襄陽中車電機技術有限公司と、株式会社e-Gleの中国法人である上海翼科新能源汽車科技有限公司は6月21日、株洲市で新エネルギー自動車産業の進化を牽引するべく提携を発表した。両社はまず自動車メーカー向けにインホイールモーターの生産と、販売を行うプロジェクトから新事業をスタートさせる。(坂上 賢治)
襄陽中車によると、同社は中国中車の電動モーター部門子会社であり、グループの圧倒的な知名度と信用力、サプライチェーンを武器に一気にトップの市場シェアを獲得したい考えとしている。
そこで電気自動車開発のパイオニアとして高い技術力が世界に知られるe-Gleとタッグを組むことになった。
e-Gleは、慶應義塾大学でインホイールモーターを搭載した8輪車「エリーカ (Eliica:Electric Lithium-Ion Car) 」を開発した清水浩氏(現・慶應義塾大学名誉教授)が率いるインホイールモーター車両のパイオニア企業。
エリーカは、2004年2月に栃木県のテストコースで時速320キロメートルの最高速度を記録。さらに同年3月にはイタリア、ナルドのテストコースで最高速度370.3km/hの当時の絶対記録を刻んだ。車両は当初、3000万円程度の販価で、200台程度の量産車生産を視野に入れていたが結局、エリーカは事業としては成立しなかった。
ただ車輪の中にモーターを装備することで車体を直接制御する技術に関しては、清水浩氏が率いるe-Gleは、現段階でも秀でた技術を内包する組織として世界的に著名だ。
そのポイントはコギング(Cogging)トルクにある。これはモーターの電機子(例えば磁石)と回転子(例えばコイル)との磁気的吸引力より、細かく振動する現象だ。これはスタート時やブレーキング時に発生する細かな微少振動で、モーターの回転トルク変動とは区別されるもの。清水氏は、このコギングをコイルと磁石との関係性などを見直すことでコギングの完全解消を実現している。
自らの手で電動量産車を世に送り出す意欲を持ち続ける清水氏は、車両技術の改善のみならず、新たな蓄電池設計を手掛けるなど技術革新に手を緩めることなく精力的に邁進しており、このたゆまぬ意欲が今回の電動ユニットの量産契約体制に結実した。
今後、両社は2020年に具体的な製品生産を開始し、2021年の本格稼働を目指している。幸い中国は、メーカーおよび消費者に対する補助金政策などにより電気自動車の積極的な推進を図っており、既に世界最大の市場となっている。
なお襄陽中車電機技術有限公司(湖南省株洲市)は、世界最大の鉄道車両メーカーである中国中車グループの電気モーター製造部門子会社だ。対して上海翼科新能源汽車科技有限公司は、電気自動車開発を行い続けて来た株式会社e-Gle(神奈川県川崎市、代表取締役 清水 浩)の子会社である。