世界最大のドローンメーカー、DJIは10月9日、幕張メッセで農業用ドローンの発表会を行い、「P4 MULTISPECTRAL(マルチスペクトラル)」と「AGRAS(アグラス) T16」という2台の新機種を披露した。いずれも農業に変革をもたらすものとして、同社ではその動向に期待を寄せている。(経済ジャーナリスト・山田清志)
日本の農業就業人口が8年間に3分の1減少
「現在、農業は深刻な人手不足になっている。私は毎年田植えを行っているが、周りの農家が年々減っていることを身をもって感じている。農業を持続的にやっていくには、やはり省力化技術が必要で、ドローンがその一つのツールとして注目されている」とDJIジャパンの呉韜社長は話す。
ある統計によると、日本の農業就業人口は2000年の260万人から2018年には175万人と8年間で約3分の1減少し、平均年齢も上がっている。このままでは日本の農業が立ちゆかなくなる懸念も出ているほど。そのため、農林水産省は今年3月に農業用ドローン普及計画を策定し、本格的にドローンの農業への活用に動き出した。
DJIジャパンも今年7月、代理店75社と農業ドローン協議会を設立し、ドローンの教育をはじめ、申請サポート、整備、機体管理、保険などを包括したサービスを開始した。すでに日本では同社の農業用ドローンが2000台以上活躍しているという。
そんな中、精密農業・土地管理用の「P4 MULTISPECTAL」と農薬散布用の「AGRAS T16」を発表したわけだが、特にP4は世界初の完全統合型マルチスペクトル イメージングドロンだという。
収穫量が改善してコストも削減
6つの個別センサーからの取得でテータを組み合わせて、それぞれの作物から圃場全域の植生まで健康状態を調べ、さらに雑草や害虫被害、土壌の状態の測定もできる。従来そのような調査は人が現場に行って実施したり、あるいは人工衛星を使ったリモートセンシングで行っていたが、手作業では手間がかかり、人工衛星では高精度なセンシングが困難だった。
その両方を解決したのがP4というわけだが、測定の誤差は数センチレベルだという。しかもDJI GS Proというアプリケーションによって、飛行計画、ミッションの実行、飛行データの管理などもできる。同社関係者も「P4を使えば、農業従事者は収穫量を改善し、コストを削減できる」と太鼓判を押す。価格はDJI Terraライセンス(1年間)とDJI GS Proアプリライセンス(1年間)が付いて約85万円だ。
一方、AGRAS T16は2017年3月に発売した「AGRAS MG-1」の後継モデルで、「これまでの販売の中から出てきた要望を聞いて、効率性の向上、安全性の向上、処理能力の向上を図ったモデルになっている」(同社関係者)そうだ。
例えば、薬剤のタンクは従来の10Lから16Lへと容量を拡大し、プロペラの推進効率を20%向上させた。また、バッテリーとタンクはカセット式にしてワンタッチで交換できるようにし、散布能力も44%向上と大幅にアップさせた。そのうえ、自立航行で同時に5機まで飛ばせるという。価格ついては今のところ未定だが、200~250万円になりそうだ。
いずれのドローンも性能や信頼性の優れた同社の自信作で、農家の強い味方になるのは間違いないだろう。