、公式Webサイト上にも公開されている。ボードや各種ツール、そして無償Webシミュレーションツール「ROHM Solution Simulator」を活用することで、実使用に近いシミュレーションが可能であり、アプリケーション設計時の負荷を大幅に低減する。
なお、新製品は2020年10月から月産5万個の体制で量産(サンプル価格500円/個:税抜)を開始している。
*1) プライマリ(Primary)
電源ICにおいては、バッテリなどの電力源から見て1段目の変換を担当するものをプライマリと言い、その後の2段目の変換を担当するものをセカンダリと呼ぶ。
*2) DC/DCコンバータ
どちらも電源ICの一種で直流(DC)から直流へ電圧を変換する機能を持つ。
DC/DCコンバータは、スイッチングレギュータとも呼ばれ、スイッチングにより出力電圧を生成する。一般的に電力変換効率に優れ、電圧を下げる“降圧”、電圧を上げる“昇圧”が存在する。
※Nano Pulse ControlTMは、ローム株式会社の商標または登録商標。
■リファレンスデザイン:www.rohm.co.jp/reference-designs/refrpt001
■ROHM Solution Simulator:www.rohm.co.jp/solution-simulator